先日、ウサギに煮干し?!文科省作成「学校における望ましい動物飼育のあり方」のエントリで思わず全部読まないうちに怒りをぶちまけてしまいましたが、今日改めて見てみて、もう怒るより恐ろしさを感じました……。
まず、一つ誤解があったので、それは正しておきます。
ウサギの病気(とくに胃腸うっ滞)についてまともに触れられていない、と思いましたが、第三章に別に病気一覧があり、そこには「毛球症」「鼓腸症」として言及されていました。
しかし、対策の方はてんでダメです。
そういう病気がある、ということが書いてあるだけで、それがどれほど危険なことかなど、実際に知っておくべき情報がまるきり欠けています。
鳥の方は、もっと親切に色々書いてありますし、全く食べなかったらすぐに獣医に診せろと書いてあるので、これは監修者がウサギに詳しくなかったとしか考えられません。
そもそも、この「学校における望ましい動物飼育のあり方」の中身は、ほとんどが「どうやって学校での動物飼育を教育に役立てるか」であり、言ってみれば学校飼育動物礼賛の書です。
私自身は、教育に生きた動物を使うことに関して、何もかもダメだと言うつもりはありません。
本当は、そういう教育は家庭でやってくれ、と言いたいところですが、親がそもそもまともに動物を育てられない可能性もあるので、生物の飼育に学校が関わること自体は、やり方によってはアリだと思っています。
(休日人がいなくなるような環境で飼育するのはやっぱり反対ですが。)
問題視しているのは、教育に生きた動物を使うなら、動物も子供達も守るため、教師側がその動物達のエキスパートでなくてはならないのに、現実はそうではないということ、そして先生達をバックアップするシステムを文科省が整える気がまるでない、ということです。
たとえば、このパンフレットの中には、以下のような例が出ています(要約しています)。
小学校一年生の子が、嫌がるウサギを無理矢理抱いている写真がある。この子は悪気があったのではなく、ウサギが(恐怖のため)震えているのを寒いのだと勘違いし、暖めてやろうとした。
暫くしてから、友人などから、寒いのではなく、嫌がっているのだ、ということを教わり、少しずつウサギとの付き合い方を学び始めた。そのうち、ウサギの体調などにも気を配るようになり、逆に友人にウサギとどうやって優しくだっこしたら良いかを教えるようになった。
勿論、この例は成功例として紹介されているわけですが、私は最初の写真を見て呆然、でした。
このウサギは、無理矢理逃げようとして子供をひどく噛んだり、鋭い爪で蹴ったり、あるいはもがいて自分の背骨を骨折するようなことがなかった。
子供の方も、嫌がるウサギの骨が折れるほどは強く抱かなかった。
それは、運がよかったか、指導していた先生がウサギの事をよくわかっていて、あまり危険な状態になったら静止することをしていたか、そのどちらかでしかありません。
いやがるウサギを無理矢理だっこするというのは、非常に危険な行為であるという認識がまったくないのです。
大人なら、押さえ込めます(ちゃんとした抱き方を知らないとウサギが脊髄骨折して半身不随になりますが)。でも子供の力では、本気でウサギが暴れたら押さえ込めません。
若く力の強いウサギだったら、下手をすれば、逃げるときの後足で子供のアゴに強烈なケリを入れる(当然ぱっくり割れて血も出ます)くらいやりかねないのです(自分で爪を噛んで研いでいるウサギもいます)。
学校にはそんな凶暴なウサギはいない?
それこそが大きな誤解です。ウサギはとても臆病ですから、たとえば近くで大きな物音がした、等だけでパニックに陥り、予想もできない行動に走ることがあります。
これを「成功例」として紹介されてしまったら、他のウサギを知らない先生達は一体どうするでしょうか?
もうひとつの例。
小学校を卒業した子から手紙が来た。そこには、その子がひきとった下半身不随の学校ウサギが亡くなったことが書かれていた。
そのウサギは、学校で飼われていた時代に、別の子供がブロックをウサギの背中の上に誤って落としてしまい、下半身麻痺になってしまったウサギだった。
その子はウサギを家に引取り、自力で排尿もままならなくなったウサギをその後2年半世話しつづけた。手紙には、その子がどうやって家族の一員となったそのウサギの死と向き合ったのかが書かれていた。
読めば分かりますが、非常に感動的な話です。しかし、その感動と、学校飼育とはまったく関係ありません。
その子が中学生ながら下半身麻痺のウサギを最後まで面倒を見ることが出来たのは、明らかに家族(おそらく両親でしょう)のウサギに対する深い理解があったからで、学校でウサギを飼う事を美化できるような話ではありません。
私はそれよりも、ブロックを落としてしまった子供の方がよほど気になりました。
クラスの皆で可愛がっていたウサギにひどい怪我をさせ、学校に居られなくしてしまった。
その子が動物好きな子であれば、その衝撃は想像するにあまりあります。
どのような状況下でそんな事故が起きたのかは全く書かれていません。
その学校では、生徒に、ウサギの上にハードカバーの本一冊でも落とすことが、即下半身麻痺に繋がる事故になる、ときちんと教えていたのでしょうか?
そう教えていれば、そんな事故はそもそも起こらなかったのではないでしょうか?
そもそも、ウサギの背骨が非常に骨折しやすく、脊髄骨折が即下半身麻痺に繋がる、と知っている学校の先生がどれだけいるのでしょうか?
ウサギの骨は、獣医ですらたまに骨折させることがあるのに!
取り上げるなら、そのあとの美談ではなく、そういう事故が起こってしまった事実と、それを防ぐための対策であるはずです。
しかし、この冊子には、それについては全く書かれていません。
私は、こんな事故が起きてしまったのは、100%大人の責任だと思います。
それなのに、その傷を負うのは学校ではなく、ウサギを傷つけてしまった、わずか10歳にも満たない子供だとは……。
こんな理不尽な話があるでしょうか。
この冊子の編集者は、子供の感情に焦点を当てておきながら、まったくそのことを配慮しなかったのか、と思います。
このような話を、あたかも「学校飼育動物の恩恵」のように紹介し、その問題点を検証する姿勢が全く見られないことが、私が「恐ろしい」と書いた理由です。
学校飼育動物に救われる子供がいるのは事実です。
子供の人格形成に良い影響を与えることができる、そういう事例があるのも否定しません。
(だからといって、「動物のお陰で学校に来るのが楽しみになる」なんてのを恩恵の一つに加えるのはどうかと思いますが。動物園じゃないんだから、学校に楽しく来てもらうのは、動物の可愛さに頼らず、人間が努力すべきでしょう)
しかし、上に紹介した二例の記事を読んだときに、この二つの事例の深刻な問題点にまったく目を向けなかった(おそらく気づきもしなかった)文科省の姿勢に、大きな疑問を抱きました。
この冊子には成功例しか載っていません。
(私から見れば、たまたま成功したか、あるいはそもそも学校飼育としては成功していない例ですが……)
であれば、それと同じか、もしかしたらもっと多くの失敗例もあるはずです。
そして、そういった失敗で傷つくのは、多くの場合子供達です。
増えすぎてしまったウサギを処分したり、際限なく子ウサギが生まれて全て踏みつぶされて死んでいたり……。
この冊子では学校飼育のよいところばかり強調しようとしていますが、本当に指導すべきは、生き物を学校で飼う以上、絶対に子供達が傷を負わない(肉体的にも、精神的にも)ための対策です。
そして、失敗例を謙虚に検証する姿勢なしには、文科省が教育目標として掲げる「動物を愛する心を育む」ことも達成できるはずがありません。
この文科省の問題に対する鈍感さ、あるいはもっと言えば欺瞞が、現在学校飼育現場で起きている問題の殆ど全ての根源といっても過言ではない、と私は思います。
ところで。
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ウサギがこんなに票をとるのは滅多にないことなんじゃないだろうか。。
皆様のお陰です(笑)
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