牧草食べてるから大丈夫とは言えない!腸閉塞(または急性胃拡張)の話

腸閉塞というと、何か固いものを飲み込んでしまったとか、牧草の食いが悪くて毛玉が詰まるのが原因と思っていましたが、そうではない、というのを今日知りました…。

ソースはこちらです↓

http://www.ohare.org/images/harelines/v13n2.pdf

Dr. Barbara Oglesbee が Buckeye House Rabbit Societyの機関誌に掲載した記事です。

英語ですが、レントゲン写真もありますので、ご覧になってみてはいかがでしょうか。

獣医さんがかかれた記事ですので、翻訳は(許可が必要なので)やりませんが、要点だけかいつまんでお知らせします。

まず、腸閉塞とは? どのようにして起こるのか? について。

  1. 腸閉塞と胃腸うっ滞は全く異なるものであり、これらの間に関連性はまったくない
  2. 腸閉塞は、突然腸が何かによってつまる現象。多くは小腸の、胃を出てから5〜7.5cmくらいのところでつまるが、小腸と盲腸の合流するところの近くで起こることもある。
  3. 胃の直後でつまると、あっという間に悪化し命の危険にさらされる。もっと後ろの方でつまると、症状の悪化は比較的ゆるやかになる(危険なことにかわりはない)。
  4. つまるのは、ほとんどがフェルト状にまで固く固まった毛球で、その起源は日々のグルーミングで飲み込んでしまった毛が胃の中で固まったものではない。どのようにしてそんな固い毛球ができるのか原因はよくわかっていないが、有力な説は、盲腸の中で作られる、という説。盲腸で固く固まってしまった毛球は盲腸糞に包まれ排出されるが、ウサギは盲腸糞を噛まずに飲み込むため、固い毛球のまま小腸まで行ってしまう

盲腸には牧草の繊維質はいきませんから、どんなに牧草を食べていても、盲腸の中の毛を定期的にお掃除、というのは出来ないわけです。
2014/10/1訂正:
盲腸に牧草の繊維質がいかない、というのは私の勘違いでした!
HRSのカンファレンスで見たアニメーションによると、小腸を抜けた内容物は一度盲腸に入り、更にその一部は大腸に押し出されます。ただし、大腸の前半部分で、大きな繊維質はそのまま肛門側へ送られ、細かな粒子は盲腸に戻ってきます。
これを繰り返して、盲腸の中には細かな粒子だけが残り、発酵が進んだあと、盲腸糞として大腸に送られる、という仕組みです。
しかし、盲腸が袋小路になっている構造上、牧草を食べていても、毛玉がたまるのを100%防ぐことはできない、というのが、「腸閉塞は普段の食生活に関係なく起こる」という表現の意味だと思います。しかし、このような仕組みであれば、やはり牧草を食べることによって、その危険を減らすことは出来るのかもしれません。
(訂正終)

つまり、たとえ牧草バリ食いのウサギでも、腸閉塞になってしまう危険はあると……。

うちの子は牧草よく食べるし、飲み込んで危険なものは置いてないから、腸閉塞になるわけがない! と思っていると、対処が遅れて手遅れになりかねません。

 

次に、腸閉塞になるとどのような経過をたどるか、という話。

  1. ウサギは普段から唾液を沢山飲み込み、胃液を沢山出している。腸がつまることによって、これらの液の出口がなくなり、胃にたまり始める(つまり、胃がふくれる理由は、最初は水分)
  2. 胃の中の水分が停滞することにより、電解質バランスが崩れる。またバクテリアが繁殖し、これらがガスを生成する。
  3. これらの相乗効果により、水分とガスで急激に胃が膨らむ。このため、ウサギは痛みを感じてうずくまる。また、胃が膨らむことにより胃の周囲の臓器(心臓、腎臓など)への血流が阻害される(→手術をしても回復しない原因)
  4. 更に膨らむと、胃が破裂(この時点でウサギは即死)。
  5. とにかく悪化の速度が早い。朝は普通、またはちょっと元気がないかな、くらいだったのに、仕事から帰ったら死んでいた、というケースもある。

というわけで、胃が大きく膨らむ、というのは非常に危険なサインだ、ということです。

理由は、胃が膨らむことによって周囲の臓器への血流が阻害され、臓器不全になってしまうためです。

余談ですが… このように胃が膨らむのは、なにも腸閉塞だけが原因ではありません。 なんらかの原因で胃の中で異常発酵が起きれば同じことになります。

というわけで、腸閉塞は疾患の原因を表した病名ですが、このように胃が急激に膨らむ症状を急性胃拡張といいます。

……ということは、原因が何であれ、胃が大きく膨らんだら(急性胃拡張)、もう迷わず救急診療だ、ということですね。

ちなみに、どのくらい大きいと危険なのかは、田園調布動物病院のレントゲン一覧が大変わかりやすいかと。

http://exoticpetdata.blog33.fc2.com/blog-entry-4.html

このページの最後のレントゲン写真が、急性胃拡張の写真です。

上三枚と比べて、非常に胃が苦しそうなのが分かると思います。

膨らみ始めると、本当にあれよあれよと言う間に大きくなっていくので、こうなる前に病院に連れて行くのが大事です

ちなみに、胃は、ウサギを背中からみて、頭を上にしたときに、左側に「し」の字のオシリがくるような感じでおさまっていますので、胃がガスなどでふくれると、最初は体の左側、肋骨のすぐ下くらいに大きなコブができて、触ると風船のような感触になります。

更にガスがたまると、今度は固くなり、胃の周辺全体が膨らみ、押してもへこまなくなります(そうなったら危険)。

(まれに、普段からそっち側が出っ張っているウサギもいるようですが……うちのまんごろし太もそうだった。でも、触ってみれば、ガスが詰まっているか、普通の状態かの違いは分かると思います。普段からそのあたりを触って、固さを確かめておくと良いと思います。)

 

というわけで、胃腸うっ滞と腸閉塞の見分け方(非常に難しいですが)。

  1. 腸閉塞は、食べるものには全く関係がない。一方、胃腸うっ滞は、多くは繊維質(牧草)の不足や、炭水化物のとりすぎなどの関連がある。食事習慣の大変良いウサギでも、腸閉塞にはなり得る
  2. 胃腸うっ滞の場合は、そうなる前に何かしらの病気、痛み、歯の不具合など、ストレスがかかる事項がおきているケースが多い。一方、腸閉塞は病気のウサギも煩うが、殆どの場合は直前まで元気そのものであったケースが多い
  3. 腸閉塞の場合は、突然に無気力になったり、痛みを感じている様を見せる。中には、あまり出歩きたがらなくなったり、(他のウサギや人間と)交流したがらなくなる、というのが痛みの(初期の)サインのウサギもいる。
  4. 胃が血流を圧迫し、更に胃の中の電解質バランスが崩れることで、ウサギはショック症状を見せる。ショック症状のウサギは、非常に無気力で、しばしば体温が低下している。
  5. 腸閉塞のウサギは、唐突に、まったく食べなくなる。一方、胃腸うっ滞のウサギは、だんだんと食欲が落ちる。

非常に難しいですね……。

うちのウサギ達は、軽度のうっ滞でもほとんどの場合、いきなりまったく食べなくなるんですが……(汗)

(まあ、日中はみてないから、だんだん食べなくなっているのかも知れないが)

ただ、そういう場合はほぼ100%補液のみで回復しているので、脱水して腸が動かなくなる場合には、症状としては腸閉塞と同じように、胃に胃液と唾液が溜まってガスが充満している、ということなのかもしれません。

うっ滞の場合は、(うちのウサギ達を見ると)食べなくなっても暫くは余裕かまして走り回ってたりしますね。

腸閉塞は、一方、もっと急激に動かなくなったり、体温が下がったり、という兆候がありそうです。

というわけで、見分け方は、

健康で、楽しそうにしていたウサギが、どれだけ唐突に全く食べなくなり、痛そうにしていたり、無気力になんの反応を示さなくなったりしたか

その落差が大きいほど、腸閉塞の可能性が高い、ということになりそうです。そして、もしそのような状態を見たら、とにかくその場で救急病院に連れていくことです。

 

最後に、病院ではどのように診察して、腸閉塞の判断を下すかと、どのような治療が行われるか、です。

  1. どれだけ突然に痛みを感じたり、食べなくなったりしたか。
  2. 触ってみて、どれだけ胃袋に水分やガスが大量に溜まっているか。腸閉塞がおきてからの時間経過によっては、ウサギはショック症状を見せているので、その確認。
  3. X線写真を確認して、胃袋にガスや水分が大量にたまっている一方で、小腸以降にはガスがほとんどないこと。

これで腸閉塞(あるいは急性胃拡張)と診断されると、まず最初の処置として、胃の拡張を和らげ、ショック症状の原因を取り除きます。

ウサギに鎮静剤を与え、ゴム管を口から胃まで通し、ガスと水分を抜きます(pdfにその写真があります)。 その一方で、点滴を開始し、ショックからの改善をはかります。

その次のステップは、外科手術で毛球を取り出すかどうかを決断します。ほとんどの場合、手術で取り除くことが一番生存率が高いですが、まれに(内科的処理によって)詰まったものが流されることもあります。

その場合は、完全に押し流されるまで、胃袋にたまったガスと胃液の除去が必要になります。勿論、この間ウサギは集中治療が必要になります(点滴、頻繁なレントゲン撮影など)。

運がよければ、切らずに回復しますが、多くのケースは手術が必要になります。

残念ながら、たとえ手術をしても、予後はよくないとのこと(よく言われることですが…)。

もし詰まったものを早期に取り除くことが出来れば、回復の見込みがある模様です。

しかし、多くの場合、気づいたときには既に肝臓や他の器官への血流が長時間妨げられたあとで、予後が非常に悪いようです(胃壁が壊死している、肝機能が戻らない、腎臓への血流が回復しない、など)

悲しいことに、多くのウサギが、手術を生き延びても、その後2〜3日で腎不全などにより死に至ります。 ただし、悲観的になる必要はなく、十分に早い段階で摘出できれば、手術をしても回復の見込みがある、とのことです。 つまり、

  1. いかに早くに飼い主が緊急処置が必要であることに気づき、
  2. 獣医師がうっ滞ではなく腸閉塞であるという診断を下し、必要な処置を開始できるか

が非常に重要だということです。

◆◆◆

以上でまとめは終わりですが、これを読んでいて、先日のルーファスの胃腸うっ滞を思い出しました。

ご存知のように、胃腸うっ滞でも胃は膨らみます。

朝からどうにも食欲がないし、胃が固くなってきたので、午後4時に病院に連れていきました。

軽度のうっ滞と診断され、補液してもらって家に戻ったものの、全然胃の固さが緩む気配がない。

むしろ、まだどんどん固くなってくる印象だったので、腸閉塞を疑って、午後8時に再度救急で観てもらうことを決断。

8時30分に病院に到着。

でも時間外なので、結局先生の診断が9時過ぎになり、折悪しく別の急患も入って、レントゲンの準備が出来たのが10時過ぎでした(ここで4時にも診療してくれたエキゾチックの専門の先生が駆けつけてくれた)。

その、危険を感じてから2時間のあいだに、ルーファスの胃袋はあれよあれよという間に大きくなっていきました。

待っている間に、もし間に合わずに破裂したらどうしよう、と泣きそうになりました……。

細菌は指数関数で増える、をまさに実感(いわゆるネズミ算)

もしも、あと2時間様子見していたら…、と思うと、ゾッとします。

先生は、レントゲンをとるのに鎮静剤をかけるので、そのときに胃袋の空気を抜く処置をやってみるが、食べ物も結構つまっているのでうまく抜けるか分からない、と……

今にして思えば、このときの先生の処置は、まるきり上で書いた手順の通りです。 まあ、先生曰く、まだとても危険、というところまでは膨らんでいなかった模様ですが……。

レントゲンの結果、幸い(というか先生の4時の時点の見立て通り)、腸閉塞ではなくやはり胃腸うっ滞であることが分かりました。

ただ、最初の補液150mlのコブが、たった3時間で完全消滅してしまったこと、オシッコをまったくしなかったことから、かなりひどい脱水だったと思われます。

脱水は、通常肩の部分の皮膚をつまんで計るのですが、この計り方ではルーファスの場合脱水とはわかりませんでした。 この子は脂肪が多いので(汗)そのせいだったかもしれません。

しかし、腸閉塞でなくとも、とにかく胃の中のガスが動いてくれないと危険であることに変わりはないので、できれば今日は病院に泊まって点滴を入れた方がいい、との診断(これも上に書いてある通り)。

勿論、家に連れて帰っても何もできないので、入院させました。

一晩中定期的に様子を観てくれた獣医学部の学生さんの報告によると、ルーファスがもそもそと動きだし、食べ始めたのは朝の6時だったそうです。

一体どれだけ脱水してたの!!!(涙)

結局、そこまでひどくなった原因は、歯に問題があっていきなり何も食べなくなったからだ、というのが翌週判明したのですが……

何が原因であれ、胃の強ばりが抜けない、どんどん固くなる、というときは、膨らみ始める前に病院に連れていった方がいいと思います……。 一度膨らみ始めると、本当に数十分単位で悪化していく感じです。

というわけで、昔書いた「食べなくなったときの処置」の記事も、少し直さないとですね。

ウサギは本当に難しいなあ……(溜息)。

牧草食べてるから大丈夫とは言えない!腸閉塞(または急性胃拡張)の話” への6件のコメント

  1. 怖いね。。。読んでいるだけで心配になって来ちゃった。特にチョコが!ダンボールとか齧るし、うさちゅうをいつもペロペロ舐めてるし。。毎日ちゃんと観察しよう。。

    • ホントだよね! 無闇に怖がってもしょうがないんだけど、私も、「つまるもの何も与えてないし、牧草だってちゃんと食べてるから腸閉塞はないだろう」と思ってたので、そういう理由でつまるわけじゃないんだ、というのを知ってびっくりしたのよ。。
      手術しても回復しないことが多いのも、漠然と、手術で切った腸がうまく動き出さないんだろう、と思ってたし。
      予後が悪いのは急性胃拡張のせい、って分かったから、とにかく今後は胃のガスに特に気をつけるよ……

  2. mogumogu様、こんにちは。うちのシフォンが昨日、朝からいきなりペレットも牧草も水も手をつけなくなり、うずくまりだしたので「いつもの鬱滞かな?」と生野菜を入れたり、ヒーターを入れて身体を温めたりしようとしたのですが、午後になってからうずくまっていたと思ったら急激に姿勢を変えてバタバタと暴れだし歯ぎしりをする、、という明らかに今までのただの鬱滞とは違う感じだったので、休日夜間診療してくれる病院を必死で探して連れていったところ、「胃拡張」の所見でした。今日は一応ペレットもつまんでいますし、牧草にも手をつけていますが、まだ水を飲まないので、かかりつけ医に連れて行こうと思います。胃拡張って怖いですね!昨日、早いうちに連れて行って点滴を打って頂いて良かったと思います。

    • ムースのお母さん さま、
      シフォンちゃん、治療が間に合って本当に良かったです!
      胃拡張を起こすと、ただうずくまっているだけでなく、まさに「のたうち回る」といった感じになるのですね。シフォンちゃんには本当に気の毒ですが、大変勉強になりました。ご報告ありがとうございます!

      手術はされていない模様ですが、腸閉塞ではなかったのでしょうか? もし胃拡張の原因がわかりましたら、教えていただけると嬉しいです。

  3. 家の先代の子は、まさにチモシー1番刈りが大好きで、良く食べ良く大きなウンチも大量生産し、お水もたくさん飲み、3歳半までうっ滞をした事もなく元気一杯でしたが、3歳半で急性胃拡張から腸閉塞も併発し、約2日半の闘病の末に亡くなりました。いつも食いしん坊なのにおやつを食べなかったため、その日の夕方に病院に連れて行った時には、急性胃拡張の診断でしたが、命の危険は無いと言われました。その夜はつきっきりで背中をさすったり温めたりしながら必死で看病しましたが、じっとうずくまって寝ている感じでした。私はその子が初めてのうさちゃんで、病気知らずで元気一杯な子だったため、その状態が具合が非常に悪いという事に気付いてあげられず、眠れているからきっと良くなってきてくれているんだと勘違いしていました。翌朝もう一度様子を見せに連れて行くと、胃の拡張が前日よりも酷くなっており、ショック症状に陥っていました。それから主治医も手を尽くしてくれましたが、残念ならが食べなくなって2日後に亡くなりました。それから胃拡張と腸閉塞の事を調べまくって、去年この記事も読ませて頂いて、ああ、こうなる前にこの記事と出会えていたら、私はあの子を救えたかもしれないと、自分を責め続けました。急逝胃拡張と腸閉塞は本当に恐ろしい病気です。未だに原因は解明していませんが、その子が大好きだった毛布が後で調べたらかなり噛まれてボロボロになっていたので、ひょっとしたらその繊維が溜まってしまったのかもしれません。悔やんでも悔やみきれません。私の元には新しくお迎えした子がいるので、二度と同じ目に遭わせないよう日々気を付けて愛情をかけて育てています。

    • ラブさま、
      大変辛いご経験をされたのですね…。
      私も腸閉塞については「危険だ」という認識しかなく、どのように危険で、助けるためには何が重要なのか、といった情報については、昨年この記事を書くまで知りませんでした。飼育書にも詳しいことは書いてありませんし、結局日本語の記事を探してもみつからず、国外の情報に頼らざるを得ませんでした。

      急性胃拡張の問題や、肝臓捻転(と壊死)などは、獣医師の先生方のセミナーでもようやく近年取り上げられるようになったばかりなのではないかと思います。
      (勿論先生方はそれらの問題をご存知でしたでしょうが、以前はもっとセミナーの話題はうっ滞と歯の問題に集中していたように思います)
      この数年で、ウサギの医療も、飼い主の知識も大幅に向上し、それに伴って、以前はあまり見なかった症例も増えています。残念ながらこれらの情報が本などの形になるまでには何年もかかる上、ウサギに限定すればそもそも本になるかどうかも分からないような状態です。素人である我々が常に新しい情報を入手し続けるのは、決して簡単なことではありません。

      旅立ってしまった子にはどんな言い訳もできず、後悔ばかりがつのってしまうものと思いますが、ラブさまは当時出来ることを最大限にされたのだと思います。そして、その経験があるから、今のウサギさんが幸せに暮らせるのだとも思います……
      お互い、今いる子たちに幸せな日々を送ってもらえるように、頑張りましょう!

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