ウサギのうっ滞初期に乳児用ガスリリーバ(シメチコン)が有効、という話

アメリカでは、ウサギのうっ滞初期に家で試す事として、乳幼児用のガスリリーバを飲ませろ、と言われることがあります。ガスリリーバ(主成分シメチコン)は、日本では「ガスコン」「ガスピタン」などの商品名で売られているものとほぼ同じですが、小児用のものは余計なものが入っておらず、「体内で吸収されないので薬ではない」とされ、アメリカでは獣医師の処方がなくても使えます。

こういうものです↓

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私はもともと、薬もサプリも頼らない方が吉、という考えなので、これまで積極的にウサギにガスリリーバを使ったことがありませんでした。しかし、うちのウサギ達も高齢になり、友人のYさんが14才のうさちゅうにこれを使用して大変効果があることを教えてくれたこと、また私自身も使用してみて、これを使った方が良いと思われるケースも多いことを実感したので、報告します。

現在、日本では乳幼児用のガスリリーバは売られていません。入手方法は個人輸入ということになると思いますが、個人で使用する範囲の数量なら比較的簡単に入手できると思います。infant gas relief などの単語で検索してみて下さい。

記事を読む前に、以下のご注意をお読み下さい。

  1. アメリカでは医薬品ではありませんが、日本では医薬品扱いです。アメリカのウサギでは多くの実績があり、獣医師やHRSも勧める方法ですが、日本のウサギとアメリカのウサギは異なる部分もあります(例:アメリカのウサギは生後8週間以内は販売できないなど)。情報のご利用はあくまで自己責任でお願いします。このページの情報をご利用になった結果不都合が生じても、当方は責任を負えません。
  2. 現在薬を処方中のウサギさん、通院中のウサギさんは、必ず獣医師とご相談の上お試し下さい。それ以外のウサギさんも、主治医がいる場合はご相談下さい。
  3. 日本で販売されているガスコン、ガスピタンなどの成人用消化管内ガス駆除薬は、シメチコン以外の成分が入っている模様です。ウサギに使用して良いものかどうか当方には判断できませんので、用いないで下さい。(獣医師によってはOKという方もいらっしゃる模様ですので、どうしてもという方は獣医師にご相談下さい。)

1)ガスリリーバとは何か?

有効成分はジメチルポリシロキサン(ジメチコン)です。これにケイ酸オイルを混ぜたものをシメチコンと呼び、これが主成分となっているものがほとんどです。
ジメチコンは、気泡の表面張力を低下させることで、泡を潰すはたらきがあります。このことから、化粧品などにも使われ、それだけ聞くと「赤ちゃんの口に入れても大丈夫?」という気になりますが、気泡を細かくするだけで、人間の体内では消化されず、経口摂取しても便と一緒に排出されるため安全とされています。

(余談ですが、毛玉リムーバのペトロモルトやラキサトーンの主成分は、ベビーオイルと同じものです。ベビーオイルが安全なのは、鉱物油で体内吸収されないから。時折、植物由来だから安全、といった企業宣伝をみかけますが、決して植物だから安全なのではありません。むしろ、野生の植物は身を守るため多少の毒性を持っていることの方が普通なので、ウサギに植物由来のものを与えるときは注意が必要です。)

2)どのような時に使うか?

ウサギの場合、以下のようなときに使用すると、効果が高いようです。

  • ご飯をあげてもなんだかいまひとつ食欲がない
  • 普段は結構動き回って、頻繁に牧草をつまみにいくのに、何時間も同じ場所にうずくまって、だるそうにしている

このような状態で、なおかつ、

  • お腹の腸のあたりをよく見ていると、たまに、大きな気泡の塊がぼこっと動く、腸の動きが、しばらくつっかかって、急に泡の移動とともに動き出すなど、スムーズではない
  • ときおり、ウサギのお腹から、「ぼこっ」という空気が動く音が聞こえて、なんだかウサギが痛そうな表情をしている

ポイントは、まだお腹が動いているうちに与えることです。うっ滞になってしまってからでは、いくら口から押し込んでも腸内の気泡まで届きませんので、余計なことをせずに、すぐに獣医師に診せて下さい

お腹の音は、わかりにくければ、うずくまっているウサギの背中の腰あたりの部分に耳を直接つけると、より良く聞こえます(聴診器がなくても大丈夫です)。
調子のよいときは、それほど間を開けず、「コポ、…コポ、…ピチュ」といった感じの小さな音が聞こえます。

これが、ガスの泡が大きくなり始めると、もっと「ボコッ」という感じの音になり、音から音までの間隔が大きくなります。更に泡が大きくなると、横からお腹を見ていても、空気の塊がボコッという感じで動くのが見えるようになります。それでも泡がスムーズに動いているうちは良いのですが、やがて腸の一部にしばらくひっかかって、それから一気にボコっと動く、という感じになります。

よく注意してみていると、ウサギはこのとき遠い目をしていたり、痛そうにちょっと目を細めたりしています。そのような表情がみられる場合には、既にウサギが痛みを感じて、そのためにお腹に力が入り、腸の動きが更に悪くなる悪循環にはまっていますので、ガスリリーバの使用が有効です。

分量は、パッケージに書いてある乳児用の処方と同じでおおむね大丈夫ですが、特に小さい種類のウサギ、大きい種類のウサギには、多少量を加減した方が良いかもしれません。また、薬ではないので、あまり分量に厳密である必要はありません。1回与えてみたけど、どうもまだ泡が小さくなりきっていない、という場合、追加でもう1回分くらい与えても大丈夫です(ただし、分量多く与えると、ふんにシリコンオイルが多くつきます。下痢ではないので問題はありませんが。)

小児用のガスリリーバは、液体で子供でも飲めるようにもともと甘い味がついていますので、飲ませるのにそれほど苦労することはないと思いますが、バナナなどに塗って与えても大丈夫です。

ウサギによっては、音が聞こえるほど泡が育ってなくとも、単にお腹の張りによる不快感で食べなくなることもあります。そのような場合にも、有効だと思います。

3)飲ませたあとの経過など

お腹からボコボコ音が聞こえるほど泡が育っているような場合は、数十分から数時間で、その音が消えます。うちのウサギ達は、30分くらい経過するとその状態に移行し、目に力が戻ってきますが、これは個体差が大きいと思います。

お腹の音がなくなると、牧草や野菜を食べ始めるウサギもいます。この場合は、そのまま自力で回復することが多いです。これを飲ませてから、以前紹介した愉気を併用すると、経過が良いようです。

お腹の音がなくなったのに、依然として食欲が戻らない場合は、既にうっ滞が進行しているか、なにか別の原因の体調不良の恐れがありますので、獣医師に診せて下さい。

4)その他

薬ではないので、予め大きな泡を作らないように常習的に与えるというのは可能か? という点について。

実は、もともと赤ちゃん用のものなので、infant gas reliefなどの語句で検索すると、これを使用した方が良いのかどうかについて書かれたページにヒットします。
で、そういうページを見ていると、中には、むしろ必需品みたいな書き方をされているものもあります。勿論、ネット上の情報、しかも素人が書いたものか、きちんとした知識のある人が書いたものかわからないような記事を鵜呑みにすべきではないですが、これを見て実際にかなりの頻度で赤ちゃんに与えている人もいそうです。

ただ、ウサギに与える、という観点からのみ言えば、ガスリリーバを飲ませると、(与える量にもよりますが)ふんがシリコンオイルにカバーされているのが目でみてもわかります。ウサギのふんは通常乾いているものですから、常にこのような湿ったふんがお腹のなかにある、というのは、やはり自然な状態ではないと思います。

以上から、私自身は、やはり「ちょっと体調がおかしいかな?」と思ったときに試すものであって、基本的には普段から常習的に飲ませるものではない、と思っています。
ただ、とくにお腹にセンシティブな子で、これを飲ませた方がコンスタントに食事がとれて体調が良い、というウサギさんがもしいれば、例外になるかもしれません。
とくに高齢のウサギでは、きちんと毎回バランスの良い食事がとれる、というのが何よりも大事ですので、そのへんは主治医とご相談の上加減するのが一番良いと思います。

◆◆◆

ガスリリーバの紹介は以上です。

始めにも書いたとおり、我が家のウサギ達の場合、若い頃は愉気だけで回復していたので、極力このようなものには頼らない方針でした。
しかし、自力で回復するためには、そこに至るまで、ウサギ本人にも痛みや不快感と戦う精神力、気力が求められます。回復までに数時間かかることもあり、年をとれば、それもだんだん大仕事になって気力が続かなくなります。
痛み止めは使用しすぎれば効かなくなってきますが、ガスリリーバは体に作用するものではないので、そういった心配もありません。

人間の年齢にすればもう70才というような年ですので、痛いのを長時間無理に頑張らせるより、なるべく痛くなく、自分から食事をとれるようにするほうが良いかと思い、去年あたりから使用を始めました。現在までのところ、愉気単体でがんばるより回復が早く、(ガスによる疼痛がなくなることで)食べないでいる時間を短縮できるため、翌日の体調への影響もかなり少なくなりました。
勿論、獣医師の指導のもとで試してみていただきたいことですが、これまで夕方から体調が下降気味なのがわかっていても有効な手を打てず、結局夜中に全く食べなくなり薬を飲ませるしかなかった、というようなケースでは、使える場面もあるのではないかと思います。

5 thoughts on “ウサギのうっ滞初期に乳児用ガスリリーバ(シメチコン)が有効、という話

  1. 混ぜ物がないというのが、いいですね。日本にもあればいいのに。ガスピタンは、ためしに私自身が使ってみて効果を実感したので、使っています。ビオフェルミン味で、喜んでポリポリやっています。自分から食べない時で必要と思われる時は、乳鉢ですって他の薬とともに与えます。人間でもおなかが張ると不快になって食欲をなくしますから、敏感なウサギはなおさらでしょうね。

  2. チーママさま、こんにちは!
    ガスピタンの利用レポート、ありがとうございます! オフェルミン味ということは、他に入っているのは乳酸菌? それだけなら、あげすぎなければ大丈夫そうですね。製薬会社に聞けば教えてもらえるかも。

    うちのウサギも、プチの方は多少お腹が調子よくなくても頑張って食べるんですが、ルーファスがもうちょっとでも違和感があると食べないクチでして…。年をとったら更にその傾向に拍車が。
    この夏はどうもトラブルが多くて、既に必需品になりつつあります(^^;)

  3. たろうさま、こんにちは!
    はい、私がこちらで使っているのはこういう感じのものです。とくにメーカーで差はないと思います。
    具合悪いときにいきなり試すのではなく、一度元気なときにあげてみて問題なさそうなのを確認してくださいね!

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