(この記事は、獣医師の助言及び管理人の経験に基づき記述されています。全てのウサギさんに当てはまるとは限りません。情報のご利用は、皆様の責任においてお願い致します。)
今年も早春のウサギの換毛期がやってきました。
気がついたら「アレレ! ご飯食べない!」とならないよう、皆さんで声を掛け合ってウサギの体調をチェックしましょう!
- うさぎの換毛期って…?
- 換毛は、一部のウサギにとって命がけ
- 「でも、牧草食べないと、お腹に毛がつまりますよね?」
- 短毛種はブラッシングはいらない?
- で、結局、いつ気を付けたらいいの?
- (補足)サプリについて
うさぎの換毛期って…?
年に2回、と言われていますが、厳密には、年4回あります。
早春 1月下旬〜3月初旬
晩春 4月中旬〜6月中旬
秋 9月〜10月
冬 11月〜12月
あくまでも目安ですので、勿論多少前後します。
1年中換毛してるやん! って感じですが、実際には、これらの期間の中で、それぞれ1週間ほど換毛します。
このうちいくつかは、ほとんど換毛しないこともありますし、たとえば早春に派手に換毛したら晩春にはあまりしなかった、ということもあります。年中換毛しているウサギもたまにいます。
換毛は、一部のウサギにとって命がけ
実は、ウサギの換毛期は、一部のウサギにとっては命がけのイベントだということ、ご存知でしたか?
webの記事を注意して見ていますと、換毛の季節に亡くなるウサギさんが大変多いことに驚かされます。特に、高齢ウサギ、もとから体の弱いウサギは要注意です。
換毛がどれだけ大イベントかを実感するのに、良い方法があります。
普段から、きちんとペレットを計って与えて、体重も計っておきます。
毛が抜け始めたら、ペレットの量を1.5倍〜2倍に増やしてみて下さい。
すると、ペレットを沢山あげてもほとんど体重が変わらないことに驚くと思います。
きちんとペレットの量を計り、制限してあげているウサギさんでは、かなりの確率で、ペレットを増やした途端に換毛の量が増えます。
逆に、もし体重増えちゃったら、普段からのペレットの量がそれなりにあった、ということなので、体重が増えない量に戻して下さい。
さて、このことは何を意味しているのでしょう?
これは、つまり、換毛というのは、ものすごくウサギのエネルギーや体力を消耗するイベントだということです。
考えてみれば、人間の食料よりよほどタンパク質の少ない草主体の食事で、あれだけ沢山の量の毛を抜いて、新たに作り直すのですから、体力を消耗しないはずがないですよね。
ウサギも勿論それを知っています。
だから、ペレットの量を絞られている間は、派手な換毛をしません。
しかし、全く換毛しなければ、徐々に毛が古くなり、今度は自分の体を守れなくなってしまいます。
なので、ウサギは身を削りながら、換毛をするのです。
ところが、「すわ、換毛期だ!」と焦って、牧草を食べさせようと、逆にペレットの量を減らしてしまう方、結構多いんですよ……。
(私も昔やってました……(汗))
以上のことを考えると、特に高齢のウサギや、体の弱いウサギに対して、換毛期にペレットの量を減らすことがどれほど危険なことか、分かるかと思います。
換毛期は、むしろペレットを増やす方が、安全です。(体重が変化しない程度に、ですが。勿論、換毛の程度にもよります。)
ペレットの増量がうまくいくと、1週間ほど派手に換毛して終わりますので、抜ける毛の量がおちついてきたら、ペレットの量をもとに戻します。
「でも、牧草食べないと、お腹に毛がつまりますよね?」
「だから、毛を排出させるため、むしろ牧草の量を増やした方が良いのでは?」
まず一般論としては、これで正しいです。
換毛中に限って言えば、上に挙げた理由により、その結果ペレットの量が減るのはよくないですが。
しかし、いずれにしても、牧草さえ食べさせておけば良い、と考えるのは、少々危険です。
(ここでは、牧草=乾燥牧草の意味です)
以下は、私がUW-Vet Schoolで獣医師から聴いた話です。
「うっ滞は、(他に体調不良の原因がなければ)初期のレベルなら、80%以上、皮下補液と痛み止めだけで回復します」
UW-MadisonのVet Schoolは、全米でも数少ないエキゾチックアニマルの専科を持っています。当然、ウサギの患畜の数も大変多いです。
実際、我が家のウサギも何度も世話になっていますが、整腸剤を処方されたのは、そのうち二度だけです(うち一度は、うっ滞以外の疾患)。
(注:ウィスコンシンは内陸性気候なので、一年を通して日本よりは乾燥しています。80%という数字は、そういう事情もあるかも知れません。しかし、日本でも、今の季節は空気が乾燥しているので、状況は同じだと思います)
ということは、初期のうっ滞の原因は、実は「毛」ではなく、「脱水」が大半を占める、ということです。
皮下補液で脱水が解消されて、ウサギが腹痛を気にせずに済むよう痛み止めがきいていれば、お腹の毛はそのままでも、多くの場合再び食べ始めて回復に向かいます。
困るのは、「毛玉」はそんなに急には出来ませんが、「脱水」は1日まったく水を飲まないだけでも起こり得る、ということです。
①なんだか胃が張っている → ②牧草の食いが悪くなる → ③(乾物を沢山食べないので喉が乾かず)水を飲まない
このサイクルが起きると、すぐに何も食べなくなってしまいます。
不調のきっかけは、もしかしたら毛を大量に飲み込んだことによる胃のムカつきかもしれません。
しかし、その後「食べない」まで発展してしまう背景には、胃の水分がなくなってしまっていることが大きく影響している、ということです。
というわけで、換毛期のうっ滞予防対策は、牧草を食べさせることも良いですが、それ以上に、水分の消費量に気をつけることです。
水を飲む量が減っていたら、③に移行する前に、レタスなど水分の多い野菜を多めにあげるなど、対策が必要です。
ペレットも、胃の中の水分を大量に吸収します。
水の飲みがイマイチ、というときは、ちょっと熱いかな、というくらいのお湯でふやかしてあげると、より安全かも知れません。
(ウサギは人間より体温が高いので、結構熱くても大丈夫。冷たいと食いが悪いです)
多少言い過ぎかもしれませんが、この時期だけは、葉野菜の量が十分であれば、牧草の量は多少減っても構いません(葉野菜が増えた結果、前より牧草を食べる量が少々減っても、それほど神経質にならなくてよい、という意味)。
野菜を十分に食べていれば、ウサギはまず脱水しませんし、野菜には繊維も含まれています。
(注:ただし、葉野菜はアブラナ科ばかりにならないように気をつける。根菜も水分があるので多少は混じっても良いが、そればかりでは繊維不足。イモ類、豆類は炭水化物が多すぎるので避ける。)
換毛期は、食欲に影響するほど大量に毛が抜ける時期はせいぜい1週間ですので、その間の処置と思って下さい。
普通は、乾燥牧草を沢山食べれば、ウサギは喉が乾くので、水を沢山飲みます。この効果で、脱水を防いでいます。
しかし、何らかの理由で、牧草を食べても水分が十分にとれない場合には、余計に乾いて予期せぬ結果になり得ます。
人間もそうですが、水を飲みたくない時ってありますよね。
体がただの水を吸収しない時というのがあって、そういうときは、味をつけてあると、何故か吸収がよくなります。なので、人間なら、ジュースや炭酸飲料なら入るのだけど、水は胃が張ってダメ、という感じになります。
同じことは、ウサギにも起こります。
そういうときは、ジュースをあげるわけにはいかないので、野菜の量を増やして凌ぐわけです。
人間の方も、一日中ウサギに張り付いて水分消費量を見張っているわけにもいかないと思います。
敢えて、牧草の量を多少犠牲にしても野菜を重視したのは、人間が見ていない間に②から③へ移行してしまう危険を、少しでも減らすためです。
牧草は食べなくなっても、野菜はまだ食べてくれる、というケースは結構ありますので……。
(もっとも、ウサギの体調がよければ、ペレットを増やし、野菜を増やしてもまだお腹がすいて、牧草を大量に食べ、水も沢山飲むと思います。そういう状態であれば、換毛も短期間で順調に進み、毛並みも大変美しくなります。)
毛が抜け始めたな、と思ったら、野菜をあげましょう!
短毛種はブラッシングはいらない?
飼育書に、たまにこう書いてあることがあります。
一般にはそうなんですが、換毛がひどい場合は、少し人間が手を入れてやった方がいいこともあります。
ただ、保護されているウサギを見ると、ひどい換毛をしていて、ブラッシングしていなくても平気だったりするんですよね……。
ところが、これがひとたび、どこかのお家の子になると、換毛期にはブラシをかけてやらないと、お腹の具合が悪くなったりします。
保護されているアダプション待ちのウサギたちは、そんなに外に出て遊べるわけではないので、暇をまぎらわすため、水を沢山飲む傾向があります。
(ウサギは、暇になると水を飲むんですよ!)
これが、結果的に、うっ滞を防いでいるのかも知れません。
個人的な経験をいえば、換毛期はブラッシングしてやった方がよさそうです。また、この時期は、ウサギも分かっているのか、普段は嫌がるのに黙って毛を抜かれていることも多いです。
で、結局、いつ気を付けたらいいの?
あくまで、私の個人的な意見ですが……。
「うっ滞になっちゃった!」と驚かされる事が多いのが、早春です。
うっ滞になるまで、換毛が始まっていたことに気づかないこともあります。
これは、我々の中に、「換毛は春と秋」という根強い思い込みがあって、無防備だというのもあるでしょうが、空気が乾燥していることも大きく影響していると思います。
人間の唇だってカサカサに乾くのですから、ウサギも脱水します。
一方、ウサギにとって、命に関わる危険な換毛期は、晩春と秋だと思います。
晩春は、残念ながら、日本が高温多湿であるため、体力が弱っているところに高温多湿が重なり、ダブルパンチで体力を削がれてしまうからだと思います。
病気や高齢のウサギの場合、これを乗り越えられないケースも散見されます。
我が家のウサギでは、この時期に去勢手術をしたろし太が亡くなりました。
秋は、むしろ、夏の疲れでやられてしまうケースが多いようです。
夏の間に体内になにか疾患を育てていて、秋は一気に換毛する体力がなく、だらだらと換毛しているうちに疾患が露見する、というパターンです。
うちのウサギでは、まんごろし太、えせるがこの時期に他界し、ルーファスが目の奥に巨大な膿瘍を作ってくれました。
冬の換毛は、ほとんど分からないほど少ししか換毛しないか、あるいはまったく換毛しないことも多いです。
換毛が少なければ体力も削がれませんので、あまり神経質にならなくても良いと思いますが、たまに秋に換毛し損ねたのが冬に派手に換毛したりしますので、ご注意を。
勿論、上記は「そういう傾向がある」というだけで、この時期以外は危険がない、というわけではありません。
この時期は、とくに気をつけよう、という指標になれば幸いです。
(補足)サプリについて
何故このようなエントリーを書こうと思ったかというと、丁度、韓国の方からメールで以下のようなご質問を頂いたからでした。
そこで、「そういえば、もう早春の換毛の季節だ!」と思い至り、慌てて記事を書いた次第です。
私もすっかり忘れていたので、大変有り難く拝見しました。
(こんな感じで、早春の換毛期ってつい忘れちゃうんですよね(^^;;))
上記の記事で殆どご質問には答えたかと思いますが、サプリについては記述していないので、この下にご返答致します。
(前略)
実は昨日、私のうさぎがうっ滞を起こしてしまったのです。
うっ滞かそれとも毛球症かははっきりしておりませんが、いきなり食欲がなくなり、とても苦しそうでとてもびっくりいたしました。
幸いすぐ病院に走り出して今はだいぶよくなりましたが、最初はこのまま死ぬかもしれないと思いましてパニックになりました。それで、うっ滞や毛球症を予防できる方法を教えていただきたいと思いまして・・・・。
日本から買ってきましたサプリメントを食べさせておりますが、これは正しい方法でしょうか。
サプリメントについては、獣医師の先生の間にも色々意見があると思いますが、うっ滞の軽減に効果があると言われているのは、パパイヤ酵素を精製したタブレットなど、ごく少数であったように思います。
ちょっとパパイヤ成分が入っている程度では、効果がないと聞いています。
乳酸菌系も、効くという人と、効かないという人がいます。
なお、ペトロモルト(ラキサトーンなど)は、うっ滞を起こしてからでは、効果がないそうですので、注意して下さい。
(うっ滞してからではむしろ水分の吸収を阻害する、という獣医師もいます。ペトロモルトについては、こちらでも書いていますのでご参照下さい。)
私個人の意見をいえば、極端にお腹の弱いウサギ、年寄りのウサギ以外は、サプリメントに頼らない方が良い、という考えです。
人間でもそうですが、薬を飲み続けていると、体がサボることを覚え、それなしではいられなくなってしまいます。
ウサギも同じだと思います……
一度こういったサプリに助けてもらうのが当たり前になってしまえば、それはサプリに頼る前と変わりません。
自分の力でうっ滞や毛球症を防ぐことが出来るのが、本当は一番だと思います。
しかし、残念ながら、ひどい繁殖のせいで、生まれつきお腹の弱い子もいて、そういう子には日常的にサプリが必要になることもあります。
また、10才を超えるようなウサギさんは、やはり色々な面で若い頃とおなじようにはいきませんから、ウサギが好きなら与えてよいのではないかと思います。
(パパイヤタブレットはかなり甘いので、結構楽しみにしているウサギさんもいますしね)
また、ごく軽度のうっ滞なら、こちらの記事の方法等で回復することもあります(うっ滞、というと語弊があるかも知れませんが。ペレットをあげても食べずにうずくまっている、といった状態です)。
こういったプチうっ滞は、ウサギが人間と暮らす中で、ある程度は避けられないものかと思いますので、出来れば、ひどくなる前に自力で回復させる方法を見つけておくと良いと思います。
真面目に読んでて損したわ‼
うさぎさんの名前下ネタ系か不謹慎系じゃないか
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