ウサギとペレットの関係あれこれ

ウサギにとってペレットは大事なものですが、ペレットほど実はよくわからなくて、頭を抱えることの多いものも少ないのではないか、と思う今日この頃。
ペレットを食べてくれないウサギとペレットを食べ過ぎて太ってしまうウサギの悩みだけでも、あちらこちらから耳に入ってきます。

先日、福永 令三さん著の「クレヨン王国の花ウサギ」という本を読みまして、その中でウサギのロペが食べていたものが、野菜、果物、パン、というメニューでした。
この本の初出は1982年。それで、そうか、当時はウサギ用ペレットは一般的ではなかったのか、と重い至り、ペレットについて色々考えてみよう、と思った次第です。
9/30訂正:今もう一回よく見たら、ペレットも「ひとつかみ」ちゃんとあげていた!(汗)

(ちなみに、このクレヨン王国の花ウサギは本当に名作、童話の形をとっていても大変考えさせられる内容です。作中のウサギのロペは、実は福永氏の愛兎のロペがモデルで、一見してウサギをよく知る人が書いた作品だと分かります。子供もだけど、是非大人に読んでもらいたい。ただし、ウサギにパンをあげるのはダメですけどね!)

  1. ペレットって、本当にウサギにとって良いの?
  2. じゃあ、どんなペレットがウサギに良いの?
  3. ペレットは、繊維質が多い方が奥歯を削るのに役に立つ?
  4. 大人になったウサギが、どうしても仔ウサギの頃のペレットしか食べてくれないのだけど、やっぱり大人用チモシーペレットに変えないとダメ?
  5. うちのウサギはペレットも牧草も食べません。どうしたらいい?
  6. うちのウサギはペレットの嗜好がころころ変わります。何か問題があるのでしょうか?

1) ペレットって、本当にウサギにとって良いの?

何を今更、と思うかもしれませんが、実はこの答え、結構バラバラなのです……。
それも、獣医師やウサギブリーダー、ウサギ保護団体のボランティアといった、ウサギに詳しい人ほど、きっぱり意見が別れるのです。

  1. ペレットを食べなくても、牧草だけでウサギは健康に生きられる、という人。
  2. ペレットがなければ、ウサギに必要な栄養素が不足する、という人。
  3. 固いペレットは長年食べ続けると歯根に負担がかかり、歯のトラブルを招くおそれがある、という人。
  4. ウサギの寿命が劇的に伸びたのは、ペットウサギ用に改良されたペレットのお陰だ、という人。
  5. ウサギは良質のペレット以外はいらない、牧草なんて栄養のないものをあげても仕方がない、という人。

何故こんなにさまざまな意見が出てくるのか?
それこそが、ウサギとペレットとの関係の難しさを証明しています。

まず、1.ですが、私はこういい切る人に3人ほど会ったことがあります。うち2人は獣医師で、一人は日本人、もう一人はドイツ人。最後は、日本のウサギブリーダーです。
この方々の話をきくと、とにかく、牧草を食べないためにうっ滞になり、歯のトラブルに見舞われ、長生きできたはずの命を若くして失ったウサギたちに対する哀惜の情がひしひしと感じられるわけです……。
つまり、牧草を食べさせないで、沢山辛い思いをさせ、あんな死に方をさせるくらいなら、いっそ牧草一筋の方がいいだろう、というわけですね。

それに対して、2.は以前このサイトでも紹介しましたので発言者を明かしますと、これは栄養学の教授の言葉です。研究しているのは人間の栄養学ですが、なにしろWisconsin House Rabbit Societyの代表者の奥様なので、ウサギにも大層詳しいのです。
牧草は大変ウサギの体に良いけれども、栄養学的には、それだけでは必要な栄養素はとれない、というわけです。特に鉄分などは野菜でもなかなか補えず、これはウサギが貧血に陥ったときに問題になります。やはりバランス栄養食として、(良い)ペレットは優れている、というわけです。

実際、さきほどの「クレヨン王国の花ウサギ」の著者の福永氏は、3年9ヶ月でお月さまへ帰ってしまったロペのことを、寿命だったのかもしれない、と後書きで記しています。逆にいえば、良いペレットがなかった時代のウサギの寿命は、そのくらいでもおかしくない印象があったわけです。
現在は8〜10才。この驚異的な伸びには、たしかに栄養状態の改善が関係しているのかも知れません。

3.については、私自身は直接獣医師からこういった話を聞いたことはないのですが、そのような記述はweb上で最近よく見かけるようになりました。
どれほど問題になるかは私にはわかりませんが、うちのウサギ達を見ていて、年をとるにつれ、ドワーフ系の顎の力の弱いウサギには問題になるかもしれない、という印象を抱いています。

我が家の8才のプチは、体重1.6kgで、日本ではほぼ標準サイズですが、アメリカではかなり小さい部類に入るウサギです。
今年に入って一緒に暮らしているハレクインのルーファスに比べ、ペレットを噛んで飲み込む速度が大分遅くなってきました。
口の中に入れると、いつまでも噛んでいてなかなか飲み込めないのです。
そうすると、プチがぐずぐずしている間に、ルーファスがプチの分のペレットまで食べてしまいます。

これではプチが痩せてルーばかりが太ってしまうので、ペレットを湿らせて、小山に盛って与えてみると、プチもルーファスと同じ速度で食べられるようになりました。
しかも、湿っているため一気に食べられず、ルーファスのペレットを食べる量が減って、ダイエットにも貢献することが分かってきました。
(ちなみに、あまりべちゃべちゃに湿らせると嫌がって食べないので、指で押しても水が染み出ない程度に湿らせて、固めの小山に盛るのがポイントです。
ウサギは「齧って」食べるのが結構好きなので、小山にかじり付く感じにすると、割合喜んで食べます。一方、湿り気は嫌いなので、湿った泥のような中に鼻を突っ込まないと食べられないような状態にしてしまうと、あまり食べません。)

そもそも、うちに居る3匹のウサギの顎の大きさを比べてみると、プチの顎の大きさに対して体重3kgのルーファスはほぼ2倍、4.5kgのハナちゃんは3倍くらいの差があります。
固いペレットを食べる様子を見ていても、ハナちゃんやルーファスはゴマでもすり潰すように簡単に噛み砕きますが、プチは一生懸命噛んでいる感じなのです(若い頃からそうでした)。
この3匹と、体重1.2kgだったろし太、1.8kgだったえせるとを合わせて比べると、やはり顎の大きさと噛む力の強さには正の相関があるように思われます。

日本で売られているペレットの粒のサイズが何を基準にして作られているのか分かりませんが、アメリカのペレットの粒の大きさとほぼ同じだということを勘案すると、最初にアメリカから入ってきたペレットの粒の大きさを参考にした可能性は十分にあります。そして、アメリカで標準的なウサギのサイズは3kg前後です。小さいドワーフ系も勿論いますが、日本ほどネザーやミニロップの比重が高いということはありません。

日本も、昔は日本白色などの大型ウサギがいましたが、最近ではすっかりペットウサギが小型化しているので、現在市販されているペレットの粒の大きさが顎の小ささに合っていないのではないか、という気がしています。
毎日毎日、一生懸命噛まないと食べられないものを主食にしていたら、それは顎の骨に良くないだろう、と思いますので……。

2016年8月追記:
ここ数年の日本のウサギ用ペレットの発展はめざましく、上の記述はもはや日本製ペレットにはあてはまらないようです。ソフトタイプのものも増えてきましたね。
アメリカはまだOxbowタイプが一般的で、相変わらず歯に悪そうな硬いペレットが主流です。

最後に、5.は、ショーラビットや、純血種のブリーダーの人のwebをみるとたまに見る表現です。で、たいてい、「うちのウサギは歯のトラブルも、うっ滞も起こしません、癌にも滅多になりません」とあります。

純血種というのは、非常に管理された種類なので、特定の環境に強い傾向があってもおかしくない、と個人的には思います。毛皮の質が大事なショーラビットでは、タンパク質高めの食事を与えて、なるべくゴージャスな毛皮に、という方向で淘汰されてきているわけですから、ガンガンアルファルファのペレットを食べても歯に問題を起こさず、お腹もつまらず、という子だけ生き残って、次の世代を作ることを許されるわけですね。(歯に問題があったら、まず繁殖させないですから。)
それから、癌については、やはりかなり遺伝の問題があるようですので、きちんと管理された純血種では癌の発生率が少ない、という結果が有為に出てもおかしくはないと思います。

ただ、私が個人的に思うに、ウサギは人間とコミュニケーションをとろうとすると、弱くなる傾向があるような気がするのです。独立独歩で自分から近付いてこないような子は、何故か健康トラブルが少ない。
HRSのアダプション待ちで、なかなかケージの外に出してもらえない子達は、そうとう酷い換毛をしていても、ちっともお腹が詰まらないんですよ。
ところが、ひとたびこれがアダプションされて、お家に入ると、ちょっと派手な換毛でお腹をつまらせたりするんです。エアコンだのなんだのと、一生懸命気をつかってやっても、何故だか、ほったらかされていた頃よりトラブルが多い(笑)。

人間との関わりが、ウサギとしてはやっぱり生物学的にはストレスになっているのか、それとも、食べること以外に楽しいことが沢山あって、ついついウサギの本来の生態リズムが崩れてしまうのか、それは分かりませんが……。

そう思うと、ショーブリーディングや純血種のウサギというのは、少なくともブリーダーの元にいるときはものすごく管理されているが故に、そういうトラブルも起こらないのかな……という気がしなくもないのです。
お家にやってきたら、たまには野菜をあげてウサギが喜ぶ顔を見たい、というのが飼い主の心境でしょうし、ついつい外に出して長時間遊ばせたくなりますし、色々な意味でブリーディングの現場とは環境が違うと思うのです……
その、まったく違った環境でも、アルファルファペレットだけを与えていて、歯やお腹のトラブルを起こさないかな? と、これは、純粋な疑問。
実際に、純血種のウサギを可愛がっている方々に、本当にペレットだけで大丈夫なのか聞いてみたいです。

あと、アメリカのショーラビットさんたちは、外飼いだという話をききました。
これがもし本当なら、夜は冷え込む外で飼う以上、ある程度のタンパク質をとらないと凍えてしまうでしょう。牧草じゃダメ、ペレットもチモシーじゃ栄養が足りない、というのも、その通りだと思います。
外飼いのウサギは、毛皮がみっしりと密に生えています。あれを維持するには、それなりにタンパク質が必要です。
でも、折角何万もするウサギをお迎えして、普通外のウサギ小屋では飼わないですよね?(笑)

以上、「ペレットがウサギにとって良いかどうか?」の最終的な判断は皆様にお任せしますが、私自身は、現時点では以下のように考えています。

  • 優れたペレットは、ウサギの健康維持と長寿に貢献していると思われる。
  • ハードペレットの歯根への負担の問題は、ペレットをふやかして与えれば解消する。
  • ペレットで得られる栄養素を野菜でとろうとすると、一日最低でも5種類以上の異なった野菜を大量に与える必要がある。これは経済的にも、毎日それだけ沢山の種類を集める手間を考えても、生半可な覚悟ではやりきれない上、鉄分など一部の必須栄養素がどうしても不足する。歯の問題など健康上の問題により、完全野菜食が好ましい場合を除けば、やはりペレットを併用した方が良い。
  • ペレットをやると牧草を食べてくれない、という問題に対しては、ペレット自体の是非とはまた別に考え、対策を考えるべきと考える。
    単純にペレットの量を減らせば牧草を食べてくれる、と言い切れるほど簡単ではないケースもある。
  • ペレットさえ与えていれば、牧草も野菜もいらない、というウサギは居てもおかしくはない。大事なのは一般論ではなくて、それが自分のウサギに合っているかどうか。

2)じゃあ、どんなペレットがウサギに良いの?

この質問に関しては、幸いなことに、ウサギをよく知る人達からの意見は一致しています。以下、他の所でも書きましたが、おおよその目安です。
(あくまで目安なので、1%でもはみ出したらダメペレット、というわけではありません。また、最近はこれより厳しい値を主張する人も増えてきています。)

  • 繊維(最小)18%以上
  • タンパク質(最小)14%以下
  • カルシウム(最小)0.9%以下
  • 脂肪(最小)2%以下

最小、と書いているのは、アメリカで市販されているペレットの袋にはこのように記述があるからです。(正直、じゃあ最大はいくつなの? という疑問は当然湧くので、いかにもアメリカらしい客を煙に巻く表現方法ですが。)
日本では最大値の方を表示しているかもしれません。その場合は、20%~30%上の値をとって、大体以下の値を目安にすれば良いと思います。

  • 繊維  23%以上
  • タンパク質  17%以下
  • カルシウム 1.2%以下
  • 脂肪  2.6%以下

ここから分かることは、まず第1に、「とにかく、成分表が公表されていないペレットは買うな」ということです。

日本で普通にペットショップで手に入るペレットは、成分表が書かれていないことが多いのが困りものです。消臭成分がどうとか、低カロリーとか、そういう宣伝文句はいらないから、ちゃんと成分を数値で表して欲しいですね。

地元のペットショップには成分表つきのペレットがないから、通販で輸入ペレットを買う、という方は、こちらに大変便利な成分表一覧がありますのでご参考下さい。

Comparison of Rabbit Dry Foods

第二は、混ぜ物の入っているペレットは買わない、ということ。
乾燥ニンジンやひまわり、カボチャなどの種子が混じっているようなペレットは、ダメです。

何故ダメか?

理由は、人参も、種子も、本来ウサギの食べるものではないから。
それは、リスやネズミの主食にはなり得ても、ウサギの主食にはなりません!

我々が住むWisconsin州Madison市には、野生のウサギが沢山います。
で、私達には可愛い野ウサギですが、農家や園芸好きな人には、大変憎らしい野ウサギです。
ホームセンターには、シロアリ退治の薬といっしょに、ウサギ退治の農薬が売られています。(御丁寧に、「ウサギが好きなハーブの香り」をつけてある、と書いてあったり。。)

さて、野ウサギたちが何故ここまで憎まれるのかというと、それは、春先にやっと出た若芽を全部だめにしてしまうからです。
困ったことに、齧って折っただけで「まずい」とばかりに食べるのを止めて放置していくものだから、憎さ倍増です。

しかし、地中に埋まっている人参を齧ったから、といって憎まれるウサギは一匹もいません。ウサギが食べるのは、もっぱら土の上に出ている部分です。
つまり、ウサギは本来、根菜は食べないし、種もわざわざ固い殻を破ってまでは食べないのです。
一度味を知れば、美味しいから喜んで食べますが、ウサギの消化器官はそういうものを大量に消化するようには作られていない、というわけです。

混ぜ物いりのペレットをあげるのは、ご飯のときに、甘いお菓子を並べてあげるのと同じことです。
子供だったら、ご飯より先にお菓子に手が伸びます。で、お菓子は脂質や炭水化物が多いので、それでお腹いっぱいになっちゃって、ご飯は食べない。
そもそも、脂質も炭水化物も、ウサギの本来の食性に合わないから、腸内菌のバランスを崩します。それで、余計に食べなくなります。
ウサギには「ハンスト」という強力な手段があります。ペレットを残していても、もう半日何も食べていない、となれば、つい人間は腸の動きが止まるのを恐れてオヤツや野菜をやってしまいます。
そうすると、いつまでたっても、ペレットは食べてくれません。

この悪循環にはまって、ペレットを食べてくれないウサギに悩んでいる飼い主がどれほど沢山いることか!
ちなみに、ペレットに混ざっていなくても、ペレットとは別にこういったオヤツを与えていたら同じことですので、ご注意下さい。
特に、ビスケットタイプのお菓子は炭水化物も糖分も多過ぎます。ペレットや牧草をきちんと食べてくれないウサギには、極力控えるべきです。

困ったことに、こういうオヤツフードの購入を勧めるペットショップの店員がいるらしい。
皆様は、もし勧められたら、「いえ、これはリスやネズミのフードですよ、ウサギは地面から上に生えているものしか食べません」と教えてあげて下さい。

まあ、ちゃんとペレットも牧草も食べる大人のウサギに、ご褒美に数粒あげるくらいならいいと思いますが……。

3)ペレットは、繊維質が多い方が奥歯を削るのに役に立つ?

これも、ウサギに詳しい方の意見はほぼ一致しています。
答えは、「ペレットにいくら繊維を混ぜても、牧草の代わりに奥歯を削る効果はない」です。

これは、ペレットがひと噛みで粉々に砕け散ってしまうからで、縦の動きでは歯は削れません。歯を削るには、顎を横に動かしてすり潰す動きが必要です。
そもそも、ペレットを食べるだけで歯が減るほど大量にペレットを与えたらあげすぎですし、適量しか与えていないのにペレットで歯が削れたら、むしろ歯の質が相当に脆いということになってしまいます。

にもかかわらず、「繊維が多いから」という理由で歯のメンテに役立つかのような宣伝文句を打っているメーカーや販売店が未だにあります。これも困ったものです。

ただ、最近は、ペレットでも横の動きを混ぜてよく噛まないと飲み込めないものが出て来ました。
そういうペレットの中には、牧草の代わりにはならないが、定期的に奥歯を削らなければならないウサギで歯のメンテに通う頻度が減った、という口コミ情報があるものもあります。

ただし、大量生産のメーカーペレットに比べると、お値段も2〜3倍しますし、そのためのペレットではないので、歯を削る効果の保証があるわけではないと思って下さい。

4)大人になったウサギが、どうしても仔ウサギの頃のペレットしか食べてくれないのだけど、やっぱり大人用チモシーペレットに変えないとダメ?

これも、悩ましい問題です。
病院にいくと、まずペレットは何ペレットか、と聞かれて、チモシーだと言えば「OK」、アルファルファだというと「大人になったらチモシーペレットにしろ」と言われてしまいます。

本当のことをいえば、チモシーペレットにだって混ぜ物が多い粗悪品はあるし、アルファルファペレットにもバランスの良いフードはあるのですが、ひとくくりにこのように言われてしまう理由は二つほどあります。

  • チモシーは馬用、アルファルファは牛用の牧草です。ウサギの消化の仕組みは、馬に大変似ていますので、チモシーであればまず消化系に負担はありません。
    一方、アルファルファのようなマメ科の牧草は、ウサギによってはお腹がゆるくなることがあると知られています。
  • アルファルファペレットではタンパク質やカルシウム、脂質が多い傾向があります。そのため、これを与えると、(きちんとペレットを選んで量を制限しないと)多くの場合ウサギが太ってしまいます。

しかし、子供の頃に散々甘いアルファルファペレットを食べさせておいて、人間が食べても不味いと思うチモシーペレットに大人になってから慣れさせようというのは、現実問題としてなかなか難しい課題です。

この切り替えがうまくいくウサギと、どうしてもうまくいかないウサギは何が違うのかとずっと考えていたのですが、最近、チモシーペレットは繊維質が多くて美味しくないとかいう以前に、どうもチモシーの「味」が気に入らないウサギがいるようだ、ということに気がつきました。
ペレットがアルファルファなら牧草にはチモシーも混ぜるとか、何かしら、子供のうちからチモシーの味にも慣れさせる工夫が必要だと思います。

勿論、チモシーを食べてくれるなら、その方がウサギの消化器官への負担は少ないですので、なんとかそちらを食べてくれるよう頑張るべきです。
しかし、チモシーペレットをほとんど食べてくれないので、野菜食に切り替えたけど、種類が揃えられず、結局毎日キャベツばかりとか、オヤツみたいなものをついあげてしまう、とかいう状態に陥るくらいなら、「なるべくタンパク質やカルシウムが少ない、大人ウサギ用の」アルファルファペレットの方がまだ良い、という話もあります。
つまり、ペレットの味はあまり変えずに、成分のバランスだけを変えるわけです。

こういったペレットは、Oxbow、バニーセレクションなどから出ていて、家のウサギにたまに与えてみると、やはり嗜好性が高いです。Oxbowのorganic rabbitなんかは、原材料にはorganic grass hayとしか書いていなくてちょっとズルい感じなのですが、古いパッケージではアルファルファと書いてありましたので、多分今もアルファルファベースだと思います。それでいて、タンパク質は(最小)12%なので、これで食べてくれるならこれでも良いのではないでしょうか。

ひとつ、Wisconsin HRS(WHRS)で使用実績のあるペレットを紹介すると、ピュリナのファイバー3は上の成分表の条件をほぼ満たします。
実際、このペレットは、先述の栄養学の教授のお墨付きで、「良いペレット」だとWHRSでも紹介されています。
しかも安い!(アメリカでの話ですが)。OxbowのバニーベーシックTのほぼ半分の値段です。
そういう事情で、アメリカのウサギ愛護団体の間では結構使われているペレットです。

もちろん、ペレットは品質も値段もピンキリですので、ファイバー3より良いペレットは沢山あるのですが、このペレットの良いところは、大変嗜好性が高いことです。
実は、廃糖蜜が少量含まれていて、甘い香りがするのですね。
(糖蜜ではなく、molassesといわれるものなので、砂糖が入っているわけではありません。molassesを舐めてみると、黒砂糖のような匂いはしますが、それほど甘くはないです。ペレットを固形に固める接着剤として使われています)
これを、ちょっとお湯で湿らせてやると、ふわっと甘い香りがして、食欲のないウサギでも食べてくれる──というのは、WHRSの代表者の言。

というわけで、大人になったらチモシーペレット、は理想ではありますが、理想を追いすぎるあまりに、より悪い状態に陥るくらいなら、ちゃんと大人用に作られたアルファルファペレットを与える選択肢は考慮に入れてもいいのではないでしょうか。

なお、アルファルファを与えると、カルシウム過多になり結石が出来るのではないか、と心配される方もいるかと思います。この懸念は実際その通りですので、ペレットはかならずカルシウムの値もチェックして買って下さい。
牧草の場合は、人為的にカルシウムの値を減らすことは出来ません。

しかし、先述の栄養学教授によれば、カルシウムの大量摂取そのものが結石の原因ではないそうです。それよりも、水分の摂取量が少ないため排尿に勢いがなく、十分にカルシウムを排出できないこと、また肥満のウサギの場合は自分の肉がこし器の役目を果たしてしまい、その部分で結石ができるので、カルシウムの摂取量を減らすのではなく、ダイエットを考えるべきである、とのことです。
詳しくは、以下のエントリーをご覧下さい。

ウサギに与える野菜に含まれるカルシウムについて

5)うちのウサギはペレットも牧草も食べません。どうしたらいい?

ペレットも牧草も食べてくれないウサギは、大抵痩せ細っています。
飼い主としては、大変心配だろうと思うのですが……

お話を細かくきいてみると、結構な割合で、以下のどれかに当てはまります。

  1. 野菜や果物を沢山食べている(1.5kg程度のウサギがニンジンを1日に1本食べて、そのほかにキャベツもリンゴも沢山食べて…といった具合)
  2. オヤツフードやサプリを与えている。(乾燥野菜、ひまわりなどの種、甘いサプリなど)
  3. 口の中に問題があり、柔らかいものしか食べたくない場合

とりあえず、3番目は獣医師と相談するしかないので、ここでは割愛するとして。
1と2、意外に多いです……。
体を作るには、タンパク質が必要です。1と2に該当するものを与えていたとして、その栄養成分をよく見ると、ほとんどの場合、よほど考えて与えないと、タンパク質よりも炭水化物や糖分、脂質が大きな比重を占めてしまいます。
これらは、体を動かすためのエネルギーにはなっても、血肉にはなってくれないので、量を食べているわりには、筋肉が痩せて骨が浮き上がった感じになってしまう、というわけで……。

それでも、まったく食べないと今度は腸の動きが止まって危険だから、つい食べてくれるものをあげてしまう、という悪循環に。

こういう状態になってしまった場合は、まずは、とにかく食べてくれるペレットを探すことです(ただし成分表の書いてあるものから選ぶ)。
アルファルファペレットでは太る、とか言っている場合ではなく、とりあえずはちゃんとバランスフードを食べてもらって、栄養状態を改善する必要があります。
いきなりタンパク質が少なく、繊維の多いチモシーペレットを与えても、ほとんどの場合は食べてくれません。

やり方は、オヤツや果物、根菜野菜の量を減らす一方で、嗜好性の高いペレットを試す、といった感じです。葉野菜は減らさなくても良いですが、キャベツ一辺倒の場合はアブラナ科植物の比率を下げます(キャベツは糖分が多いです)。
ただし、嗜好性を高めるために、ニンジンエキスなどで味をつけてあるペレットは避けます。これで馴らしてしまうと、ここから普通のペレットへの切り替えが本当に大変なので……。
どうしても味をつけたい場合は、人参をすりおろしてペレットに混ぜるなど、あとで少しずつ人参の量を減らせる方法を選ぶと良いと思います。

一般に、チモシーペレットよりアルファルファペレットの方が嗜好性が高いので、アルファルファペレットでまず試し、それを食べてくれるようになったら、今度はアルファルファの牧草も与えてみます。アルファルファペレットを警戒心なく食べてくれるようになると、アルファルファの味に慣れて、アルファルファの牧草も食べてくれるかも知れません。
食べてくれるペレットにゆきあたるまで、かなりペレットの袋を買い続けることになるかも知れませんので、一番小さな袋で試すと良いかと。

時間をかけて、アルファルファペレットとアルファルファの牧草を食べてくれるようになったら、同じようにしてチモシーへの切り替えをはかります。
この切り替えは、先にも書いた味の問題などで成功しない可能性もありますが、それでも、オヤツや果物しか食べてくれない状況よりは大分ましです。奥歯を削る効果も、アルファルファはチモシーには劣るとはいえ、まったく牧草を食べないよりはずっと良いと言われています。

6)うちのウサギはペレットの嗜好がころころ変わります。何か問題があるのでしょうか?

ウサギは一般に味に対して大変保守的なので、ペレットが頻繁に変わるとストレスがかかったり、お腹の細菌バランスが崩れたりする傾向があるのですが、一方で、ウサギが年をとると、このようになる傾向がある、とのことです。

ウサギは、年をとるにつれ味蕾の数が減り、嗅覚も鈍くなるため、より強い味や香りのものを好むようになります。
このため、お腹の調子が万全でない、遊びすぎて疲れた、換毛期、といったようなちょっとしたきっかけで、いきなり今迄食べていたペレットを食べなくなったりすることがあります。

本当に体調が悪ければ、ペレットを変えても食べないのですが、そうではない場合は、違うペレットを与えると難なく食べたりします。それで安心していると、また数日後には食べなくなる、ということを繰り返します。

対策は、とにかくその日に食べてくれるペレットをあげる、ということです。
問題があるのではなく、年をとったウサギというのはそういうものだと思って、若いうちから食べられるペレットの種類を増やしておくといいと思います。

ペレットの袋が5つも6つも並んで、開封したのになかなかなくならなくて困る、ということもあるかもしれませんが、小分けにして冷凍するなどして、ウサギの年寄りの我侭に付き合ってあげて下さい。

2 thoughts on “ウサギとペレットの関係あれこれ

  1. お久しぶりです(^^) 良い記事をアップしてくださいました♪
    本来が野山に生えている草を主食としているからといって、それだけでは野生の穴ウサギ(野ウサギとは違うって事を、案外知らない人が多い)と同じような寿命でしょう。そこにペレットと言う栄養価を付加することで、近年はウサギの寿命も格段にあがりました。10歳越えても元気な子が、あちこちに楽しそうに暮らしていますものね。かく言う我が家も、シジミが無事に10歳を迎えました。10歳を迎えて、やっと飼い主として肩の荷を降ろした気がします。
    ペレットと牧草の咀嚼の仕方が違うと言うのも、わずかにではありますが、飼い主さんも気がついてきているでしょう。
    「本来の消化器官の対応が牧草向き」という点より、「咀嚼の仕方が違うから牧草は必要」と思って欲しいと思います。だからペレットだけでOKではないのですね。どうしても牧草を食べないなら、歯のためにはペレットより野菜や野草の方が次善の策だと思っています。
    もっとも最近は牧草ペレットがありますので、牧草アレルギーの飼い主さん(まれにウサギ自身がアレルギー)にも役立つものだと思っています。牧草ペレットは、栄養価的にも牧草だけより良いかな? 味は各社とも、まったくのチモシー味です。
    ペレットの硬さについては、メーカー表示に頼るのはどうかと思っています。ハードといっても唾液にあうとふわっとほぐれるものがありますし、ソフトといっても歯の研磨を考えるのか微細な粒子が入って舌に残るものがあります。
    これを確かめる手っ取り早い方法として、私は自分で食べてみます。味も香りも、ほぐれ具合も良く分かりますよ(笑) 微細粒子が入っているのも、すぐに分かります。こうしたものは入っていて欲しくないです。
    牧草を食べない我が家は、もちろんチモシー味なんて食べてくれません。常用しているのは「キャロット味の甘いペレット」で、もうこれは切り替えをあきらめました。確かに私が食べても、ウサギ用ペレットとしておいしいですもの(^^;; もらえないと、こゆきがハンストするわけです。 
    自分のウサギがどんなものを食べているのか、別に身体に悪いものは入っていませんし、飲み込まなくてもいいので、食べてみて選んで欲しいと思います。
    ひところ「歯を磨耗させるため」と称して硬いペレットがありましたが、ペットウサギ用ペレットでは今はないと思います。ただ学校飼育動物用の飼料とされるものは、顔をしかめたくなるような昔ながらの硬いペレットがあるので、これは一考して欲しいものです。加齢とともに歯も歯茎も弱りますので、いずれは歯科トラブルになります。
    加齢とともに弱る歯・・・これには「ふやかす」というのが、確かに一番良いでしょう。水分も同時に取れますので、余分なカルシウムも排泄されますしね。
    で、このふやかすので面白いのは、「暖かいほうが食べる」と言うこと。獣医さんは「香りが立つからだろうね」と言いますが、確かにそれもあるでしょう。でもそれだけじゃなさそうな気もします。 
    去年春からふやかしペレットを食べているシジミですが、これが案外かなり暖かいものを好む。残ったものを食べない。「そこにあるでしょ?」と言うと、「冷めてるんですけど!」とジト目でにらまれます(笑)  お湯をほんの少し足して暖めると、食べだします。 夏はまだ良いのですが、冬場は冷めるのが早くて・・・ と言うわけで、一回の量を減らして何度も作ることに。 現在体重維持のためにいくらでも食べさせているので、食べたくなると台所に来て「ごはん!」と要求するので、かなり手間がかかります。
    「ぬるい」と言うより「暖かい」を好む。思いついたのは、人間より高いウサギの体温。お尻洗いも人肌より「熱くない」くらいが驚かずにご機嫌でいるのですから、食べるものも暖かいものの方が、のどにもお腹にもやさしいのかもしれません。
    ちなみにシジミの好みは、猫舌の私が普通に暖かく食べられるくらい。口をつけてちょっと熱いかな?をフーフーしてあげたくらいです。思ったより暖かいでしょう?びっくりしますよ。
    人間だって具合の悪い時に、冷たいものは遠慮したいですよね。高齢や弱ったウサギの強制給餌や普段のふやかしご飯も、食が進まない時嫌がる時は、一度温かくしてみてください。うちのウサギだけなのか、ウサギたち全般に言えることなのか、そのあたりが知りたいなぁと思っていますよ。
    ゆえあって人間と暮らすようになったペットウサギ。本来の野性の姿基準ばかりだと、すれ違う部分もありそうです。ペットウサギならではの嗜好や工夫があってよいと思いますね。
    余談ですが、確かにウサギは馬に似た消化システムですので、馬とウサギのトラブルと対処方法って、通ずるものがありますよ。馬獣医さんのお話が、結構お役立ちだったりします♪ 

  2. チーママさん、こんにちは!
    お久しぶりです。最近すっかりこちらのwebは更新が滞っていて恐縮です(^^;)
    シジミちゃんついに10才ですか! おめでとうございます! うちも今度こそは10才越えしたいなあ……!

    ふやかしペレットはあたたかい方がいい、というのは、多分結構多くのウサギに共通していると思います。
    HRSの子たちも、食欲がないときはお湯でふやかす、というのが定石のようです。
    考えてみれば、ウサギの体温は人間の体温より高いのですから、人間が温いと思うような温度ではもう「冷たい」に近いのかもしれませんね。

    ふやかしペレットの有り難いところは、やはり強制的に水分が補給されるところですね。ウサギはたまに、何故か水の飲みが悪くなるので、そういう時に換毛が重なるとお腹のトラブルの確率が格段に増します。しかし、うちのウサギ達の場合は、それでもペレットがふやかされていると、割合乗り切れてしまいます。
    嗜好性は、やっぱり固形ペレットの方が好きなウサギ、ふやかした方がよく食べるウサギ、まったく気にしないウサギ、と、我が家には3匹しかいないのに三者三様(笑)。これだけを見ていても、やっぱりウサギによりけりだなあ、と本当に思います。

    ところで、ペレットに研磨剤(っぽいもの)が入っているものがあるとは知らなかった(笑)!いくらそういったものを入れても、すり潰さなければ意味がないので、上下の動きしか生まれないペレットでは駄目なんだけどなあ。。。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA