まんごろし太貧血&うっ滞  12日目からお別れまで

まんごろし太うっ滞 12日目からお別れまでの記録です。
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何から書けばいいのか、戸惑いつつも、このままでは記憶が曖昧になってしまいそうなので、時系列で覚えていることを書きます。

9/13の朝、予定通り血液検査で病院に連れて行きました。前日の観察から、歯に問題がありそうだということが分かり、麻酔をかけて詳細にスコープで調べることに。
麻酔で眠っている間に血液も採取することになりました。

午後に連絡があり、奥歯にひびが入っていたこと、その横に小さな炎症があり、それがおそらく痛んで食べられなくなったのだろう、という連絡がありました。
処置は、暫く痛み止めを飲ませ、自然治癒するか経過観察する、という方向に。
同時に、以前から頼んでいた通り、エンセファリトゾーンの対処として飲ませていたアルベンダゾールをやめてオキシベンダゾールへの変更も行いました(オキシベンダゾールの方が、飲ませる量が少ないためバナナなどにぬりつけて与えられる上、アルベンダゾールより毒性が少ない)
このとき、血液検査の結果がまだ出ていない、部局にクレームをつけておいた、と先生から言われました。

家に戻ったまんごろし太は、痛みがなくなって楽に食べられるようになったようでした。ただ、それにしても咀嚼の速度が遅い。しかし、それは口に問題があるからだろう、と思っていました。
今にして思えば、既に重度の貧血で、口を早く動かすことができなかったのでしょうが……。

翌14日、病院から緊張した声で連絡がありました。
「血液検査の結果がでて、極度の貧血が判明した」と……。
青くなって病院に駆けつけると、Dr. Kellerが非常に深刻な表情で待っていました。
PCVは13%。
今度は赤血球だけでなく、白血球も、血小板も激減。
しかも、血球がクラスターし始めており、免疫系が自分の血液を攻撃している徴候だ、と。
更に、血液の中に、新しく作られた若い血球が見当たらない……。

こうなると、もはや骨髄系の疾患が強く疑われます。
9/3には赤血球の数以外は正常、若い血球も少ないながら作られていました。
(このときに、非再生貧血、non-regenerative anemiaと診断されてはいましたが、骨髄の疾患を示すデータはなく、むしろ肝臓などのホルモンバランスの異変を疑っていました)
9/5の簡易検査では、PCVも20%から22%にわずかながら上昇していました。
それなのに、たった一週間で一体何が起こったのか……。

急遽、骨髄検査をすることになりました。
麻酔をかけて、骨髄を採取して調べる検査です。
祈るような気持ちで待っていましたが、午後1時半ごろ、絶望的な連絡がありました。
血液を作るもととなる、造血幹細胞が殆どゼロに近い数になっており、骨髄が完全に脂質化している、と……。(本来造血幹細胞がある部分が脂肪に置き換わっている)
aplastic anemia, 再生不良性貧血といわれるものです。
つまり、新しい血液がまったく作れなくなった上に、大変なスピードで既存の血球の破壊が進んでいる、ということです。

実は、犬や猫ではたまにある疾患なのですが、ウサギでは再生不良性貧血は報告されていません。
急遽、HRSのG氏やS女史が全米のHRSネットワークで問い合わせてくれましたが、症例はゼロ。
一人など、ウサギには前例がない病気だから論文にできる、とまで仰ったそうです。

症例がないのだから、有効な治療法などわかっていません。
とにかく、PCV13%は既に危険領域で、いつどこから出血してもおかしくない状態です。
そして実際に、午後には鼻から出血が始まりました。
いつもとても明るく快活な先生なのですが、このときばかりは本当に辛そうな表情で、この先どうするか、と私に聞いてきました。
この先の治療は、とても厳しいものになるだろう、と……。
私自身も一人でとても全てを理解出来る状況ではなく、正しい決断を下せるとは到底思えなかったので、同じUWで働いているHRSのG氏に電話し、無理をいって病院まで来てもらいました。
全員同じ大学に勤務しているとはいえ、仕事中なのにそれを置いて駆けつけてくれたG氏には本当に感謝しています。
G氏を交え、これまでの経過の整理を行いました。
薬学やウサギに詳しいG氏が加わったことで、色々なオプションも交えながら、具体策の検討が始まりました。

二人から懇切丁寧に説明してもらったお陰で、状況がとても厳しい、ということはわかりました。
ネックは、造血幹細胞がもう殆どないこと。
人間なら骨髄移植を行うようなレベルですが、ウサギの場合、血液型についてまだよく分かっておらず、拒絶反応が出る可能性が高すぎて危険だということ。
従って、生き延びられるかどうかは、骨髄を採取した肩以外の場所にまだ造血幹細胞が残っているか、それが薬による治療で大量に血球細胞を作りながら、かつ自分自身も増殖することが出来るかどうかにかかっていること。
現時点で既に危険領域なので、応急処置として輸血を行い、その輸血された血が生きている間に造血が始まらないと厳しいということ。
しかも、その輸血された血が免疫系に攻撃・破壊されないとは限らない、ということ(勿論免疫系を押さえる薬は投与する)。
この治療には、そもそも輸血用、点滴用の針を入れなくてはならないが、その針を刺したとたんに出血が始まり、血小板の数が足りないためそのまま失血死の危険があること。

何処を見ても絶望的でしたし、一体この治療にいくらかかるのか想像もつきませんでしたが、まんごろし太はまだ諦めていない。一生懸命、野菜もペレットも食べている……。
先生やG氏も、それが不思議だ、と首を捻っている。
普通、ここまでPCVが下がったら、もう動くのもおっくうな筈なのに、まんごろし太はまだ人の顔を見て立ち上がったり、挨拶しようとしたりするのです。

結局、まんごろし太が諦めていないのに、人間が諦めるわけにはいかない、と結論しました。
幸い、血液の提供者は、うちにハナちゃんがいました。
まんごろし太より大きくて、健康なウサギが必要。
人間のように血液型の反応がわかっていないウサギでは、免疫系を押さえる薬を注入しながらでも、血液が凝固する恐れがあります。このため、人間のように、複数の人からの血を輸血することは極力避けるべき、とされています。
ハナちゃんは可哀想に、4kgの体なのに60ccも血を抜かれて、当日夜はちょっとふらついていました(しかも後に、ハナのPCVも29%しかなかったことが判明。正常の下限は30%。)

午後6時ごろ、点滴針挿入成功。
免疫系を抑える薬の投与が始まり、数時間後に、ハナちゃんの血の輸血が始まりました。
午後8時に様子を見せてもらったときには、数時間前と異なりぐったりしていました。
先生は私達の愉気がまんごろし太に効いている、と信じてくれていて、「動物のためにも、自分が忘れられていないことを教えてあげた方がいい」と、本来簡単には入れてくれない入院動物の部屋に朝晩30分ほど入れてくれていました。
愉気すると、少し体を動かしたりもしましたが、この日はそのまま、あまり興奮させないうちに家に戻りました。

翌日、翌々日と、まんごろし太は入院していました。
先生が言うには、なるべく長い間点滴で免疫制御の薬を入れていたい、とのこと。
ハナちゃんの血のお陰で鼻血はとまり、少しずつ野菜も食べるようになりました。
ところが、16日の朝、熱が出て来たため、点滴針からの感染を疑って針を抜いた、との連絡がありました。
針を抜いてしまうと、免疫制御の薬は経口で与えるしかなくなります。
先生は、それこそ朝の4時から文献を調べて、経口ではなく皮下注射で投与する方法を探してくれていましたが、見つからず。
経口の薬にしても、臨床で研究されているものはなく、実験ウサギで使われたことがあるだけで、どのくらい効果があるのかははっきり分かっていません。

いずれにしても、点滴が出来ないなら、病院に入院させておくのはかえってストレスになる、ということで、家に連れて帰ることになりました。

細菌感染に弱い状態になっているので、とにかく徹底的に除菌すること。
触るときは手を消毒してからにすることなど、色々指示をもらいました。
すぐにペットショップへ行き、犬用のケージを買って来て、アルコール消毒し、まんごろし太の緊急ベッドを作りました。

家に戻ったまんごろし太は、びっくりするほどよく食べました……。
バジルの葉っぱ、茎2本分
ニンジンの葉っぱ、ニンジン2本分
セロリ1/2本
ペレット小さじ2杯

あの牧草を食べるのがキライな子が、牧草も食べ、オシッコもう○ちもしていました。

私は、まんごろし太の前に座り、合掌行気をしてから、離れたところからまんごろし太に向かって気を送りました。すると、指が勝手に心臓か胸腺のあたりへ向かい、そこから口に向かって何かを吐き出させるような軌道を描き、それから頭から背中をとおってお尻へ向かう、という動作を繰り返しました。
整体では、相手と気が感応すると、そうやって勝手に手が動いて気の流れを作ります。
数回それをやると、まんごろし太の耳やまぶたが痙攣し、首がビクッとひきつったように動き、それから全身をビクッと動かしました。
ちょっと痙攣がおきたかと焦りましたが、これも活元運動の範囲なので、そのままにしていたら、おさまったとたんにまた野菜を食べ、それから、ようやくゴロンとお腹を見せ、輸血の針の刺さっていた痕をこちらに向けて寝転がりました。

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ウサギは具合が悪いときは、都合の悪い部分は隠そうとしますが、うちのウサギ達は愉気に慣れているので、こわばりが抜けるとむしろ積極的に弱いところをこちらに晒してきます。なので、その傷の部分を触らないようにしながらちょっと手を浮かせて愉気してやると、ものすごい勢いで腸が動いているのが見えました。
まんごろし太の腸があんなに活発に動いたのは、後にも先にも、あの時だけです。

これは活元運動が始まったと思い、あとは気を送るだけでウサギに任せました。
まんごろし太は、発熱したり、熱が落ち着いたりを繰り返していました。
(はかったわけではないので、体感ですが)

夜中十二時半ごろ、何度か転がっては野菜を食べ、を繰り返していたまんごろし太が、遂にバジルを葉っぱだけでなく、茎ごとバリバリ食べました。それから、たんぽぽの葉っぱもバリバリ2枚食べました。
その直後、トイレに行って、おしっこかう○ちをしていたときのことでした……。
突然、鼻から大量に出血しました。
最初は、何がおきたのか分かりませんでした。
必死でくしゃみを繰り返し、鼻の両側から何かがぶら下がっているのが分かりました。
最初毛だと思ったのですが、何かの組織のように見えました。
慌てて仮眠をとっていた仔牛を起こし、まんごろし太をタオルで包んでもらって、鼻の穴を観察。何かがつまって、鼻から息が出来ず、必死でそれを取ろうとしていました。

迷っている暇はなく、ハサミを持って来てアルコール消毒し、それをカット。
あとで分かりましたが、赤いゴムみたいなそれは、血小板の塊でした……。
しかし、血はどんどん溢れつづけ、ついに東京の整体の先生に電話し、鼻血の止め方を教えてもらいました。(勿論人間の、ですが)
人間の場合、鼻血が出たときは、壁などを背にして立ち、かかとを壁にトントンと打ち付けます。実際私達も、それで血が止まるのを知っているので、それしかないかな、とは思っていたのですが、やっぱり鼻の血はそこだ、と。
祈るような気持ちで、まんごろし太のかかと部分を指で結構強く叩くのを繰り返すと、血の流れが落ち着き、ほとんど止まりました。

ほっと安心したのもつかの間、今度は溢れた血が鼻の中で固まってしまい、息ができない。ウサギは口で息をしない生き物ですが、このときばかりは、ものすごく苦しそうに口で息をしていました。しかし、鼻が塞がったままでは、口にも血が溢れてこない保証はない。
これは早急になんとかしないと窒息すると思い、荒療治を決意。
子供が鼻水がつまった時に口で吸い出すのと同じ要領で、まんごろし太の鼻に口をつけて血の塊を吸い出しました。
もう、滅菌だなんだと言ってる余裕はなかったのですが、結果的には、もしかしたらそれが肺炎の原因になってしまったのかも知れません。
ウサギの血なんて舐めたことはありませんでしたが、味が薄いのが気になりました。
何度か吸い出して、鼻から覗いているゴムのようなものを引っぱりだし、なんとか落ち着いて呼吸が出来るようになったのが午前4時。

まんごろし太は、すっかり体力を消耗していました。
なんとか休んで復活してくれることを祈っていましたが、その後は少しずつゆるやかに体力を失って行くばかりで……
大好きなバナナさえ、口に入れても、もう咀嚼する力がありませんでした。
そして、また鼻からじわじわと出血が始まりました。
水だけは飲んでくれて、水に濡れた私の手も熱い舌で舐めてくれました。

土曜日一日、呼吸に何か水の音のような異音が混じっているのに気づき、呼吸が苦しくならないよう、少し体を傾けて休ませました。G氏に来てもらい、様子を見てもらうと、高熱が続いているため肺に水が溜まり始めているかもしれない、これだけ出血してしまうと、今の出血が止まるかどうか分からない、と、言いました。
つまり、そろそろ心の準備が必要だ、と……。

この姿勢でないと、呼吸に異音が混じってしまいます。
PICT0048

最後の写真。
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折悪しく、ずっと世話になっていたDr. Kellerは金、土と非番でした。
そういう重要な判断をするなら、今まで世話になったドクターの誰よりも必死にまんごろし太を助けようとしてくれたDr. Kellerがいい、と思い、病院に連れていくのは日曜の朝にしよう、ということになりました。

日曜の朝、せめて呼吸を楽にできるよう、酸素室に入れてやりたいと思い、病院にまんごろし太を連れていきました。
Dr.Kellerは、想像していたよりもずっと悪い状態だ、といい、この先どうしたいか、と私達に尋ねました。
とりあえず、これ以上まんごろし太を苦しめる治療をしたくはない、というころは仔牛とも意見が一致していたので、問題はホスピスケアにするか、安楽死か、ということになります。
でも、まだ時々顔を動かしてこちらを見たりしているまんごろし太を見ると、どうしてもその時は安楽死とは言えなくて……
ホスピスケアにしたい、と言いました。
先生は、家でも鎮静剤が打てるよう、色々準備を進めてくれ、その間に、まんごろし太は酸素吸入をさせてもらうことになりました。

酸素を貰うと、まんごろし太は少し元気になったように見えました。
でも、家には酸素室はない。しかも週末で、どこも酸素室を貸してくれるところが開いていない……。
鎮静剤を打ってもらって、呼吸も楽になって力を抜いたまんごろし太を見ているうちに、本当に家に連れて帰ってよいのか、段々迷いが出てきました。
呼吸が苦しいのは辛い。夜中にもっと苦しくなったら、どうしたらいいのか。
今なら、楽なまま、眠るように旅立てるかもしれない……。

鎮静剤を打ってしまったら、もう食べることは出来ません。
食べることも出来ず、寝ているだけ。
それが本当にまんごろし太にとって幸せなのか、疑問が湧いてきました。
もしかしたら、今も生き残った造血幹細胞が頑張っているかもしれない、とも思いましたが、先生が体温をはかり、体温が低下していることを確認。
熱があるうちは、まだ体は戦っている状態ですが、体温が下がってしまったら、もう戦う力もない、ということです。

それを聞いたときに、漸くこのままここで見送る決心がつきました。
仔牛は、自分がぜんそくもちであることから、家でまた呼吸が苦しくなったら可哀想だ、と考えたようでした。

これらの事を決めるまで、日曜だというのに、のべ二時間以上、先生もアシスタントの学生さんも、じっと辛抱強く待ち続け、側にいてアドバイスをくれていました。
いざ決めたら、いきなり、涙が溢れてきました。
もう一週間、仔牛と交代で数時間の睡眠をとるような生活で、不安を抱え続けてきて、それでも「もし助からなかったら」と考えても涙が出ないのは不思議だな、と思っていたのに……
まんごろし太の前で、そんな相談はしたくないと思っていましたが、結局最後にそんな話をしてしまって……

午前11時近くに、ホスピスケアをとりやめ、安楽死に切り替える準備を開始。
多分、まんごろし太には、私達が決意したことが分かっていたのじゃないか、という気がします。
準備を始めてすぐ、まんごろし太の首がかしいで、体が横倒しになりました。
そして、呼吸が急に大きくなり、止まる、ということを繰り返しました。
えせるの時と同じでしたが、鎮静剤のためか、もっとずっと穏やかでした。
慌てて先生を呼ぶと、先生は「ラスト・ブレスだ」と……
慌ただしく、酸素マスクを麻酔に切り替えましたが、そのときには既に呼吸が止まっていました。
心臓はまだ弱く動いている、ということだったので、腹腔に薬を打ち、そのすぐ後に心臓も停止しました。

結局、安楽死の手順を踏んだものの、私達が手を下す前に、まんごろし太は自分でさっさと旅立ってしまいました……。
時間にして、たった数十秒の差ですが、それでも、生きる可能性のあったものを殺した、という罪悪感を抱えずに済みました。
呼吸が出来ない、という状態は、もう生きる力がない、ということだからです。
まんごろし太が、私達の気持ちを分かって自分で旅立ってくれたのなら、そういう決断をさせてしまったことを申し訳なく思いつつ、それでも、心から感謝しています。

全て終わってから、実は先生も、非番だった金曜日に、可愛がっていたハムスターを亡くしていた事を知りました。
病院に行く、と仰っていたので、てっきり獣医師として別に病院に行ったのだと思っていたのですが……。
本当に、睡眠時間を削り全力でまんごろし太を助けようとしてくれて、私達と一緒に涙を流してくれました。
こんなに飼い主へのエンパシーが強いと、医者としてやっていくのは辛いのじゃないだろうか、と心配になりましたが……それでも、彼女が担当医でなければ、私は最後まで安楽死の決断は下せなかっただろうと思います。
アメリカでは、救急病棟の医師と小児癌の医師は、10年で燃え尽きてしまう、という統計もあるそうです。
彼女がそうならないことを、一飼い主としては願いますが……。

ウサギを亡くすたびに、色々なことを学んでいます。
再生不良性貧血が分かって以来、仔牛も私も、自分との戦いでした。
悪い想像をしてはいけない。特に、愉気するときに、悪い想像が働くと、そのように誘導されてしまうからです。
常に、無心で気を通す。自分の不安をコントロールする。
それを、極度の睡眠不足の中でやらなくてはならない。
時折、疲れてしまって、全て投げ出したくなったり……。
その難しさを思い知りました。
ご家族や大切な人に、そのような難病の方がいる人は、日々どんな思いで過ごしておられるのだろう……
今までは、まったく想像も出来ませんでしたが、ほんの少しだけ、分かったような気がします。

よく、ペットは家族、子供と同じだ、という言葉を見聞きします。
ある意味ではそうなのだと思いますが、今回、決して同じではない、と強く思いました。
なぜなら、ペットは私達より早く死んでしまうものだから。
そして、人間には安楽死という選択はありませんが、ペットの飼い主はそれを考えなければならない場合があるからです。
彼らの声を聞く事すら出来ないのに……。

ペットを飼い続ける限り、何度も彼らの死を見届けなくてはならない。
それは、自分の子供とおきかえると、殆どの家庭では有り得ない頻度だと思うのです。
勿論、子供を失う悲しみは、ペットを失う悲しみと比較出来るものではない、と思う。そういう意味でも違いますが、私のように、子供が居ない人間にも、ペットを失う悲しみを体験することはある。
そして、その体験があるからこそ、ほんの少しだけ、大切な誰かを失った人の心の近くに寄り添えるのじゃないか、という気がするのです。

今回、結局まんごろし太のために、私はスウェーデンへのミーティング出張をドタキャンしました。
折悪しく上司と連絡がとれず、最後の手段で秘書さんに一方的にキャンセルすることを伝えたのですが、その後連絡がとれた上司も含め、全員が、ペットに出来るだけのことをしてあげなさい、と言ってくれたのが本当に有り難かったです。
日本では、なかなかこうはいかないのではないか、と……。

ペットは子供と同じだ、と言ってしまうと、「そんなことはない、それは言い過ぎだ」という反発が必ずあると思う。
だから、ペットは子供や家族と同じではない、でも良いと思うのです。
同じではないけれど、人として生きて行くために必要な経験をくれる。
人の死に立ち会う事が極端に少なくなった現在の先進国において、唯一、大切な存在を失う体験というか、言葉は悪いけれど、訓練をさせてくれるのがペットだと思う。
だからこそ、「たかがペット」ではないのだと思うのです。

まんごろし太を亡くした夜、整体の先生に、お礼と報告を兼ねて電話しました。
まんごろし太はなくなってしまったけど、かかとの刺激で鼻血が落ち着いた、と報告したら、先生も驚いていました。

その時に、最後に活発に出たように見えた活元運動の話をしました。
先生曰く、死ぬ間際にも、活元運動が出ることがある、と……。
長く苦しまず、楽に旅立つための活元運動というのもあるのだそうです。
生き物には全てバイオリズムの波があり、それが止まってしまう事は、どうすることもできない。しかし、止まるときには、低調期から好調期への変わり目で止まるケースと、好調期から低調期への変わり目で止まるケースがある。
前者の場合、死ぬ直前に、とても体が整った感じになり、体調が良くなる。
後者の場合は、段々と弱って、消えるように亡くなる。
だから、まんごろし太の場合は、前者だったのではないか──そんなお話でした。

私の目からは、やっぱり活元運動はひととおりしかないように見えました。
つまり、自分の体が一番あるべき状態に導くことです。
あれほど活発に出た活元運動の結果、まんごろし太の生命力がまだあれば、おそらく鼻血を吹いて自分に合わないものを捨てて生き延びたのではないかな、と。
そこで生きられるかどうかは、本人の生命力次第──そんな気がします。

野口晴哉さんくらいの達人になれば、ウサギの禁点(ここに滞りが出来ると、人間なら4日以内になくなる)も見つけられるのかも知れませんが、我々には到底無理でした。
でも、そんなもの、分からない方がいいのかも知れない。
分からないからこそ、余計な知識に振り回されず、自分の体があるべき状態へ落ち着かせることが出来るのかも知れないですから。

まんごろし太の体は、解剖検査してもらうことにしました。
可哀想かと思いましたが、前例のない難病で、何か少しでも分かれば他のウサギ達の助けになるかも知れない、と思ったからです。
唯一の心残りは、そのため、いつものようになきがらを花で飾ってやることが出来なかったことですが、もうまんごろし太の魂はとっくに天国の花園へ行って、今頃大好きなバナナを無制限に食べているだろうから、地上の花には興味はないでしょう。

いまごろ、えせるやろし太と一緒に遊んでいるかな。
最後までよく頑張ったね。
本当に、うちに来てくれてありがとうね、まんごろし太。

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ほとんど乾いて固まってしまいましたが、出たばかりのころの血小板はこれに近い色をしていました。
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う○ちはちゃんと乾いてました。消化器官は最後まできちんと働いていたと思います。
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