ウサギが夜中に体調を崩したときの対処(初級編)

(このエントリーは、HRS方式というわけではありません。が、UW-Madisonの大学病院で教えてもらったことなどをもとにしています。背中の暖め方なども、獣医師の先生と相談の上、効果があるケースもあると認めていただいた方法です。)

ウサギは夜に活動的になるため、夜中に急に体調を崩すことがよくあります。 近くに夜間も診療してくれるウサギに詳しい獣医師が居れば良いのですが、おそらく殆どの地域では、翌日朝に病院が開くまでなんとか持ちこたえてもらわなければならないのが現実だと思います。

この記事は、そういう時にどうしたら良いか、また、そういった場合のために予め何を用意しておくべきかをまとめたものです。

この記事では、獣医師との事前の打ち合わせがなくても出来る対処を紹介します。 事前の打ち合わせがないというのは、いきなり体調不良になってしまって、プリンペランなどの整腸剤や、痛み止めなどの他の薬もない場合という意味です。
主治医から薬を貰っており、このような場合の対処が分かっている方は、主治医のすすめに従って下さい。
なお、これらの薬を自分で購入し(出来るのかどうかわかりませんが…)医師の指導もなく使用するのは大変危険ですので、絶対にやらないで下さい。

以下の対処は、あくまで、真夜中でどうしてもウサギに詳しい獣医師に見せられない場合に、やらないよりはましかもしれない、という程度のものです。
近くにウサギに詳しい獣医師がいるときは、獣医師に任せて下さい。
医療行為が出来ないので、これで一晩持ちこたえてくれるとは限りません。
朝がきたら、すぐにウサギに詳しい獣医師のいる病院に連れて行って下さい。

なお、このページの情報をご利用になった結果ウサギの状態が悪化しても、当方は責任を負えません。必ず自己責任でご利用下さい。

最近は、オンラインで獣医師が24時間体制で相談にのってくれるサービスもあります(有料)。回答まで15分ということですので、緊急時にも使えると思います。 (夜中にどのくらい回答者がいるのか分かりませんが)
Just Answer 小動物
診察出来るわけではないので、結局最後は「病院に」ということになるケースが多いようですが、ウサギのトラブルはケースバイケースですので、どれだけ緊急性が高いかを計りかねる場合など利用してみてはいかがでしょうか。

 

1)あらかじめ準備しておくもの

以下は、是非常備しておいて欲しいものですが、以下の記事は、これがなければお話にならない、というものではありません。

  • Oxbow社のクリティカルケア等パウダー状のウサギ用フード(獣医師から入手。もしくは通販で買えるものも有) 急に体調を崩して流動食がない場合は、自作する。以下は、オダガワ動物病院ブログから転載しました。 1)手作り食:ゆで野菜を裏ごしかミキサーにかけ、ヨーグルト(無糖)を加える。また使用は餌を作ってから冷蔵庫保存で24時間以内。冷凍庫に凍らせて必要に応じて溶解して使用する方法も有(凍結は一般的に2ヶ月以内に使用) 2)普段使用しているラビットフードをすり潰して、茶こしにかけて、強制給餌食として使用。
  • クリティカルケアを強制給餌するためのシリンジ(注射器)、10cc~30cc 程度のもの2~3本(60ccの先が長いものもあれば便利)
  • 小児用経口補水液(注:日本ではOS-1(大塚製薬)とアクアライトORS(和光堂)が売られている)。ペット用のアクアコールでも良い(こちらは粉末を水で溶かすタイプなので、保存も簡単)。 ない場合は自作する。いくつか(医療関係者の)ホームページ(1,2,3)を確認したところ、水1リットルに対し、塩小さじ1/2(3g)、砂糖大さじ4と1/2 (40g)で良いらしい。これにレモンやオレンジを絞ると、カリウムも加えられる。 スポーツドリンクは脱水する前に飲むもので、塩分とりすぎにならないよう塩分を抑えて糖分を多くしてあるため、脱水してから使用するには浸透圧が足りない。

    2014/8/13 追記:

    ためしにアクアコールと上のレシピの自作補水液とを舐め比べてみたら、自作補水液の方がかなり甘いです。こちらで勧められた小児用経口補水液のPedialiteの自作レシピを見たら、塩の量は同じですが砂糖が大さじ2となっていたので、上のレシピは少々甘過ぎかも知れません。アクアコールはかなりスポーツドリンクに似た感じ(塩分ひかえめ)で、こちらで聞いた話では、脱水してしまった後ではその味ではなかなか吸収しない、とのことでした。
    もっとも、アクアコールは「散歩の後などの水分補給に」ということなので、もともとスポーツドリンクにかなり近いのかもしれません。それでも飲まないよりはいいですが、本当に酷い脱水のときは、ちょっと塩分多めのレシピで自作した方がいいかも知れません。
  • ペット用体温計(動物用電子体温計のアステック サーモフレックスというのが使いやすいらしいです。私も現在注文中。)

 

2)問題の程度を見ます。

  • 食欲はおちているが、まだなんとか野菜は食べられる … 対処Aへ
  • ペレットも野菜も果物もまったく食べない … 3)へ

3)おおまかに、何が問題か判別します。

複数当てはまるときは、まず該当する項目全てにざっと目を通したあとで、緊急性が高いと思われるものから順にやって下さい。

  • 胃袋がぱんぱんに張っていて、とても苦しそう…対処前の注意へ
  • 体が熱く、息が荒い… 対処Bへ
  • 体が冷たく、反応が極端に鈍い/耳が冷たく、手をあててもなかなか暖かくならない … 対処Cへ
  • 肩甲骨あたりの皮がテント状になるようにつまんで手を離すと、皮がもとの位置に戻るまでに5秒以上かかる … 対処Dへ
  • 何時間もふんが全くでていない、うずくまってじっとしている、歯ぎしりしている … 対処Eへ
  • よろついている、ひっくり返って回転してしまう、首が曲がってしまう … 対処Fへ

対処前の注意

もし、直前まで元気だったのに急に全く食べなくなった、急に踞って痛そうにし始めた、胃袋がかなり大きく膨らんでいる、時間がたつにつれどんどん胃が固くなっている、などの症状がみられたら、腸閉塞または急性胃拡張を疑う必要があります。

こちらの記事を参照に、腸閉塞または急性胃拡張が疑われる場合は、とにかくまず遠方の病院でも電話をして指示を仰いで下さい。(時間がかかっても連れて行った方がよいかどうかは、獣医師に判断してもらって下さい)

どうしても朝まで動かせない、という場合には、対処Cの愉気はしても大丈夫ですが、強制給餌や対処Dの給水は危険ですのでやらないで下さい(入れてもどのみち吸収できません)
なお、腸閉塞ないし急性胃拡張の場合は、胃腸を動かす薬などはかえって危険なこともあるとのことです

 

対処A

このケースでは、まだ最悪の状態には陥っていないので、とにかくウサギが食べてくれそうなものを、片っ端から与え続けます(ただしオヤツクッキーみたいなのはダメ)。とくに食欲が落ちた場合脱水が怖いので、野菜類をふんだんにあげて下さい。

ペレットは、お腹の中で水分を大量に吸収します。
食欲が落ちて水を飲まない状態になっている場合には、お腹の中の水を吸い尽くして、そのせいで更に食欲が落ちる危険があります。
ペレットにも興味を示す場合は、水やお湯でふやかして与えて下さい。 お湯でふやかすと、香りが立って、食欲が出る子もいます。 結構熱め(45度くらい)でも大丈夫です。
お湯では食べてくれない場合、普段から果物ジュースなどの味に慣れている子は、ジュースでちょっとだけ香りをつけて水でふやかす、という手もあります。
また、小児用経口補水液は結構甘いので、それでふやかしても食べてくれる場合もあります。

リンゴやバナナなど、果物しか食べてくれない、などのケースの場合は、果物は果糖が多すぎるので、あまり大量には与えられません(かえって胃腸のはたらきを悪くします)。
ウサギが誤摩化されてくれるようであれば、リンゴとセロリや人参などの野菜をすりおろして混ぜるなどして、量をふやすこともできますが、それでは食べてくれない場合は、対処Eと併用して、果物はあまりあげないようにします。

これで、たとえ食べてくれたとしても、食欲が完全に戻らない限りは、翌日必ず獣医師に診せて下さい。

補足:糖分について

獣医師によっては、「糖分はかえってお腹の動きを悪くするから駄目」と言われる方もいます。 その通りですし、ウサギも糖分に対しお腹がとくに弱い子も居ますので、基本的には主治医の言う事をきくのが一番です。

が、現実問題として、甘くないものは食べてくれない、という事もあります…。 甘くないから朝まで全く食べない、とハンストされると、一番怖いのは脱水です。
バナナはともかく、リンゴのような水分の多い果物なら、少なくとも水分は取れる、という利点があります。
脱水して腸が完全に止まるくらいなら、多少の糖分はあってもまだ食べて腸が僅かでも動いている方がいい、という考え方も出来ます。

ちなみに、UW-Madisonの大学病院では、とにかくハンストしかかったら、ウサギが自分から食べるものなら何でも食べさせてよい、という立場です(もちろんお菓子はダメですが)。
なので、うちでは、人参でもリンゴでも、食べてくれるものなら与えています。
そうやって、少しお腹を動かしては、野菜を目の前に置いて様子をみる、といった感じです。

 

対処B

体温が高い場合、感染症や熱中症などが考えられます。
ウサギの体温は、腸内で正常な発酵が進む温度に保たれています(38~40℃程度)。
体温が変わると、これが崩れるため危険です。
感染症の場合、体温が上がるのは体の防衛本能の一つですので、高いからといってすぐ冷やせ、というわけではないですが、体温 43℃に達すると、血液が凝固し死ぬ、とのことですので、高すぎるのは命に関わります。この場合は、すぐに冷やして下さい。 (体温が 43℃に近いときは、獣医に駆け込む前に死ぬこともあるので、とにかく冷やすのが先、とのこと)

冷やすといっても、人間のように冷水風呂にはつけられませんので、氷のうや保冷剤を薄いタオルで包んでウサギの両側に置きます。 凍らせたペットボトルでもOK。
冷えたときの対処と同じように、この場合も耳が重要な放熱器官になるので、耳の根元やその後ろ(首)を冷やすのも効果があります。
冷やしすぎないよう、頻繁に氷のうや保冷剤を外してウサギの体温を確かめて下さい。

 

対処C

耳が極端に冷たい、手で暖めてもなかなか暖まってこない場合(人間で言う所謂冷えきった状態)には、体温が相当下がっている恐れがあります。
この場合は、とにかく体温を上げなくてはなりません。
ウサギの体温は、腸内で正常な発酵が進む温度に保たれています(38~40℃程度)。体温が変わると、これが崩れるため危険です。
特に、体温が100°F(37.8℃)を下回る場合は、とにかくすぐに暖めて下さい。体温が36℃以下で大変危険な状態になります。

濡れタオルを絞り、レンジで1分加熱します。それをカサカサ音のしないビニールぶくろに入れます。 そのままでは熱いので、更にそれを乾いたタオルで包みます。
それを、ウサギの下腹の部分に押し込むか、体の両脇に置いてウサギを挟みます。
熱くなりすぎていないか、頻繁に温度を確かめて下さい。
レンジタオルは結構すぐに冷めるので、頻繁に温度を確かめて下さい。

米を靴下に入れ、レンジで暖め、それをウサギの両脇に置く方法も良いとのこと。
通常、こういう状態になっていれば、ウサギは最初は嫌がるかもしれませんが、すぐに暖かいタオルが気持ちいいことを学んで、あまり嫌がらずにその上に座っていることが多いです。

また、耳はウサギにとって放熱版ですが、逆に冷えたときにはもっとも効率よく熱を送り込める器官です。これも、人間の手で覆って、手の平から息を吐くつもりで呼吸しながら暖めると、比較的早く冷えがとれます。
人の手というのは大したもので、同じ暖かさの無機質で暖めるより効率良く熱が伝わります。しかし、体温が低すぎる場合は、時間がないのでより暖かいタオルなどで暖めても良いです(耳はデリケートな器官なので、熱すぎないように)。
背中も大抵、この状態のときは冷えきっているので、手やレンジタオルなどで同様に暖めます。

また、不調の原因が腸閉塞や炎症ではなく、胃腸うっ滞だとほぼ確信できている場合には、このレンジタオルの方法は腸を動かすのにも大変役に立ちますので、お試し下さい。(この項目については、チーママ様の情報も参考にさせていただきました。日本でも使われている手法です。)

 

対処D

肩甲骨の皮をつまんでひっぱって5秒以内に戻らないのは、かなり重度の脱水状態です。(全く戻らないのは、相当危険な脱水状態です。)
本当は、こういった時には補液が一番ですが、病院が開いていない場合は、経口でなんとか水分を補給するしかありません。

こうなると、ただの水では体が受け付けにくくなっていますので、小児用の経口補水液を飲ませます。
(「あらかじめ準備しておくもの」の項目を参照。ない場合は作れます)
ポカリスエットなどのスポーツ飲料は糖分が多過ぎて浸透圧も足りないので、代用にはなりません。

自分から飲まない場合は、こちらの強制給餌の方法でシリンジを使って飲ませます。
シリンジがない場合は、スポイトとか、ストローとか、とにかくなんでも使って飲ませて下さい。脱水は大変危険です。

ウサギによっては、経口補水液の味が嫌なのか、これを飲んでくれない(吐き出す)こともあります。
その場合は、とにかく、ウサギが飲んでくれるものをシリンジで与えます。
りんごジュースやオレンジジュースを飲んでくれるようなら、それを水で割ったものなど。

こういう事態に備え、うちでは、全てのウサギにオレンジジュースの味に慣れてもらっています(オレンジにしたのは、りんごジュースよりは果糖が少ないから)。
ただの水も、飲んでくれるなら飲ませて結構ですが、うちのウサギ達の場合、かなりの確率で吐き出します(一匹などは、噴水のように吹き出します)。
あまり糖分を怖がって、飲まない水を飲ませたつもりになるよりは、多少味をつけても、脱水を防ぐことの方が大事というケースは結構あります。
ただし、子ウサギの場合は、味をつけるのに蜂蜜はダメです。腸内細菌が十分に発達していないため、重大な支障をきたしかねません。

脱水は、経口摂取で症状自体は改善することもあります。
しかし、ウサギが自分から水を飲めず、かつ野菜など水分の多いものをとれない状態であれば、依然大変危険なことに変わりはありません。
かならず獣医師に診せて下さい。

 

対処E

なにが原因かはわかりませんが、腸の動きが止まっています。 ウサギでもっとも多い疾患、胃腸うっ滞のケースです。
(胃腸うっ滞は、それ自身が原因のこともあれば、他の原因によってそうなることもあります)

まず、背中と耳に手をあててみます。ウサギの体温は38~40℃程度なので、健康なウサギなら結構暖かく感じます。
殆どの場合、こういう状態であれば、いつもより体温が低く感じると思います。
かなり冷たいと思われるときは、対処Cと平行して行って下さい。
逆に、体温が高い場合は発熱しているので、対処Bと、脱水させないように対処Dも行って下さい。

背中の緊張の度合いをみます。持続して全体にかなり力が入り、毛が逆立っているようならば、相当ウサギが痛みを感じている可能性が高いです。
残念ながら、このケースの場合、ほとんど出来ることはありません。
以下に書いてある方法で、背中などを手であたためてやれば、多少痛みを軽減させてあげることは出来るかもしれません(逆に言うと、それ以外の処置は、素人判断でやるのは危険なのでできません)。

可能であれば、Dの方法で脱水を防ぐためシリンジで補水はしても良いでしょうが(ただし急性胃拡張の場合はダメ)、このようなケースでは、苦痛に耐えているウサギにとってタオルに包むのも最早ストレス、ということも有り得ます。
苦痛やストレスでショック死、ということも、ウサギの場合有り得ますので、どうするかは普段のウサギさんの健康状態や、脱水の深刻度などから総合的に判断して下さい。 とにかく、朝迄耐えてくれることを祈りましょう……。

一 方、全体に緊張していても、暫く背中を手の平で暖めると、背中の緊張が部分部分で緩んでくる場合や、全体は緊張しておらず、むしろ力が入らない感じだが、 一カ所(腰のあたりとか、胃袋の後ろあたりとか)だけ緊張しているように感じる場合もあります。 この場合は、まだ少しやれることがあります。

まず、手の平から息を吐くつもりになって、自分も息をゆっくり吐きながら、丁寧に背中を暖めます。
この時点では、レンジで蒸したタオルなどはまだ使わないで下さい(暖めてよいものかどうかわかりません)。人間の手の温度はウサギの体温より低いので、人間の手で暖める分には安全です。

ずっとウサギの背中の温度に集中していると、いくら暖めても暖まってこない感じがする場所が見つかると思います。今度は、そこを重点的に、そこに息を吐くつもりになってゆっくり息を吐きながら暖めます。
「冷たいような気がする」ところを「暖めているつもり」で構いません。ただし、思い込みで、「ツボはここのハズだ!」というのはナシです。自分の感覚に素直に。
(実 際、暖めている間にも、スポットは大抵移動します。また、感覚の鋭い人であれば、暖めれば暖めるほど、冷えている範囲がどんどん体表に広がってきて、手か らバキュームのように熱が奪われる感じがすることがあります。これは冷えが抜ける前の段階なので、そのまま暖めて続けて下さい。そのうち収束して、ウサギ の体温が戻ってきます。)

「そんなの、わからない!」とパニックになりかけた方、よくやり方が分からない方は、こちらの記事をご覧下さい。

多分30分〜1時間ほどかかると思います。雑念は払うこと。ウサギが心地よく感じる程度の音楽は結構ですが、人間がテレビを見ていたりして気もそぞろでは全く意味がありません。
きちんと集中していると、ウサギの腸が音を立てて動き出すことがあります。そうなればしめたものです。
大きな音がする場合は、ガスが溜まり始めています。初期の段階なら、この処置を続けるだけで回復することもありますが、ガスの固まりが大きく育っている場合は、痛みのためそれ以上の回復が進まないこともあります。
(ガスがたまっている場合、動くと痛いので、瞬発的にウサギは逃げるかもしれません。が、大抵は、そのあとまた別の場所でうずくまります。そうしたら、またそこで暖めます。本当にイヤなら必死で逃げますので、ウサギが逃げない限りは続けて大丈夫です。)

これで回復がすすまなかった場合でも、背中を暖めつづけた結果ウサギが少し縮こまった姿勢を崩してくれたら、かなりやれることは広がります。
次に調べるのは、お腹です。 胃袋に何かが大量につまっているか、それとも殆どカラッポかを調べます。
更に、腸のあたりにガスがたまっているかどうかをみます。

なかなか分かりにくいかもしれませんが、ガスが溜まっている場合にはお腹が風船のような張り方をしていると思います。
すでにぱんぱんではち切れそうな場合には、残念ながらそのままでは強制給餌も危険ですので出来ません。また、胃袋がパンパンの場合も、当然ですができません。

まだ少し張り方に余裕があり、かつ胃袋にもあまり詰まっていないと思われる場合は、通常強制給餌を試します。 注)体温が100F (37.8℃) を下回るような場合は、強制給餌は危険とのことです。その際は、対処Cで体温を上げてから強制給餌を開始します。

この場合の強制給餌は一度に大量をやらずに、3時間に1度くらいやるつもりで、一回の量は少なめにします。 最初は、10cc程度から様子をみたら良いと思います。それで悪化しなければ、3時間後にまたあげる、といった感じです。
(獣医師の診断が下ったら、一回に30ccほど食べさせる、などの指示があると思いますので、それに従って下さい)
ウサギが強制給餌を嫌がる場合、クリティカルケアを42~45℃程度(つまり体温より高くする)に暖めてやると食べる子もいます。

ウサギはこれ以上は食べられない、食べたくない、となると、口に入れても咀嚼しなくなります。呆然としてそうなったのでなければ、そのときが止め時です。
呆然として食べなくなることもあるので、その時は、強制給餌に書いてある方法で正気付かせて下さい。

背中を暖めたり、さすったりして刺激すると、お腹が動いてガスが出ることがあります。
逆に、マッサージに慣れていない人がお腹を揉むのは禁物です。
実際には、お腹をマッサージするより背中のマッサージの方が効果があるケースが多いです(背骨の周辺に胃腸のツボがある)。
また、背中を撫でるのは、素人がやっても危険はありませんので、お腹を揉むマッサージよりは、背中の冷たいところに息を吐くつもりで暖める方法をお勧めします。

どうしてもお腹に手を入れたい場合は、揉むのではなく、固いところを軽く押さえて、指の先から息を吐くようなつもりで息をゆっくり吐く、というのを繰り返していると、そこが緩んできます。
とくに、鳩尾部分の強ばりをとくのに効果があり、鳩尾の緊張がとけるとウサギは一気に楽そうになります。
実は、ウサギにとって、お腹を触られるのは大変イヤなことなので、リラックスさせるつもりが、むしろ緊張させてしまうことが多いのです。その点、押さえて息を吐くだけなら、ウサギも結構すぐに慣れてこちらに任せてくれます。

なお、過去に何度か同じ症状を繰り返していて、腸閉塞やなんらかの炎症ではなく胃腸うっ滞であるとほとんど確信出来ている場合は、対処Cも役に立ちます。

いずれの場合も、朝迄にペレットや野菜が普段通りに食べられるようになり、ふんもきちんと出て、水が飲めるようにならない限りは、必ず病院に連れて行って下さい。

 

対処F

これは、ウサギのもう一つの代表的な急性疾患、斜頸の症状です。
原因はパスツレラ菌によるものと、エンセファリトゾーン寄生虫によるものがありますが、症状としてはほぼ同じです。(足がふらつくのはエンセファリトゾーンに特有ですが)

こうなった場合は、どうしても医者の助けが必要ですが、とにかく医者に連れて行く前にやらなくてはならない事があります。 それは、姿勢が正しく保てなくなっているウサギの姿勢を保持できる環境を揃えてやる、ということです。

ぐるぐる回転している(ローリングを起こしている)場合には、回転しないように体を支えてやらなければなりません。でないと、乗り物酔いのような状態になってしまいます。 足がふらついている場合も、ウサギは自分の体が動かないことにパニックになりますので、落ち着かせてやらなくてはなりません。 首が捩じれている場合も、目を傷つけないよう注意を払ってやる必要もあります。

ローリングはたまにしかしない、という場合は、小さめのキャリーの中に転がっても怪我をしないようにタオルを敷き詰め、首をのせる枕を作ってやって、その中で過ごさせる、などでも良いです。
ウサギはローリングしないように足を踏ん張っているので、ふちの部分に綿が入った猫用ベッドを中に入れて、その中にウサギを入れてやると、ふちの部分を枕にして、残りのふちに足を突っ張ってローリングを止められるようです。
あまりそれが辛そうだったら、下の方法で、ローリングを強制的に止めてやる方が良いと思います。

ローリングが激しい場合は、狭いキャリーケージのようなものを、固い箱などで幅を狭め、タオルを敷き詰めたらウサギの体が丁度収まるだけのスペースを作ります。
このスペースは、怪我しないように、と仏心で柔らかい素材で作ると意味がありません。
ウサギが回転する力は相当強いので、ぐらぐらしないように作らないと、中で結局回ってしまいます。

このスペースに、ウサギが怪我をしないよう、柔らかいタオルを大量に敷き詰めて、その隙間にウサギを横たえます。
ウサギをつめた後にまだ隙間ができたら、そこにもタオルを押し込んで、ウサギの体が動かないように固定します。
可哀想に思うかも知れませんが、ウサギにとっても、勝手に体が回ってしまう状態は決して快適ではないので、そうやって固定してやった方が、リラックスします。

以下、えせるが斜頸になったときに作ったベッドです。バリケンネルに丁度入る木の板を準備し、そこに更に木の仕切りをL字金具とネジで固定し、タオルでぐるぐる巻きにしました。 (えせるの上下にあるタオルは、中に木の芯が入っています)
これで介護をするつもりで作ったのでこんな作りになりましたが、緊急時はもっと簡単なものでも良いと思います。しかし、強度は、このくらいあればベターです。

注)ちょっと写真が悪かったですが、呼吸が出来るように、顔の前は十分隙間をあけて下さい。
なお、えせるはこのベッドを使っていましたが、明け方に別のウサギが突然大変驚いて小屋を駆け上がりスタンピングを繰り返し、それに怯えたえせるがパニックになり、心臓発作を起こして、そのままお月さまへ旅立ってしまいました。
もともと弱っていたのですが、もしかしたら、驚いて逃げようとしたのに体が挟まれて動かず、パニックを起こした可能性もあります。
このベッドはWHRSで効果があったものですが、そういう特殊なケースにはもしかしたら危険かもしれませんので、絶対にウサギを脅かさないようにして下さい。 (その音がするまでは、苦しそうな素振りはありませんでした。)

なお、原因がどうあれ、この症状の対処は一刻を争います。病院があいたらすぐに連れていき、必要な処置をしてもらって下さい。処置が早ければ早いほど、首が曲がったままになってしまう確率が下がります。

斜頸の初期対応については、こちらの記事もご覧下さい。

5 thoughts on “ウサギが夜中に体調を崩したときの対処(初級編)

  1. もぐらさん、こんにちは
    先日はブログの訪問、コメントありがとうございました。
    いつもこっそり読んでいただけなので、初めてコメントします。

    うちの場合、土日の夜にうっ滞になることが数回ありました。
    この間も、20時過ぎで慌てて夜間救急動物病院に駆け込みましたが
    次の日にはけろっとして、ペレットの催促をしてきました。
    やっといつもの食べっぷりに戻って、この調子を安定したいです。
    こういう情報は、とてもありがたいです。
    病院に行くまでに色々と試してみることが出来ますもんね。
    これからもよろしくお願いいたします☆

  2. のゆきさんこんにちは! お返事遅くなってすみません!
    正直、こういうことをwebに書くのはまずいのかな、という気がしないでもないのですが、ウサギの場合は「それでもやらないよりはまし!」というケースも結構多い、と思いまして、敢えて掲載してみました(^^;)。
    お医者さんや飼育書出版社の立場では、やっぱり「とにかく獣医に診せて下さい」としか言えないでしょうし。
    アメリカでは、国土が広い分、ウサギに詳しい獣医が近くに居ない、というのは日本よりもっと切実ですから、HRSの会報などにはたまに、この手の情報が載っていたりします。正直、ここまでやれたら、ストレスかけて夜間病院に連れていく必要がないケースも結構あるかも、というレベルだったりしますが(^^;)
    こちらこそ、よろしくお願いしますね!

  3. ピンバック: ウサギが食べなくなったときの処置 | The Garden of Ethel

  4. こちらの情報が大変助けになりましたので、初めてコメントさせていただきます。これまでもうさぎに関する情報検索でこちらのサイトに辿り着き、色々と参考にさせていただいておりました。

    2014年5月生まれのライオンラビットを2014年7月から飼っています。初めてうさちゃんをお迎えしました。とってもかわいくて毎日癒やされています。

    昨日朝まで元気に普通に過ごしていたうちのうさちゃんが、夕方には突然何も飲まない、食べないという状況に陥ってしまいました。元気がなくなり、ぐったりとして、ケージの隅でじっとしています。毎日飛びつくように食べていたペレットにもチモシーにも、全く興味を示しません。かろうじて糞はポロポロしていましたし、お腹も特に張っているような感じはありませんでしたので、毛球症とかではなく、この時期なら熱中症かなと思い、最初は冷やす方向で対処しようとしていました。

    まずはこちらのページの情報を参考にさせていただこうと検索してみると、うちのうさちゃんと同じ症状が載っていて、さらに丁寧な対処法も!(対処Cの方法です)確かに、体を触ってみると、いつもはじんわり温かい耳が非常に冷たく、体も全体的に冷たい感じがしました。そこで、対処Cにしたがって、冬に使っていたホットマット(電気式のホットカーペット)をお腹の下に敷き、背中を2時間近く掛けてゆっくりと撫でてあげて、耳や体に体温が戻るようにしてあげました。すると、夜中には水を飲み始め、残していたペレットやチモシー、アルファルファの葉に口を付けるようになり、朝方までにはほぼ元気な状態に戻りました。暑い日が続いていたのに、なぜ急に体温が下がったのか、何か体調不良になっていないか、念のためこれから病院に行って参ります。

    こちらの情報を参考にせずに、もし冷やす方向で対処していたらと思うとゾッとしています。本当に助けになる情報をありがとうございます。もちろんうさちゃんそれぞれに個性があり、すべての情報が当てはまるわけではないかもしれませんが、今直面している状況がどれほど危険な状況なのか、経験なども含めた情報を参考にさせていただくことによって、渡しの場合はとても助けになりました。これからも参考にさせてください。本当に本当にありがとうございます。

  5. ライオンラビットさま、
    どういうわけかこちらのコメントを見逃しておりました!レス遅くなりまして大変申し訳ございません!
    ウサギさん、良くなって良かったです。

    日本は湿度が高く、人間でも暑いつもりが冷えている、ということが大変多くあります。ウサギも同じなのかもしれませんね。

    体温が下がる理由は色々あるのだと思います。もしかしたら、最初は本当に熱中症ぎみで、しばらく水や牧草を口にできなかった、ということかも知れません。ただ、それで腸の動きが止まりますと、今度は一気に体温が下がってくることも有り得るかと思います。

    一度不調になると、ウサギの体温は低温側に傾くことが多い模様です。
    現在動物看護師のコースに通っている相方(仔牛)も、「ウサギは温度が上がるケースはまだ良い、下がるケースに要注意」と言われたと言っていました。

    体温が42度を超えるようなときは冷やすことを考えた方が良いと思いますが、それ以外では人間と同じく、「具合が悪いときは基本暖める」で良いのだと思います。
    ウサギもそれが分かっていることがあり、強制給餌や保液が体温より低いと嫌がったり、余計に辛そうになったりするケースがあります。

    暖めるのが良いかどうかは、大抵は呼吸で判断できます。少し暖めてみて、呼吸が楽そうになるようであれば、そのまま続けてよい、ということです。
    うちのウサギなどは、体の両側に靴下に米を入れてレンジで1分加熱したものを入れ、その上に更にタオルを布団にしてかけてやっても、じっとして暖まっていることがあります。
    「こんなに暖めて暑くないの?」と思いますが、十分暖まると復活して自分から出ていきますので、基本本人?の好きなようにさせています。
    (うちのウサギは単に冷え性なのかもしれませんが……)

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