いきなり煽りタイトルですみません。出来るだけ多くの方に見てほしいので、敢えてこんなタイトルにしました。
警戒区域内家畜保護管理プロジェクトは、大学研究機関が主体となって福島で被曝した家畜を生体保存していく道を探るプロジェクトです。予算の都合で50頭しか対象になりませんが、家畜の用途を離れた大型動物が人間と共存する道を探るとのことです。
実は、このプロジェクトがメディアに紹介された時(もう去年の話ですが)、私が一方的にフォローさせていただいている方から、この件についてあまり良いツィートを見なかったのが気になり、直接プロジェクトの責任者にメールを出して真意はどこにあるのかを確認させていただきました。結果、私が最初に持った印象は、大きく実態と離れており、(私個人の考えでは)十分賛同できるプロジェクトであると思いました。
このエントリーの最後にメール文を転載しますので、ご覧になってみて下さい(先方の許可はとっています)。
なお、私用でweb上での公表が1ヶ月近く遅れましたので、メールを頂いたのはもう1ヶ月ほど前であることをお断りしておきます。
ネット上には色々な情報が溢れていますが、あくまで、情報発信者がその時点で得た情報をもとに発言しているに過ぎません。情報は日々刻々と内容が変わっていきますし、ツィッターのようにタイムスタンプが押せない情報ツールでは、古い情報があたかも最近の情報のように流れてしまいます。
やっぱり、何か言う前に自分で確かめないといけないなあ、と再確認しました。
現在の警戒区域家畜保護プログラムのホームページは以下の通りです。
見て頂きたかったのは、ここまでで、あとは私の呟きです。
被災した農家の方、沢山の家畜を酷い死で見送ってきた方々、一頭でも多くの牛を助けたい人々にとっては、このプロジェクトの立場は冷淡過ぎるように見えるかもしれません。
でも、なるべく多くの家畜を救おうとする希望の牧場のようなプロジェクトと同時に、このように将来をどうするのかを考えるプロジェクトも、私は必要だと思います。
「そんな悠長なことをする時間があるなら、今窮地に陥っている者を一人でも多く救ってくれ」という考え方、立場もたしかにあります。
「研究と言えば、助成金が降りるのか」と苛立つこともあるかもしれません。
あるいは、そもそも「実験動物に立場替えすることは、まったく家畜を助けたことにはならない、むしろ苦しめている」という立場もあるかと思います。
でも、現状を少しでも変えようとする活動が、多少の主張や環境の違いで足を引っ張り合っても、何一つ前には進まない、と私は思うのです。
動物愛護にも、様々な立場があり、様々な主張があります。その中には、お互いに相容れないものも含まれています。
でも、ひとつだけ、その全てに共通しているものがあります。
それは、現状を変えたい、という熱意です。
そして、現状というとても重くて動きにくいものを動かすためには、個々の主張だけで頑張っても無理だと思うのです。
動かし始めるところまでは、多少の主義の差はあっても共闘して、その中でお互い歩み寄れるところは歩み寄って改善し合う、というのが一番いいのじゃないか、と。
(まあ、それが「多少」には見えないから、けんか別れしてしまうのかも知れないですが……でも、現状を良しとする人から比べたら、結構近い位置に居ると思うのだけど。)
動き始めたあと、どのように転がっていくかは、勿論コントロールが必要で、自分の望む方向に転がすためには相当の宣伝をしないといけないでしょうが……
しかし、「このままでは自分の望む方向に転がらないかもしれないから」と転がす前から共闘相手の足を引っ張ってしまっては、そもそも「現状を変える」というイベントそのものが起こらなくなってしまいます。
長々とまわりくどい事を書きましたが、要するに、
- 人から得た情報で全部判断するのは危険。最低でも情報ソースを確認して、できれば自分で情報ソースにコンタクトとらないと本当のところは分からない
- 現状を変えようとしている他の団体の活動に文句や不満があったら、直接当事者に言って、ネット上で文句言って他人を巻き込むのはなるべく控えようよ(文句じゃなくて建設的な改善意見ならいいと思うけど)
ということです(^^;)
あ、2行で済んだ。。。
ところで、警戒区域内家畜保護管理プロジェクトのホームページから募金先口座番号の情報が消えていますね。お給料入ったから小額でも寄附しようかと思ったのに(;_;)
ただ寄附自体は募っておられるので、積極的にサポートしたい方は直接連絡をとってみられてはいかがでしょうか。
以下、プロジェクト<の実行責任者の佐藤衆介教授から頂いたメールを転載します。(私が最初に送ったメールはその後に引用されています)。 メールアドレス等個人情報は削除しました。それ以外の改変は一切行っておりません。 なお、佐藤教授には、メールの本ブログへの転載許可はとってありますが、他の方のブログ等への転載許可はとっておりませんので、転載希望の方はこの記事にリンクするのみとするか、佐藤教授に直接転載許可をお求め下さい。 当該ホームページは、私が最初に見たときから、(私の意見を取り入れて頂いて)かなり変更されました。以下のメールのやりとりは、最初のページに関して書かれたものです。
保科 琴代様
返事遅れて申し訳ございませんでした。
事務局の手違いで、昨日初めてメールを読ませていただきました。
ご心配、ありがとうございます。
以下、お答えします。
1)プロジェクト名称は「警戒区域家畜保護プロジェクト」でよろしいのでしょうか?
ご指摘のとおり「保護プロジェクト」というより、「保護家畜による除染、展示研究プロジェクト」の側面が強いプロジェクトです。
しかし、家畜としての存在意義を否定されたウシを保護するには、愛玩動物、実験動物あるいは展示動物への用途換えしかないとの考えであり、愛玩動物とするには手に余ることから、「実験あるいは展示研究提案」しかないというのが我々の考えです。
2)たとえば「希望の牧場ふくしま」など、他の民間団体との提携は今後の活動計画に入っていますか?
「希望の牧場ふくしま」とは、浪江牧場(エム牧場)でしょうか?現在のところ、考えてはおりません。当方のプロジェクトが行き詰ったら、連携させてもらうことも視野にはありますが、まずはそれぞれのプロジェクト推進が先という考えで進んでいます。
3)収容頭数は50頭程度とのことですが、今後これを大幅に拡大(現在生存している牛などを全て収容できる規模)する計画はありますか?
1)でも述べましたとおり、研究推進の中で「保護」しようとしている事から、飼育規模は研究費に依存します。50頭が精一杯の飼養規模です。1日1頭500円程度の餌代がかかります。すなわち餌代だけで1日2.5万円、1年で912.5万円です。緊急災害時動物救援本部より頂いた動物義援金は、750万円です。従って、そのお金では、1年しか持ちません。そこで、現在の10倍の面積を囲い、より低資金で運転できる状況を作ろうとしています。
国の方針に逆らう被爆家畜の保護を前提とした研究ですので、国からの研究費は下りていません。それにもかかわらず、飼育農家や愛護団体からの「保護要請」に、動物福祉を研究してきた研究者集団が、研究を絡めることにより応えようとしているプロジェクトなのです。その二面性が分かりにくいというご意見はごもっともです。しかし、保護するには、それしか手は無いとの思いです。
研究はほとんど進んでおりませんので、単なるパフォーマンスと取られても仕方ありませんし、最終的に研究費が取れなかったなら、いよいよ出口がなくなり、本当のパフォーマンスで終わってしまいます。各方面に研究費の申請を必死に行っている最中です。
しかし、たとえプロジェクトが進んでも、保護できるのはたった50頭です。全頭残すのは無理と考え、現実的な頭数を設定し、モニュメント的に残すというのが我々の発想です。その中での研究から、全頭殺処分という決断が誤りであったことを示すのが我々の目的です。残念ながら、残りのウシたちは、被爆実態調査のための献体という形で安楽殺しかないと考えています。
このような資金の無い状況ですので、募金のお願いのページも作りました。しかし何らの伝手もございませんので、募金活動は全く動いておりません。支援したいという団体がございましたならご紹介いただければ幸いです。
佐藤衆介
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Prof. Shusuke SATO
Graduate School of Agricultural Science
Tohoku University
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From: Kotoyo Hoshina
Subject: 警戒区域家畜保護プロジェクトに関する質問です
Date: Thu, 15 Dec 2011 08:33:54 +0900
警戒区域家畜保護管理特命チーム御中
本日、警戒区域家畜保護管理特命チームのホームページ
http://www.agri.tohoku.ac.jp/animal-welfare/pg527.html
を拝見しまして、いくつかお尋ねしたいことがあり、メール差し上げました。
お忙しいところ恐縮ですが、お返事頂ければ幸いに存じます。
1)プロジェクト名称は「警戒区域家畜保護プロジェクト」でよろしいのでしょうか?
ホームページのトップページには特命チームの名称があり、どのようなプロジェクトか判然としませんでしたので…
2)たとえば「希望の牧場ふくしま」など、他の民間団体との提携は今後の活動計画に入っていますか?
http://fukushima-farmsanctuary.blogzine.jp/
3)収容頭数は50頭程度とのことですが、今後これを大幅に拡大(現在生存している牛などを全て収容できる規模)する計画はありますか?
プロジェクトを拝見したところ、50頭という頭数から、「警戒区域家畜保護プロジェクト」というよりは、一部の牛を用いて除染の研究、及び資産価値を失った家畜の展示方法について研究する研究プロジェクトの側面がかなり強いと感じました。
もし私の印象が正しいようでしたら、その旨をもっと一見して分かるように、トップページに大きなフォントではっきりと明記していただきたい、と思います。
私自身は、たとえば「希望の牧場」のように、現在生きている命をなんとか繋ぐ計画と同時に、 貴チームが計画されている将来のための研究も必要だと思っております。これらは車の両輪のようなもので、二つが同時に発展することでより良い結果が得られるものと信じております。
実際に私が現在居住している米国では、こういった民間と大学機関の協力は随所に見られ、また成果も上げております。
ただ、残念ながら、拝見したホームページからは、貴プロジェクトが何を目的とし、民間の団体とはどのように違う形で貢献されようとしているのか、いまひとつ判然としませんでした。
一番恐れるのは、一見プロジェクトの目的が現在警戒区域内に放置されている牛の救済であるように見えることです。
50頭という数では、サンプル研究の粋を出られないことは、貴チームもご同意いただけるこ とかと思います。
にもかかわらず、ホームページを訪れた人に、大学が保護に乗り出したのだから、民間の保護チームは最早必要ではない、といった間違ったメッセージを与えてしまったら、今現在保護の手を必要としている家畜達の生存の道を潰してしまうことになります。
(現実に、このプロジェクトをそのように捉え、たった50頭ばかり助けて国民を宥めるためのパフォーマンスに過ぎない、という意見を、web上で既に複数みかけました。
貴チームがそのように考えているとは勿論思いませんが、政治家がどう考えるかは別の話で、私達が恐れているのは「大学がが対策に乗り出したのだから、最早民間はそこに任せて、収容できない動物に関しては粛々と殺処分すべき」と言い出す政治家が出 るのではないか、ということです。)
同じく福島の家畜達の生存の道を探っているグループに対し、支援をする人々が誤解によってお互いを攻撃するような事態にだけは、決してなってほしくない、と切実に思っております。
実際、愛護団体同士でそういう諍いは良く起こりますので……。
そういう意味でも、是非私の質問の2)と3)について、何か将来の計画があるのか、ないならば、真剣に民間との協力を視野に入れていただければ、と思っております。
展示システム等についても、民間の協力が得られれば、将来より広大な放牧地を購入するまでのつなぎとして、利用させてもらえる土地もあるかも知れません。
団体同士の協力関係が出来、役割分担がはっきりすれば、サポーターの話も 広がります。
どうか、ご検討いただけますよう、お願い致します。
長々とすみませんでした。
どうぞよろしくお願い致します。
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保科 琴代 (Kotoyo Hoshina)