避妊/去勢手術の結果メモ

避妊/去勢手術に関する情報を集めるうちに、私自身がHRSで見た事例数も忘れないうちに書き留めておこう、と思い立ちました。

レスキューの現場では、一度に複数匹が保護され、一斉に去勢/避妊手術を受けるケースが多くあります。
一般に、レスキューされたウサギ達は、健康状態もよくなく、完全な回復までには数ヶ月から半年ほどかかる場合もありますが、現実にはキャパシティの問題や人手不足のため、その回復まで手術を待っていられない事情もあります。

勿論、一般の健康診断で「良好」とされた個体以外は、手術に踏み切ったりしませんが、私が見る限り、体力回復に3〜4ヶ月の時間をかけ、十分に運動をさせてやれれば、もっと体力がついて、より安全であるだろうに、と見える状況で手術を受ける子も少なくありません。

また、手術自体も、Humane Societyなどに派遣される獣医師が半分ボランティアのような形で行っており、必ずしもウサギによく慣れた獣医に執刀してもらえるとは限りません。

以上から、避妊/去勢手術後に体調悪化する子(あるいは手術中の死亡)の数は、こういったレスキュー現場では高めに出ている、という印象があります(あくまで印象ですが)。
しかし、それでも、その詳細をつぶさに見ると、どういった子が危険に陥りやすいのか、もしかしたら見えてくるかもしれない、というのが、このノートの狙いです。


Wisconsin House Rabbit Society
※【状態】の項目は、保護当時のウサギ達の健康状態を表しています。
2007年

  • 【状態:良】ショーラビットのブリーダーから6匹の純血種サテンをHRSに移管。6匹とも避妊、去勢(パイプカット)手術をうけ、全員回復。このとき、6匹のうち5匹はHRS会員でもある有名なエキゾチックの獣医に執刀されたが、何故か1匹だけは彼女に執刀してもらえず(おそらく彼女の学生がやったと思われる)、その後パイプカット手術の精管がつながり、生殖能力を取り戻す事態が起こる(これがうちのまんごろし太)。

2008年

  • 【状態:良】Mixの母親1匹が子ウサギ7匹を生み、全員HRSで保護。
    避妊/去勢手術は全員同日に行われ、子ウサギは全員数日で回復。母ウサギのみ回復が遅く、その後4日ほど危険な状態が続いた。
  • 【状態:良】プチが(去勢されていたはずの)まんごろし太との間に4匹の子供をもうけ、4匹ともHRSに移管。雄は生後5ヶ月、雌は生後6ヶ月で手術を受け、全員3日ほどで問題なく回復。このとき、HRSのG氏は「そのくらいの数(3匹)を避妊すると、一匹くらい数日間は注意が必要な子がいても、おかしくはない」とコメントした。

2009年

  • 【状態:良】閉鎖シェルターその1から4匹のハレクイン種ウサギを保護。全員2歳未満と思われるコロニーで、手術後も問題なく回復。
  • 【状態:やや不良】閉鎖シェルターその2が21匹のMix雌ウサギの所有権を放棄し、WHRSにうち■匹が引き取られる。
    WHRS内では避妊手術が原因で死亡した個体はなかった。(他のシェルターは避妊手術を義務化していないため不明)このコロニーは、閉鎖シェルター(Sanctuaryと呼ばれる一生面倒を見るタイプのシェルターだった)のオーナーが雌を手元に残し、雄のみ里子に出すという形で緩いバースコントロールをしていたため、コロニーの殆どが雌だった。しかし、避妊しないまま雌ばかり多頭飼いしていたため、喧嘩が頻発、耳が齧られて減っているウサギが多く見られた。(半分近くなくなっていた個体もあり)また、コロニーのかなりの個体から子宮疾患が見つかっており、既に肺などに転移している個体も複数あった(このため、HRSでは比較的年齢の高いコロニーであったと見ている)。健康状態は、耳が欠けている割には予想ほど酷くはなかった(とのこと)。

2010年

  • 【状態:不良】閉鎖シェルターその3が135匹のウサギの所有権を放棄し、WHRSに47匹が引き取られる。種類はドワーフからフレミッシュジャイアントまで多岐に渡る。全員やせ細っており、うち2匹はスナッフル、2匹は耳ダニに感染(スナッフルとの重複個体あり)、1匹は重度のソアホック、1匹は四肢とも最重度のソアホックかつ右前足複雑骨折であった。また、保護後にパスツレラ由来の斜頸を発症した個体が2体あった。あまりに状態が酷かったため、避妊/去勢手術は保護後1ヶ月以上経過してから、状態の良い個体から順に行われた。手術中の死亡はゼロだったが、術後1週間以内に突然死したケースが2件あった。いずれも、もとから二匹ペアにされていたうちの一匹が死亡。種類はドワーフとジャージーウーリーだった。一匹ケージの個体の避妊/去勢手術起因の死亡はなかった。(2匹同じケージに入っていたため異変に気づきにくかった可能性は否めないが、2匹で飼われていたペアを離す事もウサギに大変ストレスがかかるため、離さなかったと思われる)

    複雑骨折の子は右前足切断手術後の予後がよくなく、二回目の手術時に死亡(避妊手術はしていない)。

2011年

  • 【状態:良】13匹のライオンラビットを所有していたオーナーが刑務所に入るため残されたウサギが保護され、うち11匹をHRSで引き受けた。全員引き渡し前に去勢/避妊手術を受けたが、問題なく回復。
  • 【状態:良】野外を放浪していたロップイヤーの雌を保護。体調は良く、痩せてもおらず、手術からも問題なく回復。
  • 【状態:良】ライオンラビットの若い雄(1歳未満)2匹を別シェルターから移管。状態は良く、手術からも問題なく回復。

2012年

  • 【状態:良】6匹の若い個体(生後4ヶ月ほど?種類不明(Mix)、立耳、大きさはミニウサギ程度)を保護。母親の母乳と盲腸糞を貰っていないため、2ヶ月ほど様子を見て避妊/去勢手術を行う。いずれも問題なく回復した。
  • 【状態:良】ライオンラビットの雌を2匹保護。いずれも1歳程度。避妊手術後、問題なく回復。
  • 【状態:不良】耳ダニ感染で酷く弱っていた個体(種類不明(Mix)、ミニウサギより大きめ)を保護。推定年齢は2歳未満。治癒後一ヶ月ほどで、去勢手術。問題なく回復した。
  • 【状態:良】ミニウサギの雄を保護。1歳前後と思われる。去勢手術も問題なく終了、回復。
  • 【状態:不良】門歯不正交合のロップイヤーを保護。門歯の状態がひどく、暫くまともに食事をとれておらず痩せ細っていた。また、門歯歯根が原因と思われる涙目で左の頬の毛がハゲかけていた。経過措置として、麻酔をかけて門歯切断。
    切断後、自力で食事がとれるようになり、体力回復のため1ヶ月を要した。
    まだ若い個体(2歳未満)であったため、門歯の全抜歯手術を行うことに。一度目の抜歯手術では上の歯一本の歯根が残ってしまい、二度目の手術で全摘出。この二度目の手術の際に去勢手術も平行して行う。抜歯後、涙目は自然に完治した。
    合計3回麻酔をかけたことになるが、いずれも問題なく回復。治療終了までに3ヶ月要した。

日本で複数レスキューの個体を一斉避妊/去勢した例がありましたら、詳細を教えていただければ幸いです。

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