(このエントリーは、アメリカのHouse Rabbit Societyから管理人が学んだことをもとにしています)
ウサギ初心者にとって一匹目のウサギを迎える事は色々と大変ですが、意外に軽視されていることの一つに、2匹目(もしくはそれ以上)のウサギを迎え入れる大変さがあります。
どんなにウサギに慣れた人でも、2匹目(もしくはそれ以上)のウサギを迎える時には、細心の注意が必要になります。でないと、ウサギ同士で下手をすれば殺し合いの大喧嘩になり、結局1匹につき一部屋が必要、という大変なことになってしまいます。これでは、多頭飼いの意味がありません。
多頭飼いの素晴らしさは、ウサギ同士でコミュニケーションし、人間が仕事で居ない間にもウサギが仲間と楽しく暮らせることです。ウサギ同士で学び合うこともありますし、あまり人になつかない子が、もう一匹のフレンドリーな子から学んでなつくようになったりします。
別の部屋で飼ってしまっては、ウサギにとっては自分に割いてもらう時間が減るだけで、なんのメリットもないのです。
というわけで、HRSではこの2匹目のウサギのお見合いに大変な注意を払います。
現実問題として、以下に記載するような方法で2匹目を見つける方法は、ペットショップでは不可能で、お見合い期間を長く設けてくれる里親募集を探すしかないでしょう。しかし、それがウサギにとっても、人間にとっても、もっとも幸せなパートナー探しであることを、実際にこの手順を踏んでウサギをアダプションした私も確信しています。
以下、二匹目のウサギを迎える前に考えておかなければならない事です。
かなり長くなってしまったので、リンクをはってみました。
1)今いるウサギが去勢・避妊手術をしていない場合は、まず手術を施し、十分ウサギが落ち着いてからお見合い相手を探す。
House Rabbit Handbookには、たとえペアの性が同じであっても、両方とも去勢・避妊が必要である、と明記してあることを記しておきます。
理由は、イエウサギは本来アナウサギが原産で、社会性のある動物であるにも関わらず、品種改良の過程でその社会性をウサギ本人も忘れている状態であること、長年の経験から、避妊・去勢という本来「自然でない」と見える状態に置いた方が、その社会性を取り戻すのに有効であると結論した、ということです。
しかし、現実問題として、HRSのない日本で去勢(避妊)された相手を見つけるのは非常に難しいと思います。里親探しサイトなどで、避妊、去勢済みのウサギを探す以外に道はないでしょう。
以上をふまえた上で、去勢・避妊済みのウサギを探すのが難しい日本の状況を鑑み、私個人の意見としては、自分のウサギを予め手術しておき、パートナーのウサギは家に馴染んだころに手術をする、という方法でも仕方がないかと考えています。
ですが、一度新しいウサギが家に馴染んだら、やはり手術は必要です。それは後に述べるように、生殖器を保持している側が大変なストレスに晒されるからです。
以下、それぞれのケースをご覧下さい。
ペアをつくるには一番相性のよいカップルです。
ただし、この場合、双方とも避妊/去勢されていることが絶対条件です。
どちらかが去勢/避妊されていれば、子供は出来ませんが、生殖機能を有する方が生殖欲に身を焦がすことになり、その結果ストレスによる病気、エンセファリトゾーン症などの危険が増します。
詳細は、去勢/避妊していない雄と雌を同時に飼うことについてをご覧下さい。
雌同士のペアも、場合によっては可能です。
ただ、雌は大変テリトリー意識が強いため、双方が生殖器を有していると、最初からけんか別れ、もしくは一度はうまくいっても、何年もたってからいきなり噛み付き合いの喧嘩を始めた、などの例もあります。
可能な限り、双方が避妊手術をすることが好ましいでしょう。
両方が避妊されていれば、一度うまくいったペアならほぼ間違いなく一生うまくやってくれます。
現在家にいるウサギが高齢のため、手術がどうしても怖い、などの場合は、相手のウサギだけ避妊して様子を見る手もあります。
どちらか一方でも生殖器を有していると、一生仲良くしてくれるという保証はありませんが、うまくいっている事例もあります。
(喧嘩を始めたら、両方とも避妊するか、分けて飼育するしかありませんので、その覚悟も決めた上でご検討下さい。)
雄同士のペアは、双方が去勢されていても大変相性が難しい組み合わせです。
ごくまれに、仲良くやってくれる事例がないわけではありませんが……。
挑戦するなら、両方とも去勢することが必須条件になるでしょう。
(たまに雄同士で飼っている方がおられますが、殆どは同腹の子、つまり同時期に生まれた兄弟で、しかも一度も離されたことがない子だと思います。この場合、思春期を迎えてすぐに去勢してしまえば、もしかすると致命的な喧嘩はせずに暮らしてくれるかもしれません。
また、この場合でも、一度でもペアを離してしまうと、再度一緒に飼う難しさは普通の雄同士の難しさと同じになります。)
一方、グループの数が増えると、雄が複数いても大丈夫なこともあります。
ただし、3匹のグループは、性別がどうあれ、大変難しいと言われています(どれか1匹が仲間はずれになる)。
雄2匹、雌2匹の合計4匹のグループなどでは、うまくいっている例もあります。
この場合は、まず雄と雌のペアを2組つくり、この二組を合同デートさせる、といったやり方で大きなグループにまとめます。
勿論、この場合、グループの全体が、去勢/避妊されている必要があります。
飼育書には、「去勢・避妊していない雄雌を同時に飼うなら、分けて飼育する」と書かれています。
しかし、「ただ分けて飼育する」というだけでは、以下の問題が起こり得ます。
- 望まない妊娠
- 生殖機能を有する雄雌が側にいるのに、生殖活動を行えないことに対するストレス
- そのストレスの結果、飼い主に対しアグレッシブ(噛み付いたり、ひっかいたり)な行動に出ることがある
- そのストレスの結果、エンセファリトゾーン症などの厄介な疾患に犯される危険が高まる
- 生殖器を有していながら、使用しないことに付随する、生殖器系の疾患の危険が高くなる
まず、「望まない妊娠」ですが……。
ケージを分けた、だけでは全く不十分です。
本当に妊娠を望まないなら、雌雄は別の部屋に隔離し、お互いお互いの部屋には絶対に入れない、くらいの強固な措置をとらない限り、何が何でも雄は雌のケージに辿り着いて、ケージ越しでも子供を作ります。
ウサギの繁殖能力とその執念を甘くみてはいけません。
特に、「一度だけ子供を作らせて、あとは分けて飼う」というのが一番危険です。一度生殖行為を知った雄の執念は、とても人間の想像の及ぶところではありません。
信じられないような方法で人間の築いたバリアを破り、雌のもとに辿り着きます。(ウサギは、扉も開けます。押して開けるだけでなく、引っ張って開ける事もできます。)
そもそも、そんなに生殖行為に執念を燃やす、というのは、ウサギ自身が子供を作る事以外なにも考えられないほど、その衝動に縛られている、ということです。
生殖器官がないウサギなら、人間と交流し、楽しい遊びを覚えることもできます。ですが、とにかく子孫を残すことしか頭にないウサギには、そんな余裕はありません。
そして、自分が望む行動ができないことにジレンマを感じ、人間に八つ当たりする子もでてきます。
更に、そのストレスが高まると、ストレス性の疾患の恐れがでてきます。
エンセファリトゾーン症もそのひとつです。
エンセファリトゾーンの寄生虫自体は多くのウサギが持っていますが、その寄生虫に免疫系が過剰反応し、正常な細胞まで攻撃してしまう、という自律神経失調には、ストレスが大きく関わっています。
最後に、生殖器を有していることそのものに対し、雌なら子宮系、雄なら精巣系の疾患に見舞われる可能性が年齢とともに増加します。
一部で「一度子供を生ませれば子宮癌にならない」という話もあるようですが、まったく根拠のない話です。
繁殖用で、毎年子供を生んでいる雌に子宮癌が少ない、という傾向は、もしかしたらみとめられるかもしれませんが、家のウサギに毎年子供を生ませていたのでは、里親探しにいきづまってしまいます。
なによりも、ウサギ達が、本当に、可哀想なのです。
私は、常々、どうして飼育書がそのことに触れないのか、不思議に思っているのですが……。
よくよく考えてみて下さい。
好きな相手と、子供をつくる日だけ一緒にされ、それ以外の日は、側にいる気配がするのに、寄り添うこともできない。
人間だって、こんなしうちを受けたら、毎日が本当につらいのではないでしょうか?
「ウサギは一匹で暮らせる」という事実と、「側に仲間がいるのに、寄り添う事もできない」という事は、全く違うことです。
嫌いな相手なら、寄り添いたくないでしょう。
でも、生殖器を有している雄と雌は、お互いの性格云々以前に、相手の側に行きたいと願うものなのです。
そのあたりを全部いっしょくたにして、「ウサギはテリトリー意識が強いから、別々に飼う方が幸せなんだ」という誤解があまりにも当然にまかりとおっていることを、本当に悲しく思います。
以下、長くなりますので補足とします。興味のある方はこちらをご覧下さい。
2)パートナーを決めるのはあなたではありません! ウサギです。
よく、「○○ちゃんのお婿さんにネザーを買ってきました」とか、「○○ちゃんのお嫁さんにしたいのでロップを募集」とかいう記事をweb上で見かけます。
気持ちは大変よくわかります……私も一匹目の里子を迎えるときは、出来れば先に亡くなったろし太に似た子を、と思いました。
でも、みかけだけで決めた結婚が非常に高い確率で破綻するように、ウサギの相性だって、雄と雌なら誰でもOKというわけにはいかないのです。
一匹目の里子を迎えると決めた当時、HRSに居た男の子は3匹で、ろし太と同じネザー、ロップイヤー、ろし太の二倍以上もあるサテンでした。我々は、うちのえせるにできればネザーの子を気に入ってほしいと思いましたが、結局彼女が気に入ったのは、一番大きなサテンの子(今のまんごろし太)でした。
これが、先代ろし太(茶色)と今のまんごろし太(白と茶のブチ)の写真です。
笑っちゃうくらい違うでしょう?(笑)
でも、彼女が選んだのは彼なのです。。。
ここで、ひとつ問題があります。
生殖器官があるうちは、雄と雌なら比較的問題なく子供は作ります。が、生殖行動をする、というのと、パートナーとしてうまくやっていける、というのは、まったく別の問題です。
実は、えせるを先代のろし太と掛け合わせた時、事が終わるとえせるは散々ろし太を追いかけ回し、マウンティング行動を繰り返しました。
これは、えせる(雌)がろし太(雄)より優位であるということを主張していることになります。ろし太は、最後には疲れて縮こまってしまいました。
さて、先の3匹のお婿さん候補ですが、えせるは最初の二匹に、先代ろし太にしたのと同じ行動をとりました。そして、Wisconsin HRSのディレクターのコメントは、「Not good」。
つまり、今となっては確認する術もありませんが、ろし太の手術が成功して、ろし太が元気になってくれたとしても、えせると良いカップルになってくれたかどうかはわからなかったのです……。
案外、えせるに高圧的な態度で押さえつけられ、怯えるだけだったかも知れません。
勿論、うまくやってくれた可能性もあったかも知れませんが……。
一方、今のまんごろし太に対しては、えせるがマウンティングを仕掛けましたが、まんごろし太がそれに怯えず、悠々としていました。そして、ほんの40分程度の時間で、えせるも落ち着き、横に並べて撫でられても怯えないくらいになりました。
こうなれば、お見合いも次のステージに進むことが出来ます。
ウサギは姿形のヴァリエーションが大きい生き物で、だから「可愛いピーターラビットが欲しい!」とか「垂れ耳の子が可愛い!」という希望が産まれるのも分かるのですが、、、
きちんとウサギを接してみると、そんなものより、性格、表情のヴァリエーションの方がよほど大きいということが分かってくると思います。
まんごろし太は、見た目はろし太とまったく違いますが、眼差しや仕草、人懐っこい性格などが、最近ますますろし太に似てきました。
本当に可愛いかどうかは、見た目ではなくて、やはり性格や表情、仕草で決まると思うのです。
そして、そういう可愛い表情を見せてもらうためには、カップルがうまくいくことが大事です。
そういうわけで、ウサギのお婿さん(お嫁さん)選びは、人間には殆ど選択権がないのです。
(勿論例外はあります……いくらウサギが気に入っても、どこの家でもフレミッシュジャイアントを飼えるだけのスペースがあるわけではないでしょうから。つまり、人間には若干の拒否権はある、という感じでしょうか。)
次の記事では、実際にウサギを迎える手順を、今のプチのお婿さんを例にとりながら説明したいと思います。
「ウサギは一匹で暮らせる」という事実と、「側に仲間がいるのに、寄り添う事もできない」という事は、全く違うことです。
と上に書きました。
人間にあてはめて考えれば当然のことなんですが、何故か、動物のことになると、それを混同してしまうケースが散見されます。
勿論、全ての動物がそうだというわけではなく、これは、社会を作るアナウサギだからこその話なのですが……。
私達も、この点を誤解していたために、大切なろし太を死なせてしまったのです。
雌のえせるを避妊したのに、雄のろし太を去勢しなかったため、ろし太はえせるに迫っては振られ続け、そのたびに酷く傷付いた表情をしていました。
えせるは生殖以外の楽しみを見つけて楽しく暮らしているのに、ろし太はそのことしか考えられず、最後にはあんなに大好きだった御飯も二の次になってしまいました。
そして、ついに、エンセファリトゾーン症を発症してしまいました。
幸い、処置が早かったおかげで斜頸はなおったものの、ろし太はすっかり、メスウサギ達以外には興味を示さなくなってしまいました。
たった10gのペレットも、完食できない。
大好きなバナナにも、以前ほど目を輝かせて飛びつかない。
そうして、一日中、姿も見えないのに、メスウサギが居るエリアの際に蹲って、じっと女の子達がいる方向を見詰めているのです。
もう、そんなろし太を見ているのが辛くて、ついに我々は去勢手術を決意しました。
そして、その手術の麻酔から、ろし太は二度と目覚めませんでした。
詳しい顛末については、こちらの記事をご覧下さい。
今でも思うのです。
ろし太にとって、えせるの近くに寄りたくても寄れなかった4年間の生は本当に幸せだったのか、と。
もっと早く、元気なうちに手術して、二匹を一緒にしてやれれば、きっともっと幸せになれた、とも。
人間がウサギに与えてやれる幸せなんて、どう足掻いても知れています。
特に、ウサギの側に、同じウサギという仲間がいる場合には……。
麻酔で、なにも分からないまま死ぬことと、側に同族の仲間がいるのに、何年も寂しい思いをして生き続けること、どっちがろし太にとって本当に残酷だったのか。
私には、後者の方が残酷だったのではないか、と思えてなりません。
確かに手術は、怖いです。
特に、今いるウサギさんが3歳以上の場合、大変な決断になるでしょう。
ウサギが体力的に一番充実しているのはほぼ2歳までです。それまでに、ウサギの手術に慣れている先生の執刀で手術を終えてしまえば、健康なウサギであれば 麻酔による死亡の危険はほぼゼロに近い数になります(体調が万全でない場合、先天的異常がある場合、ウサギに慣れていない獣医による執刀ではもう少し数字 が上がります)。
しかし、それ以降の手術は、なにかしら問題がある(回復まで時間がかかる、手術後数日は体調が安定せず危険な状態に陥るなど)可能性があると覚悟しておいた方が良いかもしれません。
そして、迷えば迷ったぶんだけ、危険は増加するのです。
私自身の経験、そしてHRSで沢山のウサギ達を見た経験から、私は断言してもよい、と思っています。
雄と雌を、お互いの匂いの届く場所で飼うのなら、去勢/避妊手術が必要です。
どうしても、もう一匹ウサギを飼いたい、うちのウサギ達の子供が見たい。
そういう夢を捨て切れない方は、もう一度だけ、以下のことを考えて下さい。
ウサギの生殖行動は、ほんの30秒です。
そして、その結果産まれる子供達は、姿形こそ親に似ているかもしれませんが、まったく別の存在です。
「今の○○ちゃんが亡くなったあとにも、その子の血を受け継いだ子がいるから……」
気持ちは、本当によくわかります。でも、血を受け継いでいたって、全然違う個性です。
今の子の命は、その子だけのもの。気質の似た子はどこかに居るでしょうが、それがその子の子供である可能性なんて決して高くはありません。
ましてや、5匹ほども生まれる子のどの子が似ているかなんて、性格がはっきりしてくる8ヶ月を過ぎなければわかりません。その月例まで待ってしまったら、今度は里子に出すにも引き取り手をみつけるのが大変難しくなります(残念ながら)。
つまり、たとえ子供のうちのどれかが親のそっくりさんであっても、その子だけを選んで手元に置くなど殆ど不可能なのです。
実際に、私達はそれを体験したからよく分かります。
えせるとろし太の気質を受け継いだ子を残したいと思いましたが、結局選んだプチは二人のどちらとも全く違う性格でした。プチよりも、HRSから引き取ってきたまんごろし太の方が、ずっとろし太の魂を継いでいる、と思います。
そして、更に、子供を持った母ウサギは性格が激変します。
その間に、折角のパートナーとの関係は木っ端微塵に砕け散ります。
最悪の場合、雄は今も好意を持っているのに、雌はすっかり興味が失せてしまった、という片思いカップルにもなりかねません。
毎日、匂いはするのに、顔は見えるのに、ただ眺めるだけ。
言葉をもたないウサギ達は、声でおしゃべりする事もできない。
こんな残酷な話、耐えられないと思いませんか?
「あなたたちは、自分達のウサギで繁殖して、子ウサギの姿も見たくせに、他人に繁殖をやるなというのは、勝手な話じゃないのか?」
そういうご非難もあると思います。私も、勝手なのだろうな、と思います。
しかし、その結果、私達がろし太を失って味わった苦しみや、ろし太に詫びても謝り切れない罪悪感は、到底言葉に表し切れるものではありません。
我ながら馬鹿だと思いますが、大切な存在を失い、真面目にHRSの資料を読んで勉強し、えせるとまんごろし太の幸せな生活を目の当たりにして、初めて、自分達がどれほどろし太に酷い仕打ちをしていたかに気づいたのです。
ウサギだから、そんな深い情はない、ともし思っているならば、是非その考えは今改めていただけたら、と思います。一度、去勢・避妊されたペアが仲睦まじく暮らしている姿を目の当たりにすれば、その残酷さを実感出来るでしょう。
ウサギって、本当に、いつもぺったりくっついているのが大好きな生き物なんですよ!
うまくいっているペアがどんな暮らしをしているかは、こちらの写真館を見て下さい。
ピンバック: 多頭飼いが適しているケース | The Garden of Ethel