ロスのプチ不調

最初に不調に気付いたのは、仔牛の方だった。


「なんか、ロス、お尻下がってない? あと後ろ足も力が入ってないみたい……」
急激な回復を見せて既に五日、傍目にはその更に一週間前まともに蹲る事も出来ない状態だったとは思えない状態にまで復帰していたロスが、プチ不調を起こした。
プチ不調といっても、今迄の我々だったら、気にも留めないレベルだっただろう。相変わらず草は大変好調に食べていたし、ペレットも残さずたいらげる。女性陣への興味も津々で、なかなかケージの側から離れようとしない。しかしその一言で、いつの間にか、体調チェックが項目ルーチン化して居た事に、はたと気付かされた。
確かに、お尻が萎縮している。完全復帰する少し前の感じに似ている。嫌な感じがした。
実は、木曜から金曜の晩にかけて、仕事が立込んで帰宅出来なかった。それなりに注意を注いでいたものが急に欠けてしまうと、回復の途中にある者には打撃になってしまうのはよくある事だ。仔牛が居てくれたからよかったが、もしかしたら、二人とも居なければがくっと悪化していたかも知れない。
ためしに尾骨の近くに指を当ててみると、一昨日まではたしかに解消されていた奇妙な冷えに指が触れた。
人間でいえば、尾てい骨の不調は脳に繋がっているらしい。ウサギは尻尾があるので、尾てい骨ではなくて尾骨の根元の部分に触れたわけだが、E-cuniculiにやられて暫く、ここに風穴が空いたように冷えがあった。毎日愉気を続けて、それがなくなって数日後から目に見える回復が始まった。それから何度か触ってみて、冷たくない事を確認していたのに、今日また冷えているというのはどういう事か。
まさか、また虫が脳で繁殖しているのでは、と嫌な気分になったが、どのみちこの虫とは一生付き合って行かねばならないのだ、と考え直し、冷えがなくなるまで尾骨付近に愉気。すると、ロスは愉気された格好のまま、猛烈な勢いで草を食べ始めた。
大体、ウサギというのは尻や後ろ足を触られるのを極端に嫌がる。当然のことで、後ろは見えないし、後足はウサギの生命線だからだ。まあ、こちらを信頼してくれているのだろうけれど、それにしても、尻に人間の指を吸い付けられたまま脇目も振らずに食事しているというのは、よほどの事なのに違いない。
副作用を恐れて虫下しをalbendazoleからoxibendazoleに変えたが、もしかしたら、それが上手く働いていないのではないか、とも考えた。ロスの場合、幸いにして、最初に処方したalbendazoleが効いた。効いたが、十日程して、なんとなくロスの両眼が腫れぼったいように感じたので、もともと副作用の報告の多いalbendazoleを危ぶみ、oxibendazoleに切り替えた。こちらの方が処方量も少なく、一日0.1mlとバナナに塗って与えられるような量なので、ロスに強制投薬の心理的負担を与えずに済む、という判断もあった。
だが、そんなわけで、ほとんど回復してから切り替えたので、oxibendazoleそのものの効果がどれだけ上がっているのかはよくわからない。もしかしたら、効いてないのかもしれない。だが、だからといってalbendazoleに一生頼り続けるわけにはいかないし、oxibendazoleだってそう長くは続けられないのだ(bendazole系の薬は、長期投与すると効かなくなってくる事例が報告されている)。ここは、なんとしても、自分の体力で虫を撃退してもらわないと……
あまりいろいろなものに頼りたくはないのだが、まだ本来は病人(病兎?)の体なのだから、と思い直して、暫く中断していたローヤルゼリーを飲ませてみた。これも、本当に効いているのかどうかは分からない。が、薬で疲れた肝臓や腎臓に活力を与えてくれる効果は期待出来そうだ。なにしろ、ロスの尿は明らかに薬の匂いがしているし、投薬中は腎管機能がフル回転しているであろうことは想像に難くない。
夜中頃になって、すこし尻の萎縮した感じがなくなってきた。このまま、また回復路線に乗ってくれればよいのだが。

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