こちらの記事で紹介したように、神経症状には、かなりゆるやかな症状を見せるものもあるようです……。
実は、エンセファリトゾーンが原因と疑われるゆっくりとした眼振やゆっくりとした首振りについて、インターネット上で検索をかけたところ、非常に記述が少ないことに気づきました。
そこで、この急性でない症状の症例を集めよう、というのがこのエントリーの狙いです。
(従ってこの記事は今後追記の可能性があります)
まず、うちで3週間お泊まりのEddy君(8歳♂)のケースです。
どうも、ゆーっくり頭が回転しているのではないか、と気づいたのが、我が家にやってきて3日目の10月9日の朝のことでした。ビデオではよくわかりませんが、非常にわずかながら眼振も時折みられました。
私達は過去にE-Cuniculiで急性症状(斜頸)を見せたウサギ(ろし太)をみていますが、この回り方はそこまでひどくありません。もしかして、数時間後には急性症状を見せるのではないかとかなりハラハラして見ていましたが、結局週末も大事には至らず、11日の月曜日に病院で診てもらった結果は「健康、歯の問題もなし」。結局、原因はわからずじまいとなりました。
(その時のエントリはこちらをご覧ください)
その時、ネット上でゆるい眼振についての記述を探していて辿り着いたのが、「兎鳥庵 日記」のちゅんちき様のところのあい君のケースでした。その後、メールをやりとりして、あい君だけでなくユキちゃんも、ゆるい首振りがあったと分かりました。以下、ちゅんちき様の許可をいただき、エンセファリトゾーンに関してお医者さんとの会話が掲載されている記事をピックアップしました。
これをみると、確かにエンセファリトゾーンは急性症状ばかりではない、ということのようです。
次は、「チーママの庭とウサギたち」を管理されているチーママさんの記事からです。
(まだリンク許可を頂いていないのですが、トラックバックをOKされているのでリンクさせていただきました)
この中に、以下の記述があります。
『今まで聞いたお話では「しゃっくりをする」「体の横をビクビク引きつらせている」などというウサギさんが、後日EZだったと分かった事もありました。』
実は、うちのまんごろし太は、いまひとつ調子が悪そうなとき、しゃっくりや体の横をビクビク引きつらせていることがあります。
まんごろし太はエンセファリトゾーン検査陽性ですので、この例に当てはまると思います。
ここでちょっと余談ですが……。
ところで、ウサギに関わらず何故しゃっくりをするか、という件で、整体の先生から興味深いお話を伺いました。しゃっくりは、肝臓をゆらして血の巡りをよくする事に対応しており、肝臓が疲れているときに出る、という話です。人間でも、点滴やステロイドなどで急に肝臓を酷使すると、しゃっくりが出ることがあります。
エンセファリトゾーンはまず肝臓に巣食うということですので、調子が悪いときにしゃっくりをするのは理にかなっていると思います。
この記事を拝見してから、ウサギ達が体をひくつかせているときには、整体の先生が私にやって下さるように、背中側からみて肋骨のすぐ左下あたり、肝臓の部分に手をあてて軽くゆすってやることにしました。
(おそらく触っているのは胃袋だろうと思うけれど、その上にある肝臓も揺らされていると信じて)
すると、通常うちのウサギ達はお腹を触られるのはあまり好きではない(触れるけれど、びっくりさせないよう時間をかける必要がある)にもかかわらず、うちの子達は全員すぐに力を抜いてこちらに任せてくれました。
おそらく気持ちがよいのだろうと思います。
ちなみに、HRSでは引き取ったウサギについて、特にエンセファリトゾーンの検査はしていませんし、共同部屋で飼育している以上たとえ陰性の子であっても徐々に陽性になってしまうと思われます。
病院でも、エンセファリトゾーンを持っている事自体は問題ではない、発症しなければよい、と今まで関わった獣医さん全員から言われました。
うちの子達は全て陽性であることが分かっているので、どこかで駆虫薬を集中的に与えた方がよいか、ということに関しても何度か相談しましたが、どの先生も「症状が出たら、で良い」という返答でした。実際、駆虫薬を飲ませて一度は根絶したと思っても、また数年後に発症する例もあり、解剖しない限り完全に根絶したかどうか分からない、ということが背景にあるようです。
なお、上記のリンクではフェンベンダゾールを使用し続けた場合耐性が出来る可能性について、先生はないという返答をされたようですが、こちら(Wisconsin, Madison)では長期使用で効かなくなってくる、というのが定説のようです。こちらにも、だんだん効かなくなってくるために代替の薬を検討している記事があります。
(久々にページを見にいったら、首振りのビデオも公開されていました)
勿論先生によって意見はいろいろあるでしょうが、これまでの話を総合すると、エンセファリトゾーンを根絶する、というよりはうまく付き合っていけばよい、ということになりそうです。
実際、神経症状が引き起こされるのは、寄生虫本体のためではなく、それに免疫が異常反応するからです。免疫の異常反応は自律神経失調症ともいえますから、人間ならきちんと運動をし、休養をとり、バランスのよい食生活を送り、ストレスを軽減し、、といったことで改善するところです。
人間と違ってウサギさんを鍛えるというのは難しいですが、なるべく早く異変に気づいてやることで、なるべく薬に頼らず、自力で治せる方向にもっていき、自律神経系を鍛えて発症させないようにする、というのが結局唯一の対処法なのかもしれません。
以下、個人的な印象ですが……
ウサギの寿命は一昔前より大幅に伸びましたが、個人的に、やはりウサギが本当に生命力に溢れているのは精々3〜4歳までで、伸びたのは老後だという気がしています。
Wisconsinには野生の野ウサギが沢山いるのですが、彼らの平均寿命はなんと1年なのです。
勿論、仔ウサギのうちに死んでしまう個体が多いから平均年齢も下がるわけですが、おそらく自然界では、長生きしても3〜4年でしょう。
ペットのウサギは、自然のウサギよりずっと栄養バランスのとれた食事をして、医療を与えられるので、うまくすればその倍生きるけれども、本来はやはり3〜4年を生きるように出来ている体なのではないか、という気がするのです。
そう仮定すれば、ユキちゃんのように若年で発症している例はともかく、年をとれば、それだけ自律神経系のトラブルも多くなりますから、結果的に4歳過ぎたあたりからエンセファリトゾーン起源の疾患が目立つようになってきているのではないか、とも考えられます。
整体では、病気は治すべきもの、とは考えず、むしろその機会を生かして体を整えることが出来ると考えます。
エンセファリトゾーンは寄生虫ですが、考えようによっては、これが居ることで免疫系が常に鍛えられているとも言えます。エンセファリトゾーンがウサギの進化の過程で死滅せず、今に至るまで共存を続けているのには、もしかしたら何か理由があるのかも知れません。
個人的に、エンセファリトゾーン陽性の群と、陰性の群で、エンセファリトゾーン症以外の疾患に差があるか、なんて研究があったら面白いと思います。
(もう既にあるのかも知れませんが……)