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C. Suter DiplMedVet, U. U. Müler-Doblies, P. Deplazes, and J-M. Hatt MSc “Prevention and treatment of Encephalitozoon cuniculi infection in rabbits with fenbendazole” VeterinaryRecord(2001) 148,478-480
有名な2001年の論文。フェンベンダゾールをエンセファリトゾーンのウサギに与えた際の効果を研究しています。たった3ページの中に2つの実験結果が掲載されており、一読の価値ありです。
実験1は、2組8匹の実験用ウサギを用いたものです。8匹全部を人工的にエンセファリトゾーンに感染させ、4匹は何もケアせず、残る4匹は強制感染させる1週間前からフェンベンダゾールを与え続けます。更に、このフェンベンダゾールを与えた組から2匹は、強制感染から21日経過するまでフェンベンダゾールの投与を続け、残る2匹は、感染から2日後に投与を止めます。これらのウサギは血液を2週間ごとに採取し、滴定検査でエンセファリトゾーンに対する抗体量を見ます(抗体が多いほどエンセファリトゾーンに多く寄生されている)。
更に6ヶ月後、全てのウサギを安楽死させ、脳を解剖してエンセファリトゾーンに寄生されているかを調べます。結果は、投与期間に関わらず、フェンベンダゾールを与えた組の脳からはエンセファリトゾーンが見つからず、投与されなかったグループからは全て寄生が確認されました。
実験2は臨床実験で、17匹のウサギ(滴定検査でエンセファリトゾーン抗体が多く、その検査時点から1年未満に死亡し、オーナーから剖検の許可を得たグループ)によって行われました。うち8匹にのみ、フェンベンダゾールを含有したペレットを4週間与えたところ、6匹は別の死因で死亡、2匹は症状が改善しなかったため安楽死となり、このグループの脳から寄生虫はみつかりませんでした。
一方、フェンベンダゾールを投与しなかった残りの9匹のうち、7匹から脳内寄生が見つかったとのことです。
この論文のDiscussionには、実験1から感染前にフェンベンダゾールを与えたことに効果があった(感染後2日で投与を止めても効果があったことからそう結論したと思われる)ことから、フェンベンダゾールを予防薬として使用する可能性について触れられています。ただこの論文は短期投与の結果しかなく、長期投与した際についての副作用は論じられていません。
私達のウサギがベンダゾール系薬品を処方された際に、こちら(米ウィスコンシン州マディソン)で複数の獣医にベンダゾール系薬品の副作用について聞いてみましたが、いずれも長期使用するとだんだんエンセファリトゾーンに効かなくなってくる、とのコメントを得たことを併記しておきます。
更に、暫定結果として、滴定検査でエンセファリトゾーン抗体が多く、かつ斜頸などのエンセファリトゾーンに顕著な神経症状を示した18匹のウサギにフェンベンダゾールを四週間処方した結果についても触れられており、8匹は四週間以内に症状が改善、3匹はやや症状が残った(うち1匹はその後改善)としています。残る5匹は改善せず、4週間以内に全て安楽死させたとのことです。
余談になりますが、この論文の登場で、エンセファリトゾーンは必ずしも不治の病ではなくなりました。このことにより、よりウサギの肝臓に負担がかからず、効果的な薬品の研究も進んでいると思います。が、一方で、この論文のために25匹のウサギ達が剖検にかけられました(うち8匹は実験のために健康体のまま安楽死させられました)。
ウサギオーナーとしては、もっとどんどん研究して新しい薬を開発して欲しい、と思ってしまいますが、その陰に、こうして尊い命と死後の体を研究に捧げてくれたウサギ達が居る事を忘れてはならないと思います。