追悼

モンテセロからここチャペルヒルに引っ越してから、何故かモンテセロでのろすの記憶が殆ど無くて、なんとかして、まだそんなに悲しそうじゃなかったろすのことを思い出せないかと探していたら、少しだけ、思い出した。


モンテセロに居た頃、ろすはリビングに居て、時々リビングと廊下を隔てる柵をかいくぐったり、台所の閉め忘れたドアから自分達の寝室にやってきた。
特に、土日の朝、自分達は昼過ぎまで布団にもぐっていて、その間ろすは朝ごはんをひたすら待つ事になる。
と、そんな朝、ろすは仔牛たちを起こしに来た。
寝部屋の中に、いつのまにかろすの「ぶっぶっ」という短い呟きのような声と、ぱふっぽふっ、という布団の上を飛び跳ねる足音が鳴り出し、彼の冷たい小さな鼻が、つん、と手などに当たる。
仔牛たちは慌てて起き上がる。
「ろすが来た!」と。
それから、こんな事もあった。
ビニルカーペットを購入した際、それは硬いダンボールの芯に巻きついた状態でうちに来た。
長いもので、半分に切って、取り合えず寝部屋に入れて置いた。
仔牛が何かの折に寝部屋に行った際、そのダンボールの芯からかさこそと音がする。
ねずみか?!
仔牛の体は硬くなった。
仔牛はダンボールの芯をゆすった。
少しゆすったくらいでは出てこない。
それでもっとゆすった。
中の生き物は、筒の中を上へと移動しているようだった。
なので、傾きの上部に立ち、思いっきりゆすった。
と、
茶色のちびうさぎがいっぴき、ものすごい勢いで飛び出してきた……。
ろす太だ……。脱力……。
ろすには格好の遊び兼探検トンネルだったらしい……。
チャペルヒルに越してからというもの、常にお嬢さんたちの事を視界にちらつかされ、ふられ続け、いつのまにか悲しい顔をすることが多くなったろす太。
でも、モンテセロに居た頃のろすの記憶が、今、探してみると多くない。
一体どこにろすのお家があったのか、それすら思い出せない。
仔牛はリビングでろすと同じ床の上に座って生活していたのに。
モンテセロにはろすは10月の半ばにやってきて、その翌年の9月の半ばにチャペルヒルに越してきた。
その一年弱のろすの記憶がこんなに薄いのは、仔牛がいかにろすにかまってなかったか、ということなのだろうな……と思う。
あいつはいつも仔牛の徹夜に付き合って、挨拶に来てくれたりしていたのに……。
もっと思い出したいのに……。

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