素人でもやれるウサギへの愉気について(マッサージの代用として)

(このエントリーは、管理人の経験にもとづいて書いています。が、獣医の先生から、素人がやっても全く危険はないこと、効果が認められるケースもあることのお墨付きは頂いています。)

うさぎの軽度の胃腸うっ滞にマッサージやツボ押しが効果があることは、おくだひろこ先生の「うさぎと暮らす式 新マッサージ大事典」などの本が出ていることからも、比較的広く認知されていることかと思います。
すでにこういった情報に詳しく、普段から実践されている方は、ご自分の慣れている方法でやっていただくのが一番かと思います。

ただ、実はマッサージとかツボ治療というのは、それ専用の免許があることでも分かる通り、下手をすると相手に怪我をさせてしまうこともある方法でもあります。
とくに、人間よりずっと小さなウサギが相手の場合、お腹を揉むマッサージは注意が必要です。
力の加減は、きちんと先生について教えていただかないと、素人判断では余計に悪化させてしまう結果にもなりかねません。

というわけで、ここでは、まったく事前知識がなくてもウサギを危険に晒さずにやれる方法を紹介します。
といっても、我々は獣医ではありませんので、人間用に体系づけられた野口晴哉さんの「整体」の中から、どんな場合に用いても危険がなく、かつ一定の効果が認められる「愉気」を用いています。

なお、この方法は、軽度の胃腸うっ滞が解消することを保証するものではありません。
むしろ、夜間に軽いうっ滞が生じ、朝に病院が開くまで待たなくてはならないような場合に、なにもしないよりは良い、という程度のものです。
完全に食欲が回復し、ふんがきちんとコンスタントに出て、水が飲めるようにならない限りは、必ず獣医に診せて下さい。

体がぶるぶる震えている、ひどく歯ぎしりしている、などの場合は、最早軽度のうっ滞とは言えないので、すぐに病院へ。

以下、軽度の胃腸うっ滞のケースを仮定していますが、別に具合が悪くないときにやっても全く問題ありません。
一度、健康なときにやってみて、ウサギの腸がどのように動くか、観察してみると面白いと思います。
後頭部に気を送ると腸が動く子、胃の後ろあたりが感度が高い子、腰に一番反応する子など、本当に様々です。

「愉気」の概念は簡単です。
人間でも、お腹が痛いときには、自然に手を痛い部分に当てますよね。
その時、手は暖かくなっていて、自然にお腹が動きやすくなるような部分に当てられています。
また、お母さんやお父さんが子供の痛いところに手をあてる時も、何も考えなくても、実はきちんと必要な部分に当てられています。たとえ自分の体でなくても、勝手に手が必要な場所に行くわけです。
別に、ツボなどの知識を持っていなくても、人間はちゃんとそういう事ができる、ただ本人が意識していないだけだ、というのが整体の立場です。
(なお、蛇足ですが、「だから意識して使え」というのが整体の主張ではありません。むしろ、「人間の知識は現状まだザルなので、意識せず体の勘に任せ、その勘を鈍らせない訓練をした方がよいケースが沢山ある」という主張に近いと思います。)

というわけで、「私マッサージとか訓練したことないんですけど」という人でも大丈夫です。
むしろ、下手な知識は邪魔になりますので、ウサギと心を通わせることだけを考えていればOKです。
ただし、気を集中しないと意味がないので、気が散るものは避けておいて下さい。
静かな音楽など、ウサギもリラックスできそうなものは流してかまいませんが、人間の方がテレビをみながら気もそぞろ、とかいうのはダメです。

冷え性で手が冷たい方は、まず暖かいものを飲んで、もう一枚着て、「自分が暖めてあげるんだ」という覚悟を決めましょう。
それから、姿勢を正して両手を合わせ(3cmくらい開いていても構いません)、指先から息を吸い、掌から吐くつもりでゆっくりと呼吸します(合掌行気といいます)。
暫くつづけると次第に手が暖まってくると思います。

それから、ウサギの背中に、そっと手を乗せます。
お尻の穴で計る体温計の温度とは、随分違う印象があると思います。人間の場合も、体内の温度はほぼ一定に保たれていても、冷えているときは体の表面も内側も冷たい感じがします。ウサギも同じです。
本来40度程度の体温のはずなのに、具合の悪いときには、痛みなどのために緊張して血行が悪くなり、背中は人間の手よりも冷たく感じることが多いのです。
人間の手よりは暖かいけれどいつもほど暖かく感じない、という場合は、まだ比較的症状が軽いかもしれません。しかし、この場合でも、愉気は使えます(物理的に暖めることは出来ませんが、気を通すことはできて、その結果血流がよくなり冷えが抜けます)。

まず、どこでもいいので背中を掌で暖めます。
合掌行気をやるように、掌から息をはくつもりで、自分もゆっくり息を吐きながら暖めます。
色々なところを触って暖めてみて下さい。
暫くやっていると、段々暖かくなってくるところと、なかなかそうならないところが見つかると思います。あるいは、すぐに緊張が抜ける所と、そうでないところ。
そうしたら、冷えがとれないところや、緊張が抜けない部分を重点的にやる、という感じです。

「これでいいのかな?」と不安にならずに、「ここかな?」くらいの気楽な気持ちでやって下さい。
人間の手の温度でやる限り、たとえ冷えスポットでなくても、暖めて害になることはありません。
あとは効率の問題ですが、実は、効率が良い場所がそのときのウサギの状態に叶っているとは限らないのです。
なので、ウサギと気の合う場所を暖めてあげれば大丈夫です。

実は、人間よりウサギの方がそういう気の流れみたいなものにずっと敏感なので、ずっとそうしていると、ウサギの方が自分で姿勢をかえて、「ここに当てて」と体をずらして押し付けてきたりします。そうしたら、そこを重点的に暖めてあげて下さい。

じっとウサギの背中の温度に注意を向けていると、手を置きたいスポットがどんどん変わってくるかも知れません。
具体的に、ここより冷たい場所がある、と思うかもしれないし、なんとなく、今手が勝手に向かう場所はここじゃない、と思うかもしれません。
そういうときは、その感覚に従って下さい。
つまり、何も余計なことを考えないのが一番、ということになります(^^;)。
我々は素人なので、刻一刻変わる相手の状態を正しく観察することも、それに対して正しい判断を下すことも出来ません。下手に知識があって、そこに固執すると、かえって良くありません。体の勘に任せた方がいい結果が出ることの方が多いです。

愉気をやめるタイミングは、殆どの場合、ウサギが教えてくれます。
いきなりヒョイと立ち上がって、「もういらない!」とばかりに遊びにいってしまいます。
完全に復活していれば、もう戻ってきませんが、ちょっとずつ良くなる場合には、暫くしたらまたうずくまり、じっとしていることがあります。
このとき、もう一度愉気をして、ウサギが受け入れるようなら続れば良い、ということです。

これで、愉気の方法の説明は終わりです。
上に書いたようなことが、全く感じられなくてもかまいません。
多くの場合、ウサギが勝手に感応していますし、たとえ感応していなくても、少なくとも害にはなりません。
飼い主さんとコミュニケーションがとれているウサギさんであれば、飼い主がじっと自分に神経を集中してくれている、というのは、それだけでも心強いものだと思います。

一方、愉気の最中に、「あれ?」と思うことはあるかもしれません。
とりあえず、思いついたものをいくつか書いておきますので、こういうこともある、と一応頭に入れておいて下さい。

注意1)

暖めているはずなのに、どんどん冷たい感じが表面に広がってきたり、手からものすごい勢いで熱を吸われている感じになっていくことがあります。
これは、冷えが体の芯から体表に上がってきた状態で、自然な経過です。
ただ、相手の生命力が強い場合、この状態のときに相手がこちらの気を食ってしまう、ということもたまに起こります。
通常、人間対ウサギなら人間の方が勝ちますが、「えっ、どうして冷たくなってくるの?!」と焦ってしまうと、人間側が萎縮してしまって、手の温度が下がってしまいます。

もしそうなってきたら、「よっしゃ、どんどん暖めてあげるからね!」と気合いを入れて、自分の方が冷えないように自衛して下さい。(大抵は気合いでカバーできます。)

注意2)

気が通ってくると、ウサギがへんな格好をすることがあります。
なんというか、体をへんな風によじってみたり。
腰を床にすりつけてみたり。
まるでカシューナッツのように、体が90度くらい曲がってしまったり。
すごいのになると、ビクッと体が痙攣したり、耳がまぶたがものすごい勢いでぷるぷると動いたりする子もいます。

これらも、全て、ウサギが必要があってやっていることなので、気にせずそのまま愉気を続けて下さい。
(整体では、このような不随意筋が勝手に動いてしまったり、どう考えても頭で考えてやっているとは思えない姿勢をとってしまう現象を「活元運動」と言っています。)

注意3)

上手く気が通って、体の芯があたたまると、ウサギのお腹が動き始めることがあります(音がするので分かります)。
人間でもそうですが、止まっていたお腹が動き始めるときというのは、大抵腹痛を伴います。結構激しい腹痛です。
当然、ウサギはこれを嫌がります。ですので、こういう状態になると、おそらく人間の手の下から逃げ出します。

ただ、(人間もそうですが)ウサギの中にも、これは治るために必要な経過なんだ、と本能的に理解し、一度は痛みで腰を浮かせても人間の側から逃げようとしない子もいれば、「痛いのはイヤだもん!!」とばかりに、人間の手の届かない場所に逃げて、暗いすみっこで踞る子もいます……。
残念ながら、後者の場合、このまま放置してもこれ以上はよくなりません。

整体では、どんな場合でも、愉気が体に悪さをするとは考えません(まあ、正確にいうと、意地の悪い気、不安な気を愉気するのは良くない結果を招く、ということはありますが)。
腸閉塞だろうが、細菌性の炎症だろうが、愉気をしてよけいに悪くなる、ということはありません。だから、安心してやって大丈夫です。
それは、愉気が、体の中に眠る力を引き出す方法であって、外から何かを与える方法ではないからですが…。
しかし、体の中の力が呼び覚まされて、回復に向かおうとするときに、痛みを感じたりすることはあります。
痛みは、そこに気を集めるためのもっとも強力な方法です。腸が動き出したときに腹痛を感じるのは、そこに気を集める必要があるからで、きちんと理由があります。

しかし、ウサギにそんな蘊蓄をたれても、勿論きいてはくれないわけで(笑)。

人間の腸が止まったあと、再び動き始める時に感じる腹痛と同じく、ウサギの腹痛も、腸が動いては少し休み、また腸が動く、というように波のように何度か押し寄せます。
この、一度動いて、痛みがきて、そのつぎに暫く小康状態になったときに、ウサギはこれ以上痛くならないように小さく縮こまって隠れようとします。その結果、再び腹部が緊張し、腸の動きが悪くなります。
この状態のとき、腹部の緊張を解し、休んでいる腸に「もう一度動け」と指令を出すのに、愉気が役に立つのです。

そういうわけで、飼い主の手から逃げて隠れているウサギに対しては、暫くは休ませてあげてもいいですが、5分か10分くらいしたら、また愉気を開始します。
勘のいいウサギは、やられるとまた痛くなる、と思って逃げる子もいますが、そういうときは根気よく追いかけて手を当てて結構です(ただし、追い回してはダメ、あくまでストレスにならない速度で)。
逆に、「痛いんだけど……気持ちいいこともあるんだよね」とばかりに、こちらに任せてくれるウサギもいますし、何度かやっているうちに、これは人間に任せた方が早い、と学ぶ子もいます。

何回かこれを繰り返すと、栓になっていたふんが出て、牧草や野菜などを少しずつ食べ始めるかもしれません。
まず盲腸糞を食べる、という子もいます。
いずれにしても、ふんが出て、何かを食べようかな、という素振りを見せたら、ほぼ回復基調に乗ったと思っていいと思います。
ひきつづき、牧草などを食べられるようになるまで、愉気してあげて下さい。

ただし、愉気を開始してから3時間ぐらいでここまでの回復がみられなかったら、やはり医者に連れていって下さい。腸の停滞からくる雑菌の繁殖速度、飲食出来ないことによる脱水、ガスの増殖速度、その他諸々の悪化の速度が、愉気で回復を望める速度を上回る恐れがあります。

ウサギの胃腸うっ滞が一気に悪化する理由は、ウサギが消化システムの中に細菌を組み込んでいることにあります。
細菌というのは、増殖の速度が時間に対し指数関数を描きます。簡単にいうと、最初はゆるやかな増殖に見えるのだけど、あるときから信じられないようなものすごい速度で総数が増え始める、ということです。
このため、一度こうなってしまうと、最早通常の動物が体内で行う代謝のレベルではどうにもならない速度で有害な毒素が作られてしまいます。つまり、たとえ愉気で健康な体の代謝能力を取り戻したとしても、もはや間に合わない、ということです。

以上から、愉気やマッサージなどの東洋医学的手法で改善が見込めるのは、うっ滞のごく初期の状態だけだ、ということを覚えておいて下さい。ウサギの不調の早期発見のためにも、食事は朝と夜の2回に分けてとらせることを強くおすすめします。

オマケ)

実は、この愉気、意外なところで重宝します。

それは、びびりの子や、噛み癖のある子に触らなくてはならない時(笑)。

びびりは逃げまくるし、噛むウサギは当然牙を向いてきます。
しかし、HRSで掃除ボランティアをやっていると、当然そういう子のケージも掃除しなくてはならないわけで。。。

こういうとき、まず、ウサギが飛びかかれない距離から、先に合掌行気の要領で気を出しながら、ウサギの頭に向けて手をかざします。
それから、非常にゆっくりと手を頭に近づけ、ゆっくり頭に触って、頭の後頭部に気を通します。

ウサギにとって、頭の後頭部に気を通してもらうのは、とても気持ちがいいみたいです…。これをやると、一時的に、おとなしくなるのです。

まあ、ちょっと派手に動いたりすると、また飛びかかってくるんですけどね(笑)

しかし、こうやって頭に気を通しながら、片手で水やペレットの茶碗を取り出したり、トイレを取り出したりするのは出来ます。
頻繁にこれをやっていると、段々とびかからなくなってくるのですが、週一回くらいだと、次の週までに記憶がリセットされちゃう子もいて、微妙ですね。

これまでの例だと、フレミッシュジャイアントのグレイスちゃんは覚えてくれましたが、ネザーのチャーリー(勝手にガブと呼んでいた)は覚えなかったなー。

4 thoughts on “素人でもやれるウサギへの愉気について(マッサージの代用として)

  1. 初めまして♪。

    我が家のウサギ(mix♂来月で4才)が、今年に入ってから既に3回も鬱帯をしまして、アシドフィルス菌(出来れば100%が良いのですが)を探しております。
    アメリカの、チュアブルタイプのアシドフィルスサプリメントを昨日注文してはみたのですが、添加物や果糖やバナナ粉末が入っているのが気になり…。
    植物性で、なるべく自然なのものをと思い、探しているのですが、もぐらさんは何かオススメの、鬱帯防止アイテム御存知ですか?

    植物性のアシドフィルス菌は、どう思われますか??

  2. こんにちはAmosさん!

    うーん、うっ滞の原因が何かによりますよね…。
    ウサギさんが母親の母乳をきちんと1ヶ月もらっていない場合、たしかにお腹の菌が弱いということは有り得るのですが、その場合、もっと若い頃からそういう傾向が見えるのじゃないか、という気がするのですが…

    ただ、うちでも、春から夏にかけて食欲が落ちて、それがうっ滞に繋がることがあるので、そういうときは、たまに飲み水にビオフェルミン混ぜたりしています(^^;;)正直、きいているのかどうか、気休めにしかなっていない気もしますが、アシドフィルスはもう少しマシかもしれません。

    ただ、うちのウサギの場合、これをやると水を飲まなくなることがあるんです。
    そういう意味で、うちでは結構安心して飲ませています。
    ウサギがよくないと判断したら飲まないから、やめる、という感じです。
    できれば、水ボウルを二つ用意し、一方にアシドフィルス菌を入れて、ウサギの選択に任せる、などの方法の方がいいかな、という気はしますが、なにしろ獣医ではないので、これ以上のことは…(^^;)

    ちなみに、我が家でもっとも効果のあるうっ滞対策は、やっぱり温度、湿度管理ですね…。ちょっと温度や湿度を低めに保ってあげる(人間はちょっと寒いですが)だけで、ウサギはかなり元気になります。

    あまり参考にならないかと思いますが、ウサギさんがうっ滞シーズンを無事脱却できることを祈っております!

  3. こんばんわ!
    回答ありがとうございます♪。

    2つの器、いい方法ですね!
    植物性アシドフィルス、良いの見付けたらやってみたいと思います(*゚▽゚*)。

  4. ピンバック: うさぎのお腹マッサージはやさしく!そのポイントと注意点 | ググリますた

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