ウサギの強制給餌の方法

強制給餌は、むやみにやると大変危険です。(とくに急性胃拡張の場合)。
今現在具合の悪いウサギがいる方は、まずこちらのページで重篤度を確認して下さい。

ウサギの強制給餌について、YouTubeなどで動画検索すると、座っているウサギにシリンジを口の脇から押し込んで与えている映像がいくつか見つかります。
シリンジに慣れている子はこれで良いのですが、おそらく殆どの場合、ウサギはこんなに素直に食べてなどくれません。無理に押さえつけてやろうとすると、暴れて飛び出し危険です。

というわけで、おそらく獣医さんはタオルで包む方法を教えると思います。
が、これも実はひと苦労。

以下、我々が教わったTipsです。
できれば、2人でやった方がかなり楽です。
実際にウサギでやる前に、ぬいぐるみなどで何度か練習してみて下さい。

注意:最初から最後まで、絶対にウサギの背中を反らせないように注意を払って下さい。
ウサギが無理矢理逃げようとして背中を反らせると、その拍子に脊髄が潰れ、下半身不随になる恐れがあります。
以下の方法では、人間が体重を使ってウサギの背中を抑えることでそれを防いでいます。常にウサギの背中から腰が体に触れているようにして下さい
(人間は中腰にならなければならないので、腰が悪い人には向かない方法です。)

0)準備するもの

  • バスタオル1枚
  • 強制給餌用のパウダータイプのラビットフード。Oxbow社のクリティカルケアが入手しやすい。
  • 10cc〜60cc程度のシリンジ 3本程度 (60ccなら1本でよい)
    10ccではシリンジの先が短過ぎてうまく口の奥に押し込めない場合があります。その際は、思い切って60ccくらいの大型のシリンジを使うと上手くいきます。
  • こぼしたフードを拭くためのティッシュやキッチンタオルなど

以下は必須ではないですが、特に獣医に禁じられているのでなければ、あれば便利。

  • ご機嫌とり用のおやつ(バナナ、りんごなど、ごく少量)
  • ご機嫌とり用のジュース、1cc程度のシリンジに入れておく

1)強制給餌するもの、タオル、キッチンペーパー、ご機嫌とりのバナナなどを、あらかじめ手のとどくところに揃えておく。

一人でやる場合、うさぎブリトーにしてしまってからでは、とりに行けません。
強制給餌や薬など、全部片手でやらないといけないので、両手が必要な準備は全てすませておきます。
クリティカルケアは水または42℃くらいのお湯でといてシリンジに満たしておきます。

(チーママさんに教わって、手で触ってちょっと熱い、と感じるくらいのお湯でふやかしたものを与えてみたら、かなり喜んで食べてくれました。たしかに、お腹の具合が悪いときに、冷たいものは食べたくないよネ…というわけで、普段からペレットをお湯で湿らせて与えてみて、どのくらいの温度が食いつきがいいかを試しておくといいと思います。ウサギは体温が人間より高いので、人間が暖かい、と感じる程度では温いようです。)

結構どろどろな感じでOK。あまり水っぽいと、量をたくさんあげないといけなくなるので、ウサギの負担になります(ただし長時間水を飲んでいない場合は、脱水も疑わねばならないので、水分多めで良い)。
ご機嫌とりにバナナやジュースなどをあげる場合は、予め小さく切ってお皿に盛っておいたり、ジュースを小さなシリンジに満たしておきます。
なんども簀巻きにしなおすのはウサギに負担になりますから、全部の作業が一度で終わるように準備して下さい。

2)地べたでやらない。

えっ、飛び出してもし落ちたら…! と不安になりますが、床に近いと、ウサギは俄然暴れて逃げ出します。
これが、人の腰の高さくらいの、すべる机の上だったりすると、実はウサギも用心するので、そう簡単には飛び出せないのです。
更に、洗面所やキッチン台など、普段ウサギが入らない場所でやれば、なお良し。

ただし、前方に飛び出せないよう、ただの机の場合には、前には衝立てでも立てておいた方がいいかも知れません。
後方は、自分の体でブロックします。

3)バスタオルのウサギブリトー

場所が決まったら、バスタオルを横に広げ、奥の横辺のふちにウサギの喉がくるように、ウサギのオシリを手前にして、ウサギを置きます。
手足は縮めさせておきます(このためにも、ウサギが知らない場所でやる方が簡単です。知らない場所では大抵ウサギは縮こまるので…)。

そして、ウサギが飛び出さないよう頭を左手で抑えます(目隠しの要領)。すぐに自分の体でのしかかって、腰が跳ね上がらないようにします(腰の骨折を防ぐため)。
慣れている人は、左手の代わりに自分がウサギの上にのしかかって、自分の顎でウサギの頭を抑えるという手もありますが、あごの下を塗り付けるような形にならないようにします(ウサギのプライドが傷つきます)。
二人いる場合は、うち一人が両手で保定すれば大丈夫です。
その間に、急いで右手でまず右側のバスタオルをきつくウサギの右側面にまきつけます。
耳は巻き込まないようにして下さい。
(耳を巻き込むとウサギは嫌がって頭をふり、その結果ブリトーが緩くなります)

ポイントは、お腹をしめるのではなくて、首まわりをぎっちり締めること。
ウサギの動脈は人間と異なり首表層に浮いていないので、これでウサギが失神することはありません。
極端な話、オシリはあとからでも包めるので、胸より下はそれほど気にしなくてかまいません。
とにかく、首まわりと、腕をたたんでいる胸のあたりををゆるみがないように締めることが重要です。

まきつけたら、首の右側のあたりで右手でタオルを引っ張りながら首の後ろを右手で抑えます。それから素早く左手の目隠しを外し、左側のタオルを引っ張り上げて、やはり首と胸まわりをきつく締めます。
右手の親指と人差し指で、ゆるみがないように左右のタオルの交差するところをしっかり抑えます。

ここまでできたら、左手で左右のタオルをしっかりお腹からオシリの方まで巻き込みます。足がきちんとたたまれて、伸ばす隙間がないようにタオルが巻かれていることを確認して下さい。足が自由に動くようだと、暴れて骨折の危険があります。
きちんと巻ければ、そこまでギュウギュウに首を締めなくても逃げ出せなくなります。

左手で下から胸を支え(ウサギの腕が胴体から離れないように掴む)自分の体と左腕の間に簀巻きのウサギを挟むようにして保定します。ウサギの後ろ足(タオルで簀巻きにされていますが)は机についたままで構いません。
この形で保定できたら、首の後ろでタオルを抑えていた右手を離します。
(まあ、力がある子はそれでも逃げるので、本当はブリトー係と強制給餌係の2人いた方がいいですが…)

これで、バニーブリトーの完成です。
利き手が左の方は、全部逆手でやって下さい。

4)シリンジで強制給餌

さて、巷に溢れるビデオなどでは、ここからさらに仰向けにだっこして、という図もよく見られるのですが、うちのウサギ達は、むしろこの姿勢のままの方がパニックにならずに食べてくれます。
ただ、前足が床についていると、ウサギが正気付いたときに逃げようともがくのと、シリンジを押し込む角度によってはちょっと顔が低過ぎて辛いので、うちでは少し胸を高くします。大体30~40度くらい、胸を持ち上げる感じです。ウサギは斜めに立っているような感じになります。
ウサギも、後ろ足は床についているので、あまり嫌がりません。
(といっても後ろ足の自由も完全に奪われているので、ついているのはオシリですが)
人間の方はナナメ中腰になるので、時間がかかると結構腰にきます…。腰が弱い人はご注意。

シリンジは、利き手で握り、親指をピストンにかけます。
力のある方は人差し指がピストンでも良いのですが、クリティカルケアを満たしたシリンジのピストンは結構固いので、親指の方が力の調整がしやすいと思います。
手の大きさを考えると、慣れないうちは精々10ccくらいのシリンジを数本用意して使うのが良いと思います。ウサギの大きさによりますが、大体1回に15〜30ccくらい食べてくれれば良いので、10ccなら3本あれば良い、ということになります。
大きなシリンジを使うなら、ピストンの柄の部分に数カ所指がかけられるようなひっかかりのあるものを使うとやりやすいです。

シリンジの先は、前からではなく、口の横から押し込みます。
前歯と奥歯の間には隙間があるので、そこを狙います。
胸を左手で抑えているので、左手の人差し指と中指で、顎をちょっと上に上げさせるとやりやすいです。
私は、指で結構がっちり顔の向きも下から固定してしまいます。顔の位置を左手で固定できると、口の右からでも左からでも押し込めるので、口の中を怪我しているときなどは、どっちを使うか選べて好都合です。

遠慮せずに、シリンジの先が全部口に隠れるくらい結構しっかり押し込んでも大丈夫です。つい「おえっ」となるんじゃないか、と心配してしまいますが、横から押し込んでいるので、そうはなりません。

なお、シリンジで与える場合には、市販のペレットをふやかしたものはまず詰まりますので、きちんとクリティカルケア等の粉末フードを使って下さい。

5)ウサギが呆然として飲み込むのをやめてしまったとき

強制給餌で厄介なのは、暴れる子もそうですが、呆然として咀嚼も飲み込みもできなくなってしまう場合です。
ウサギは最初は抵抗しますが、そのうち、この状態に陥る子がいます。
そうすると、いくら口の中にフードを押し込んでも、全部横からでてきてしまいます。

こういう子を正気付ける手段として、ジュースやオヤツなどが役に立つことが結構あります。
呆然としていても、その後ですぐにジュースのシリンジを突っ込んで少し口の中に入れてやると、いきなり咀嚼を始めて飲み込んだりします。
あと、バナナの匂いをかいだだけで正気付く子もいます。

獣医さんによっては、お腹の調子が悪いときに果物など甘いものは駄目、という方もおられると思います。本当に果糖がダメな子もいるので、原則主治医に従うべきですが、とにかく甘いものは絶対駄目、といってウサギが呆然自失してフードを飲み込んでくれないくらいなら、多少ごまかしてもお腹にフードを入れることの方が大事なケースも結構多いです。
詳しくは主治医のお医者さんにお尋ね下さい。

6)あとは、気合いです。。(これ、重要!)

ウサギは、結構人間の心を読みます(笑)。
人間の方が腰がひけていると、まず反抗して食べてくれません。

我々も、最初のうちはホントダメでした。
が、当時獣医学部の博士課程だった友人が結構思い切って口に突っ込んだら、意外にも、けっこう大人しく食べ始めました。
「食べなきゃ、死んじゃうんだよ!!」という彼女の気迫がきいたのだと思います(笑)。

というわけで、人間の方も覚悟をきめて、遠慮せずやって下さい。
気迫が足りないと、ウサギも逃げられると思い、無理して逃げようとして怪我をする恐れもあります。
「食べるまで出さないゾ!」という意気込みでやって下さい。

食べ終わったら、事情が許すなら少しくらいはオヤツをあげた方がいいかと思います。
ただでさえ嫌な事をされたのに、何もご褒美がないのでは、次からもっと嫌がって大変になるかも知れませんから。
ただし、ご褒美をあげるなら、簀巻きの状態のままか、ちょっと簀巻きを緩めるくらいで上げて下さい。でないと、条件付けになりません。

4 thoughts on “ウサギの強制給餌の方法

  1. はじめまして
    とても詳しく書かれた記事を、感謝しながら読んでいます。
    うちのうさぎは、一緒に育って四六時中真夏でもぴったり寄り添って、お皿を二つ置いても一つから同時に食べ、死ぬ間際までくっついていた相方がいなくなってから10日ほど。ほとんど食べなくなりました。盲腸便とおやつは食べますが、強制給餌でも微小しか食べません。水と野菜ジュースだけはシリンジで摂らせていますが、自分からは飲みません。病院に行っても、帰ってくると隠れてしまい全く出てきてくれず、もう、どうしていいか・・・本当にうさぎは難しいです。悲しいです

  2. ぴーさま、
    相方のウサギさんは、お月さまに行ってしまわれたのでしょうか…。悲しいお気持ち、大変よくわかります。人間も辛いですが、落ち込んでいるウサギさんを見るのは本当に辛いですよね。

    ペアで飼育しているウサギは、相方がなくなると、必ずといっていいほど、落ち込んだり不安になります。
    以下の記事を是非ご参考下さい。
    http://garden-of-ethel.me.uk/blog/2010/09/post_48.php
    とくに、ウサギのぬいぐるみは大変効果がある模様です。

    私達も、ペアの一方が亡くなったときは、「さあ、これから何があるかわからないぞ!」と腹をくくります。
    正直、悲しいのは勿論なのですが、それよりも残ったウサギの体調が気になって悲しみ切れない、というか…。
    ですので、ぴーさまのウサギさんが特別に神経質ということではありませんので、その点はご安心下さいね。

    すでに10日が過ぎているとのことで、私達の経験ではそのくらいになると一匹の生活に慣れてきて、少し元気が出て来るのですが、ぴーさまのウサギさんは大変情の深いウサギさんなのかも知れません。

    もし可能であれば、しばらく飼育環境を変えてみる、というのはいかがでしょうか。居間に放し飼いにして、隠れられる場所は最小限にしておき、頻繁に撫でてやりにいったり、ペレットや野菜を口元に持っていってやったりとか。
    隠れてしまったまま出てこないと、落ち込んでいるウサギは食べることを忘れることがあります。

    ウサギはもともとベッタリかまわれるのはあまり好きではないのですが、たとえばウサギのいる居間で、お友達と電話でそのウサギの話をしたりすると、安心してくつろいだりします。
    そのくらいの注意が自分に向いているのが、一番心地よい、というところでしょうか。
    色々お辛い時期とは思いますが、なるべく、あまりウサギさんが寂しさを感じないで済むようにしてあげて下さい。

    人間もそうですが、ウサギの悲しみも時間が癒してくれます。今は焦らず、ゆっくり浮上していけたら良いのではないかと思います。

    またお困りのことがありましたら、遠慮なくご連絡下さい。

  3. 突然ですみません。
    このサイト大変参考になっています。我が家うさぎはネザーランドドワーフで6歳になります。体重は1.2㌔、今月初め爪切りに行った後から下痢がありペレットもチモシーも食べなくなり獣医さんをさがしてみてもらいました。注射2本をしてもらい、整腸剤と抗生剤、強制給餌用の緑色の粉剤で朝晩2回老夫婦で注射器で奮闘して5日、以前使用3歳ころまで与えていたペレットを購入与えてら徐々に食べるようになり、細かい糞が出始め回復中ですが困ったことにチモシーを全く食べません。更に水をよく飲むようになりトイレが尿でいっぱいになってしまいます。この症状は異常でしょうね。もしわかる方コメントお願いします。

  4. レオンさま、
    ウサギさんが不調とのこと、ご心配のことと思います。
    ただ、今の季節はちょうど季節の変わり目で、ウサギも体調を崩しやすいですので、どうぞ長い目で見てあげて下さい。

    既に獣医さんに診せており、回復もしてきているとのことですので、このまま何かあったらすぐに獣医師に診せる、ということで良いと思います。最初に下痢をした、とのことで、通常のうっ滞とは少々違う原因があったかもしれません。

    そういうことですと、長期にわたって少しずつ体力が落ちていた可能性もあります。もしその前に換毛していましたら、かなり体力が落ちていると思います。
    そうなると、ウサギは当然、高栄養でお腹に負担のないものを欲しがります。昔与えていたペレットなら食べる、ということえしたら、今はそのペレットがウサギさんの体に合うということだと思います。もうしばらく、体調が安定するまで、食べてくれるペレット中心で良いのではないでしょうか。牧草のことは、体調が安定してから考えても遅くありませんので…。

    獣医師から購入した緑色のパウダーは、大変繊維も多く含んでいますので、これを柔らかいダンゴ状にして食べさせておくと、お腹の繊維は大体足りると思います。歯は牧草を全く食べなくても1週間や2週間では伸びませんから大丈夫です。

    水に関しては、あまりに大量に飲む場合は腎臓など内蔵系の疾患を疑う必要もあります。
    病院に連れていった時、血液検査はされましたか?
    もしされていなければ、念のため、血液検査をお勧めします。

    もし腎臓疾患でなければ、水の飲み過ぎを心配する必要はまずありません。
    というより、実は、今の季節はウサギは大変水をよく飲みます。うちのウサギ達もガブガブのんでいます。
    冬の間乾燥していた空気の湿度が上がり、水分の発散が悪くなって、水の循環(吸収)が悪くなります。これを補うため、本来この時期は水を飲む量を増やして排泄を良くべきなのですが、人間は体がなまってしまっていて気づかないようです。
    ところが、ウサギは人間よりいち早くこの状態に気づき、水を飲む量を増やします。我が家では、ウサギが水を飲み始めたら、人間も飲まなくちゃ!と声をかけ合うくらいです(笑)

    ウサギさんの体調が早く安定しますように!

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